第2話 ス階計画

 私は昨日彼女の部屋に入った.



 リモコンを操作する彼女を横目に私は,壁が動くことに圧倒され,声も出なかった.しかし,これではっきりした.やはり彼女はただものではないということに.私は彼女の奴隷と化したようについていった.壁の後ろには少しのスペースと階段があった.階段を降りると,パソコンが置かれそして,何枚かの写真が貼られていた,誰の写真かまではわからなかった.

 そんなことよりも,地下だからだろうか,通信状況が不安定になり少し不安だった.しかし,たったの地下1階でこんなに悪くなるのだろうか.それを察するかのように彼女は言った.

「通信状況悪いでしょ.これねわざとなんだよね」彼女の声色にいやらしさを感じた.

「でもさ,なんでこんなに悪くするの?というか,”普通のやり方”だとここまでできないでしょ」私は,それとなく理由や手段について聞いてみた.

「まー,確かにそうだね.はじめが何を普通と呼ぶかわからないけど,一般的には普通じゃないよん.さてどうしたらこんなことができるんだろうね~」


 彼女はそう簡単には教えてくれなかった.そうこうしてるうちに彼女はパソコンを起動していた.

「この人知ってる?」彼女はパソコンに移されたある男と指さしていた.

「ええと....」と私は考えてるふりをした.なぜ彼女はこの男を知っているのだろう.この人は遠い地方の国会議員だった.確かに,次期幹事長候補と言われるくらいの知名度はあるが,一高校生が知っているものかだろうか?まぁよい.それよりもなぜこんなに通信状況が悪いのかが知りたかった.

「そんなに通信してないと不安なの?じゃぁ私に協力してくれるなら教えてあg」

「わかった」私は彼女の声を遮ってまで即答した.


「私さ,はじめがなんで知ってるのか知らないけど,結構頭が良いだよね.それでね,ここからが大切なんだけど.私はさ,今の国の制度おかしいと思うんだよね.だからさ私は”ス階計画”を画策してる途中なんだよね」

「”ス階計画”?」聞きなじみのない単語に私は少し混乱した.そして,私なりに少しだけこの計画を考えてみた.

「私たちは今ね,”セ階”にいるの」

「初美...馬鹿になっちゃった?」

「世間の世じゃなくてカタカナのセ.それに階段の階.それでセ階.いや,そんなことじゃなくて!」

「わかったよ.セ階ね」

「じゃぁ気を取り直して.私たちは今セ階にいるの.ただ,今の国の制度はやっぱりおかしいよね.でも,この国で政治を動かすには”金”,”知名度”,”地位”のいずれかがないと,非常に厳しいの.それはわかるよね?」

「一応わかってるつもりだね.」突然彼女は聞いてきたが,さすがに馬鹿にしすぎではないか?

「よかった.じゃぁ続けるよー.だから私はどれか一つでも手に入れたいわけよ.そこで思いついたのが,政治家というよりどちらかといえば”国会議員”なんだよね.このパソコンを活用して,この男をあらさがししたらね,ビンゴしたってわけ」

「ビンゴって,もしかして初美は何か証拠でも見つけたの?...そうだなハニトラに引っかかった写真とか?」

「はじめ!?あなたって,感もよいのね.はじめには驚かされてばかりだなー.ただのハニトラじゃないんだよねそれが.」

彼女は何をためらっているのだろうか.そこまではわからないが,きっと相当な写真を持っていることだけは確かだった.


「・・・見る?」単なるハニトラの写真一つに彼女は妙に恥ずかしがっていた.

「えっ?この女の子って何歳?結構幼く見えるけど・・・」確かにこれなら彼女がそうなる理由に合点が行く.確実に成人していないようにも見える彼女は実際何歳になるのだろうか?

「多分ね,この子は11歳かそれより1,2歳離れてるくらいだと思う.でもこの子見るとわかるのは,珍しくそこそこ良い暮らしをしているってことね」


「なんでそんなことわかるの?」

「彼女はそこまで裕福な国ではないからね」

「それでこの写真も手に入れてどうするつもり?脅すの?」

「そうだよ,でもただ脅すだけじゃないよ.この写真使って,お金は融通できるさらに,彼以外の人の”写真”も送ってもらったわ.ここまでひどくはないけど,大体議会の.....3割くらいの人数分くらいかしら.」

「本当ですか....」何この人怖すぎる....

「で,協力してほしいのはあなたの”頭”よ.あなたってさ,人じゃないでしょ?」

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