第46話

 ナーナの回答に、大将と花梨は二人揃ってため息を吐く。

「まあ、うん。そういうと思ったよ」

「ナーナのことですからね……」

「なんだよ。こたえがわかってんなら聞かなくてもよかっただろ」

「一応確認だよ。自分が勝手に想像してただけだからさ」

 いやでも、『捨てる』のか……、と花梨は微妙な反応を見せる。

「ていうか花梨。んなもんあったら内戦の原因になんぞ」

「えっ、あー、うん。そうなんだけどね」

「でもそれは、『不老不死』の薬が何個あるかによると思うんですけど」

 ほら、全国民に渡されるのなら争う必要はなくなりますよね。と、大将が言う。たしかにね、と花梨も頷く。

「でも不老不死の範囲ってどのくらいなんだろーね?」

「範囲があんのかよ?」

「いや……、殺されたら単純に死ぬのかなぁって。それとも死なないのかな?」

 二人は黙る。

「怪しいな」

「もし、殺されても死なないのならば、ナーナは飲みますか?」

「いやだから、飲まないって」

「本当に?」

「なんだよ、大将がそんなになるなんて、珍しい」

「会ったばかりじゃないですか。それよりも、いいんですか、本当に飲まなくて」

「うん、飲まない」

 ハッキリとナーナは言う。そうですか、と大将が花梨をチラリと見る。ナーナは大将の視線の先を見て、はぁ、とため息をつく。

「そういうことか、大将。別に死刑でもいいだろ」

「ナーナはね」

「んだよ、花梨。あたしのやり方に文句があんのか? 決めたことだろ、どうでもいいだろ」

「わかってるけど! だって明日までに『たから』、見つけないとナーナ死んじゃうじゃん……?」

「よし大将、そろそろだぞ」

「ねえ聞いて!?」

 花梨が叫んでもナーナは歩みを止めない。大将もそれに着いていって、花梨も仕方なく着いていく。

 数分経ったころだろうか、前の二人が急に足を止めて、花梨は大将の背中にぶつかりそうになる。

「っわ!」

 何よもう……、と花梨がぶつかった額に手を当てながらいうと、着いたぁ、というナーナの声がする。

「だから何が?」

 花梨がそういうと、ああ、すみません、と大将が道を開けてくれる。

 ――目の前には、きれいな湖が広がっていた。

「な、なにこれ」

「日向夏湖だ」

「み、湖? 山なのに?」

「中央山だからな」

「そうだね……?」

「じゃあここで昼休憩ですね。この調子なら、夜中には山頂に着くでしょう」

 ドサ、と大将がその場に荷物を置く。

「そうだな」

 と、ナーナもいう。

「はぁー、お腹すいたぁー」

「聞いて喜べ、花梨。今日は魚だ」

「よかったぁ」

 またあの変な獣の肉とかやだもんね、という。

「じゃ、花梨は荷物をそこにおいてけ。――大将、まきの方を頼めるか?」

「わかってますよ」

「花梨、あたしらは魚を釣りに行くぞ!」

「どうやって!?」

 釣りの道具とか持ってきてないけど! と、花梨が言っても、ナーナは聞く耳をもたず、湖の上にかかってる橋の上をスタスタと歩いていってしまった。

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