第19話

 シャワーを浴びて、ナーナにバトンタッチしたタイミングで大将が朝ご飯を食べ終えた。

「ごちそうさまでした」

「よく食べ切れたね、そんな量」

「いや……、ナーナが半分以上食べしまったので、そうでもないかと」

「あ、やっぱり」

 それだけ、ナーナはお腹が空いているのか。空腹な人がいるこの国に、花梨は満足できないでいる。

 二人の間に沈黙が落ちる。お互い、何も言わずに時がすぎるのを待っている。

「あがったよー……って何この空気。葬式?」

 それは、ナーナがシャワーを浴び終えるまで続いた。

「葬式なわけ……。いや、ナーナも来たことだし、もう王宮に行こう」

 花梨は昨日から荷解きをやっていない荷物を手にする。二人も頷いて、自分の荷物を持つ。

 そのまま階段を降りて、ロビーに行く。チェックアウトを済ませて、ホテルを出る。

「馬車で行くのか? リンで行くのか?」

 ナーナが訊いてくる。

「一刻も早く王宮に帰らないと、親父が怒るから、リンで行くよ。ちょうど三人乗れるし」

「あー、たしかに」

 花梨は三人の荷物をリンにつけて、リンの背中に乗る。花梨の後ろにナーナ、ナーナの後ろに大将が乗る。

「じゃあ、リン。王宮まで飛んでくれるかな?」

 キュウ、とリンが鳴く。バサ、と翼を広げてリンは宿を飛び立った。


「花梨さま!?」

 広い王宮の庭にシュウの声が響く。シュウの目線の先には小屋、しかもコドリに乗っている花梨と見慣れない二人がいる。

「あ、シュウ」

「1日で帰ってきたんですか!? 『たから』は!?」

「シュウ、落ち着いて」花梨は興奮しているシュウをたしなめる。「宿で親父と会っちゃった。王宮に帰れって」

「ああ、そういうことですか。取り乱してすみません」

「大丈夫」

「こいつがシュウなのか?」

 その言葉にシュウは顔をしかめる。

「ナーナ、言葉遣い」

「大丈夫です、花梨さま。ええ、私がシュウでございます」

「へえ。あ、あたしナーナ。強盗。よろしく」

「はっ?」

 ナーナの言葉にシュウは差し出された手を掴めずにいる。

「なーんて、冗談だよ。わりい。ふつうの善良な国民だ」

「あ、はい」

 しっかりと、でも軽くナーナの手を握るシュウ。花梨は自分の胸がヒヤッ、としたのを感じた。

「そちらのお方は?」

「大将です。よろしくおねがいします」

「はい」

 ナーナとは違って、大将は手を差し出さない。

「では王宮にご案内します。花梨さま、父上さまと話し合うのはどこですか?」

「客室だと思う」

「どちらの」

「親父がいつも仕事場使っている方の」

「それ客室って言うん?」

「ナーナ、黙ろうか」

「えー」

 ちぇ、と舌打ちをしながらも、ナーナは静かになる。そんなナーナをシュウは、心配そうな目で見た。

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