第2話 覚醒
俺は、兵士の一太刀を交わす。
そして、すぐさま自分も剣を敵の首に。
「ぐっ――」
兵士の斬られた首筋から血が舞った。
「グアウ!!」
フォンが体当たりで兵士を吹き飛ばす。
「なんだ!?こいつら…雑魚じゃなかったのか」
「いや、最初の二人が弱すぎただけだ。全員でかかれば勝てる!」
4人の兵士が俺たちを輪で囲む。
「かかれ!!」
「「うおおおおおお!!!」」
差し迫る剣筋を避け、カウンターに敵の喉元を掻っ切る。
兵士はうめき声を上げる間もなく、倒れた。
....まずは一人。
「ガアウゥゥゥ!!」
フォンの咆哮に、兵士たちが怯む。
その隙に二人、三人と首をはねる。
俺と相棒の連携は完璧だった。
「はぁ…はぁ…片付いたか」
「フン。雑魚が手間取らせやがって」
様子をうかがっていたシタールが、ようやく動き出す。
「俺が格の違いを見せてやる」
対峙して、わかる。
S級の規格外さが。
(こいつ…とんでもない魔力だ)
シタールの姿が消えた――!
いや、すでに間合いを詰められていた。
目の前にはシタールの刃先が迫る。
キィンと甲高い音がなり、剣同士がぶつかった。
痺れるような衝撃が走る。
「ぐっ――」
力の押し合いに負け、一秒も経たず間に俺の剣が弾かれた。
「留めだ!」
すかさず首を狙ってくる。
くそっ、やられ――
次の瞬間、大量の血が飛び散る。
だが、それは俺のではなかった。
「ク…オ…ウ」
フォンの血だった。
俺を庇い、身代わりになったのだ。
「......フォン!!」
どうする!?
すぐに手当てしなければ。
だが、この場からどう逃れる?
混乱で思考がまとまらない。
「…おい、貴様」
シタールが今までにない威圧的な声で呟く。
「俺の紋章を汚したな」
まずい。
フォンが狙われた。
「フォン!今すぐ離れろ!」
時間を稼ぐため、シタールに飛び掛かる。
だが――
「雑魚は引っ込んでろ」
腹部に剣が突き刺さった。
体中が痛みに悲鳴を上げる。
まるで全身が金属を拒絶するような感覚を味わう。
「ゔぅ…早く…逃げ…ろ……」
シタールは腹部に刺した剣を引き抜こうと、力を入れる。
そんな奴の行動に、俺は――
奴の腕を掴み、妨害する。
剣を引き抜かれたら、すぐにフォンへの蹂躙が始まる。
自分の命を賭してでも、それは避けなければいけない。
「その汚ぇ手を今すぐ退けろ」
シタールの眉間にしわが寄る。
いい兆候だ。
奴の狙いは再び俺に定まりつつある。
――もっと奴の逆鱗に触れねぇと
片手を腹部に当てる。
そして、血で染まった手で今度は奴の紋章を握った。
「貴様、今すぐ死にたいらしいな」
シタールがしゃがみ込み、目に靴が映る。
そして、視界が真っ白に。
体は妙な浮遊感に包まれた後、何かにぶつかる。
「............」
再び視力が戻った時、俺は地面に仰向けで横たわっていた。
そこで初めて、回し蹴りで吹っ飛んだと理解する。
気づいた途端、顎への痛みがやってきた。
「うぐっ――」
ドンっと胸板に圧力がかかる。
シタールが足で踏み潰さんとしていた。
「大切な紋章を汚したんだ。....覚悟はいいな?」
シタールが剣を抜き、俺の首元に突きつける。
...くそっ、己の弱さに腹が立つ。
本当なら、すぐにフォンの手当をしなければならない。
だというのに、俺は.....!!
「そうだ。..殺すついでに、あの獣をどうするか教えてやるよ」
表情から相棒の身を案じたことを察したのか、シタールが口の端を吊り上げた。
「まずは俺の苛立ちを鎮めるために、サンドバックにする」
奴の言うことを想像した途端、体に嫌な汗が滲み出た。
「で、なぶり殺した後は毛皮を剥いで売りつける。.....どんなゴミでも有効活用すいい方法だろ?」
……殺す。貴様だけは……どんな手を使ってでも。
「何だその反抗的な目は。獣が死ぬのも、元はと言えば貴様が原因だというのに」
「....どういうことだ?」
「貴様は俺と対峙した時、すぐに自害するべきだった。......だが分を弁えず抵抗した結果、獣を巻き込んだ」
分をわきまえて自害すべきだと?
ふざけるな...。
俺には生きる権利さえ無いというのか.......?
ポロリと頬に一粒の雫が伝う。
かけがえのない日常を奪われ、死に追いやられる者。
かたや、自分の名誉や快楽のために殺しても、何も失わない者達。
悔しかった。
理不尽な目に遭いながら何もできず、ただただ自分の弱さを突き付けられたことが。
力があれば、追放されることも......迫害を受けることもなかった。
力があれば、相棒が傷つけられることもなかった。
もっと力があれば――
どうせ死ぬのなら、すべて道連れに。
最後の最後まで、悪あがきを続けてやる。
「俺は死んでも構わない!だが貴様だけは……必ず地獄に堕とす!!」
ああ……。
目に映るすべてを滅茶苦茶にできる力があれば……。
そんな儚い望みを抱きながら、シタールに怨念をかける。
《スキル進化の
《スキルを全開放します。》
頭の中で無機質な声が響く。
「戯言は、あの世で抜かせ!」
《敵を察知。覚醒特典として、「
「........!?力が...抜けて...」
魔力が流れ入ってくる!
シタールから流入した魔力だ。
手に力が入らなくなったのか、シタールが剣を落とす。
反対に、俺の体には魔力が溢れ始め――
ありったけの力を振るい、足蹴にしていた状態から逃れた。
「......はっ!?」
シタールの表情に焦りが浮かんだ。
その動揺した隙に――
無防備な男の弱点を思いっきり蹴り上げる。
「あぐっ――」
痛みに股間を抑えるシタール。
今度はもっと大きな隙が生じた...。
畳みかけるように体中の魔力が凝縮された拳で――顔面を殴り飛ばす。
吹き飛んだシタールは大きな木の幹に衝突した。
敵が痛みで悶えている内に、地面に落としたシタールの剣を拾う。
――くたばれ
剣の刃先をシタールののど元に狙いを定め、疾走する。
「がっ......あ゛....あ゛」
勢いよく突進したためか。
長い剣はシタールの喉を通り越して、頑丈な木の幹でさえ貫通した。
「でめ゛ぇ......。よぐも゛」
シタールは突き刺さった剣を外そうともがくも、大きな木で固定され身動きが取れていない。
奴が血を吐いたため、口が大きく開いた。
――これで留めだ
奴の口に手を突っ込み....
「ファイヤーボール!」
喉に直接火の塊を注ぎ込んだ。
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