第1話

「はぁ~あ、また君~?」



お呼び出しを喰らった私は機嫌が悪い。


しかもまたこの子だ。


君は私を振り回すのが好きだねぇ。



「おまっ!」


「私お前じゃないの。アンジェリカっていうの、アンって呼んで?」


「堕天使の癖に名前はエンジェルが由来かよ笑」



なんて憎まれ口を聞くこの子は私の担当の人間で。


それでいて私の…ううん、なんでもない。



「うるっさいわね!こうするしか、なかったのよ。ていうかもう復帰したし!」


「へー?」


「で?なんのよう?君のせいで仕事が貯まってるんだけど?早く恋実らせちゃいなさいよ」



本当に、君の恋がさっさと実れば私は次の仕事に行けるのに…


早くしなさいよ。


なんて、私のせいでこうなっていると解っているのに。


ごめんね…



「んだよ、自分のことはアンって呼べとかいうくせに、俺のことは君かよ、ずりぃな」


「だって私、君の名前知らないもの」



なんて、嘘よ。


知らないわけ、ないじゃない…



「俺の名前は天r…」



そう言いかけるその子を放って言葉を紡ぐ。


私、そんなに暇じゃないの。


「じゃーね、」


「人の話を聞けy…」


天利あまり


「は?はーっ!?お、おまえっ!」


「私のことは?」



顔を真っ赤にした天利にそう聞き返せば



「…アン」



と返ってくる。


私に従順な子は大好きよ。


でもね、私の本当の名前、アンジェリカじゃないの。


笑いを残して天利の部屋を出る。

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