4月15日(火)

 朝起きて、パンを焼く。

 一週間も続いているこの日常を早めに済ませて、いつもの角で待ち合わせ(?)をする。

 隼人に最近会ってないから、今日は会えるといいなー、なんて。

「よ」

 そんなことを考えていれば真間ちゃんが目の前から来る。

「おっはよー、真間ちゃん! 今日の機嫌はどう?」

「うっせえな。ふつうだよ」

「うっそだー! だって昨日、めちゃくちゃ機嫌悪かっ――、良かったもんね! 当たり前だよね!」

「その手の平返しようは私の顔になにか関係しているのかな?」

「いえいえそんなことは決してありません」

「関係しているな」

 いやだって真間ちゃんの怒った顔ってめっちゃ怖いんだよ!? 無知、って幸せよねー。

「って、そんな顔で見ないでカッコよ死するから!」

「そこじゃ――」

「ありがとう!」

 と、真間ちゃんの言葉を遮って後ろにいる人の声がする。

「この声は!」私は後ろを振り返る。「隼人じゃーん! おっはー!」

「おはよう! 俺のことがカッコいいって? ありがとう」

 いつもの隼人だー。元気で良かったー。

「いや隼人は実際イケメンなんだけど……、性格が終わってるからなぁ……」

 上がって下がるから、おんなじなんだよね。いや、顔だけはイケメンだと思うよ?

「ていうか、いつ言おうか迷ってたんだけど、それ何? それ」

「どれ?」

「いやだからそれ」

「えー、どれー?」

 真間ちゃんが指さした方向には私のスクバがある。いったい私のスクバのどこが変なんだ? こんなにもすんばらしいスクバなのに!

「だーかーらー、スクバにくっついているキーホルダーの山はなんなのよッ!」

「あ、これ? 可愛いよね」

 なるほど、真間ちゃんが指していたのは「リアル団子さん」――略して「リア団」と言われているキャラクター。三色団子にリアルな人の顔が描かれているキャラクターで、ご当地で顔がそれぞれ変わるんだよね!

「それのどこが可愛いの!? ホラーだろ!」

「俺もそれはちょっと怖い」

「なんで!? ……でもたしかにリア団って全然人気ないんだよねー、不思議ー」

「絶対その顔が原因だと思うけどね!?」

「それは真間ちゃんの意見! 全国のみなさんがそんなことを思っているわけではないだろう!」

「いやみんな思ってるって!」

 だからなんで!? 私この顔大好きなのに! 可愛いのに!

「全人類の損だよ、これ」

「んなわけあるか。な、隼人」

「いや、あるよ」

 だから二人揃ってひどくないですか?

 うーん、でも、これが流行ってないのは残念だなぁ……。あ、そうだ!

「じゃあ二人にあげるね!」

「接続詞が接続の役割をしていないように思える」

「一体何を言ってるの?」

「さっすが真間ちゃん、うまいことを言う。ていうか、いいからいいから! 遠慮しなくて大丈夫! はい!」

 私は無理矢理二人のスクバやリュックにリア団のキーホルダーをつけてあげる。三人おそろいの方がいいもんね!

「それに、『湊と愉快な仲間たち』は三人だしね!」

 呆れ顔を浮かべる二人に向かって私は、へへっ、と気持ちよく笑った。

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