第12話

「金髪でこのクセっ毛。孤児の時よくケンカもしてたから、髪の毛もよく燃えた。だからこんなにちぎれてる。翡翠色の目だってそんなに嬉しくない。花梨みたいなオレンジ色がよかった」

「うち? そうだね、でも翡翠色って金髪に合ってるじゃん。うち、茶髪だし」

「そういえば昼飯はどうすんだ? なんか持ってるか?」

「鶏肉なら」

「リンのか?」

「馬鹿言わないでよ」

 花梨は背負っていた荷物の中から鶏肉を取り出す。

「はい」

「肉……」

「そんなもんしかなくて逆にごめんね、なんだけど」

「あたし、鶏肉食うの初めてだから、うれしい。そもそも肉自体食ったことがない」

 その言葉に花梨は驚く。

「そう、なんだ。じゃあ、はい」

「いいのか、貰っても?」

「2つ持ってきたから、ちょうど」

 花梨から貰った鶏肉を、ナーナは遠慮なく受け取る。

「あ、お箸。はい」

「ああ、うん」

 箸を持つと、勢いのまま、ナーナは鶏肉を食べる。

「美味い……」

「よかった」

 花梨も同じように鶏肉を口の中に入れる。

「晩飯はどうすんだよ」

「宿で」

 ナーナの言葉に花梨は当たり前のように言う。

「顔バレしたヤバいんじゃねえの?」

「大丈夫でしょ。親父のところに行けば――」

「……どうかした?」

「親父が今王宮にいるの、忘れてた」

 花梨は頭を抱え込む。

「それはしょうがないでしょ」

「まー、でも親父行きつけの宿に泊まるか、このまま馬車で寝るかだなぁ」

「それはさせませんよ、国王さま」

 前から、大将の声が聞こえる。

「馬車では寝かせられません。宿に行きましょう」

「だったら、『ニュー』っていう宿に行ってほしい、です」

「了解です」

「知ってるのか? ここらへん、宿なんていっぱいあんだろ」

「そこの宿は高かったので、記憶に残っております」

 そ、とナーナは大将の言葉に短く頷く。

「カの宿はどこも高えんだよな。安いところが見つからねえ。おかげで昨日は野宿だったしな。ベッドで寝るとか何日ぶりになんだろ」

「そう、なのかな。豊かなのは知ってるけど」

「あのなあ、豊かさが全て、ってわけじゃねえんだ。宿代も高くなんだろ。野宿をしようにも、きれいだから、路地にゴミねえし」

「ゴミがあったほうがいいの?」

「こう言っちゃなんだが、国王のお前にはわかんないことだ。ゴミが食料の基となんだよ。カラスになってでもあたしらは食いたいんだ。食わなきゃいけねえ」

「そういうもんなんだね」

「そうだ」

 ナーナの頷きに花梨は肩を落とした。

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