6月4日(水)

 そういえば最近、行事とかなかったっけ?

 ふと、そんなことを思う。

「行事……、体育祭はもう終わっちゃったしな」

 つまんないなあ。毎日おんなじじゃ、面白みもなにもないじゃんか。いいや、今日は「運命の出会い」をしようか。

「いってきまーす!」

 ささ、食パンを食べ終えて、角に向かって走り出す。持久走、113人中100位のわたしの足の速さを舐めるなよー?

「いっけなーい、遅刻しちゃーう!」

 と言って、角を曲がる。すると視界に緑のものが……、あ、待ってこれって――。

 私は慌てて急ブレーキをかける。それでも足はすぐに止まるわけでもなく、おっとっと、としたところでギリギリのところで止まる。

 危ない危ない。

「にしてもこれってやっぱりあれだよね、。なんでここにあるんだろう」

 サボテンって砂漠にあるやつだよね? なんでここに?

「すませーん、ちょっといいですか?」

「あ」

 声がして後ろを見れば白猫の絵がトラックにデカデカと描かれている、かの有名な『白猫YAMATO』の宅急便の方がいた。

「え、これって、サボテン、ですよね?」

「はい、サボテンです」

「なぜ?」

「頼まれましたので」

 いや、それはそうなんだけど。訊きたいのはそこじゃなくてね。

「なんでここにおいてあるんですか?」

「……なんでなんでしょう……。わかります?」

 いやあなたがわかんないこと、私がわかるわけないじゃん。

「わかんないですけど……、さっきぶつかりそうになりました」

「それは、大変でしたね。サボテンってトゲがありますから」

 たしかにこのサボテン、意外とデカいな。

「サボテンってあれですよね、中にスポーツドリンクを含んでいるんですよね」

「はい、たしかそうだったはずです。切れば中から5リットルほど出てくるとか」

「すごいですよねぇ」

「そうですよねぇ」

 という私達のサボテンへの尊敬の眼差しを、「はあ」というため息が遮った。

「馬鹿?」

「真間ちゃん! おはよう」

 挨拶は大事だよ、真間ちゃん。

「というか、『馬鹿』って何なのさ!?」

「サボテンの中にスポーツドリンクが入っているわけないだろーが。あなたも納得しないでください」

「ゑ」

「それに、5リットルもでるわけないでしょ! サボテンによって水の量は違うんだから!」

「そうなんだ!」

「初めて知りました」

「初めてってことはないだろ」

 いやいやいや、初めて知るよ、これは。砂漠に行ったらサボテンの中のスポーツドリンクを飲めば大丈夫なもんかと思っていた。あっぶなーい。

「というか、隼人は?」

「まだ来てないよ」

「あー、ごめん! 遅くなった!」

 と、ちょうど隼人が来る。

「おっそいよー」

「ほんとにごめん! ってあれ、サボテン?」

「そう!」

 やっぱり大きいから目立つよねー。

「サボテンってあれだろ? 中にスポーツドリンクが入ってるってやつ」

「お前もかよッ!」

 あっはは、ナイスだ隼人。

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