3:特殊体質
物事のたしなみ。
「あ、また一位じゃん」
「本当ね。凄いじゃない」
「んー、そんなことないよ」
廊下に、共通中間テストの結果が貼り出されていた。
名称の通り、魔術アカデミー全コース共通の科目で構成されたテストの結果だ。
内容は主に、基本魔術、基本薬学、魔術操作、体術、法律、一般常識の6科目で、それらの総合点を競うのだ。
「あなた、法律赤点ぎりぎりだったのによく取れたわね、学年一位」
友人Aが感心したように言うと、
「あれでしょ、それ以外全部ほぼ満点で基本薬学と魔術操作が取れる奴が少なかった、みたいな」
「二つとも平均点が赤点近くだったらしいし」と友人Bがそう答えた。
「……それにしても、技量あるのに法律知らないとか怖いわね……」
「うるさいなー、点取れたからいいじゃん」
言い合いをしながら、薬術の魔女は貼り出された順位表を眺める。
「(去年までは成績表と一緒にこっそりだったのになぁ)」
なぜだか、四年から成績が堂々と廊下に張り出されるようになっているのだ。そういえば、相性結婚の通知が誰に届いたのかも貼り出していたのを思い出した。
「(……ほとんど貴族コースの人ばっかり)」
名簿の名前のほとんどに、貴族コースの名が引っ付いている。ちゃんと正当に評価しているのか気になったが、薬学コースの自分が一位ならば多分、正当な評価
「……(…あ、
薬学コースの、女学生のようだ。順位は第6位。他は貴族コースの男子ばかりだ。
「(惜しいなー。5位だったら学生会に入れたのに)」
何かを忘れている気がしたが、気にしないことにした。
×
共通中間テストが終わった頃には、一気に空気感が秋めいたものに変わる。強かった日差しはやや弱く、風が冷たくなり、緑味がかった植物達も色付き始める。
「んー……なんだか見られてる気がするぅ……」
きょろきょろと周囲を見た後、薬術の魔女は友人Aに引っ付いた。
「あなたが気にするなんて、よっぽどな目線?」
「えっ? それってどゆこと?」
首を傾げる薬術の魔女に「なんでもないわ」と友人Aは首を振る。
さっきまでは『薬に関する法令』の時間で、今は休み時間だ。意外と早く授業が終わったので、次の共通科目の教室まで移動しているところだった。
「というか、離れなさいよ。歩きにくいわ」
「だってー」
ぎゅむ、と更に友人Aへくっつくが、「仕方ないわね」と苦笑いするだけで振り払いはしなかった。
「あっれー、人に引っ付いたり物に触ったりする癖、まだ治ってないのー?」
引っ付いたままでいると、友人Bが後ろから小走りで追いつく。友人Aは同じ薬学コースで友人Bは魔術コースなので別行動になっていた。
「そうみたい。まだ子供よね」
「……子供っぽくて悪かったね。ってか廊下走ると危ないよ」
少し口を尖らせ、友人Bの行動をたしなめると、
「お前がいうな、危険物」
「えっ、危険物って何さ?」
「一年の頃に、散々薬品持ち込んで怒られていたのはどこのどいつだー?」
「……今は持ってきてないからいいじゃん」
「「…………」」
薬術の魔女の視線の逸らしようで、また何か作っているらしいことを悟る友人達だった。
ちなみにその一年時の行動や、教師が作れない程度の薬品の生成を行ったことなどにより、『薬術の魔女』というあだ名が付き、鑑賞用美人となる道が決まった。(美人だけど薬の実験台にされそうだから付き合いたくないとのこと。)
「なんでそんなにひっつくのかねー?」
「だってなんだか落ち着くしー」
友人Bの問いかけに、不貞腐れながらも答える。
「きみたちも、わたしに色々いうわりには振り払わないよね?」
「んー……それは……」
「なんというか、なんだか離れがたいのよね、そのもち肌」
なんだか言いにくそうだった友人Bに代わり、友人Aが薬術の魔女の質問に答えた。
「もち肌?」
自身の頬をもにもにと触りながら訊き返す。
「そう。なんだか吸い付くような感じがするのよ」
「へー」
スキンケアとか薬草の搾りかすでしかやってないけど、なんて言ったら怒られそうな気がした。特に友人Aから。
×
「えー、それでは何度も言いますが。魔術の扱いに関して……魔力の放出器官は、基本的には手のひらにあり……」
「……あの先生、毎度同じ事初めに言うよね」
授業を聞きながら、友人Bは友人Aと薬術の魔女に耳打ちをする。
魔術の使い方、魔術を使う時の身体の使い方などについて、この教師は授業の開始時に必ず言及する。以前は軍部に居たらしく、また、放出器官について色々と何かあったらしい、という噂がある。詳しくは興味がなかったので聞き流していた薬術の魔女だった。
「……
そこまで言うと、薬術の魔女を指名する。
「はい」
こうして指名されるのも何度目だろうか。内心で少しうんざりしながらも、素直に立つ。評価とお菓子くれるし。
「このように、身体全身を
教師の説明に合わせ、薬術の魔女は制服の
毎度、この授業の度に腕をまくって見せているので、魔術師の男に頼まれてもあまり気にはしなかったのだ。……捲ってから、素肌だったことを思い出したのだが。
「……はい。ありがとうございます」
そう言い、教師は薬術の魔女の使う机の上に飴を置いた。
「先生ー。それひいきじゃないんですかー」
「毎度手伝ってくれるのでそのお礼です。……それでは、この間の続きから始めます」
と、途中で飛んだ野次を
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