第40話 アマーリエの家族

 オーレルたちが次に向かったのはアマーリエの家族のもとだった。

 久々の再開に自分たちは邪魔だろうと思った、オーレルとリリスはどこかで時間をつぶそうと思っていたが、アマーリエに一緒についてくるよう頼まれたので、オーレルとリリスは一緒に行くこととなった。


 アマーリエについて行くと、里長の家よりも少し小さく、よりシンプルな建物に着いた。

 アマーリエは家の扉の前に立った。緊張しているのか、一度深呼吸をした。アマーリエは扉に手を触れ、ゆっくりと扉を開いた。


「ただいま」


 アマーリエが声をかけると、一人の女性が出てきた。


「アマーリエ! 今までどこに行ってたの! 心配したのよ」


 出てきた女性は涙を流しながらアマーリエに抱き着いた。その女性は顔立ちがアマーリエに似ており、身長はアマーリエよりも少し高かった。髪の長さがアマーリエよりも長く、リリスと同じく腰くらいまで伸ばしていた。


「お姉ちゃん、心配かけてごめん」


 アマーリエも涙を流していた。

 しばらくして、アマーリエの姉はアマーリエから手を離した。このとき、アマーリエの姉は後ろにオーレルとリリスがいることに初めて気づいた。


「えっ! 今の見られていたの。恥ずかしいな。ええっと、あなたたちは?」


 顔を赤くしながらアマーリエの姉はオーレルたちを見た。


「初めまして。僕はオーレルと申します。武器屋を営んでいる者です。よろしくお願いします」

「ワタシはリリスよ。アマーリエとは仲良くさせてもらっているわ。よろしく」


 オーレルとリリスは少し前に出て自己紹介をした。


「お姉ちゃん、二人とも私の大事な友人だよ」

「アマーリエに友達ができたのね。よかったわ……」


 アマーリエの姉は再び泣き始めた。妹に友達ができてうれしかったのだろう。


「ごめんなさい。まだ自己紹介していませんね。私はエミーリエです。よろしくお願いします」


 エミーリエはオーレルとリリスに軽く礼をした。


「お姉ちゃん、お母さんとお父さんは?」


 アマーリエは家の中に人の気配が感じられなかったので、それが気になっていた。


「ああ、二人だったらもう少しで帰ってくると思うよ。それよりも、こんなところに立ちっぱなしというのは疲れるから、中に入って。オーレルさんとリリスさんもどう

ぞ中に入ってください」


 エミーリエに促され、オーレルたちは中に入っていった。オーレルたちは椅子に座らせてもらって、エミーリエは今まで何をしていたのか、とアマーリエに尋ねた。


「餓死しそうだったところをオーレルに助けてもらって、それからオーレルの営む店で働かせてもらっているんだよ」


 アマーリエは久しぶりに姉と話せてうれしいのか、自然な笑顔が浮かんでいた。


「そうだったんだ。オーレルさん、アマーリエは迷惑をかけていませんか?」

「いえいえ、彼女のおかげでこちらが助かっていますよ。彼女の働きでお客さんも増

えましたし、毎日頑張って仕事をしてくれるのでうれしい限りです」

「それはよかったです」


 エミーリエは妹がエルフの里の外でうまくやっていけているのを知って喜んでいる。

 楽しく会話していると、玄関の方で物音がした。


「どうやら、お母さんとお父さんが帰って来たみたい」


 エミーリエは立ち上がって、出迎えようとした。

 彼女たちの両親はすぐにオーレルのいる部屋へと入ってきた。


「エミーリエ、お客さんが来て――」


 最初に入って来たのは彼女たちのお父さんだ。部屋に入ってすぐには気づかなかったようだが、途中で目線がアマーリエのところに固定された。


「そんなところで止まっていないで、早く中に入ってもらえない?」


 その後ろからアマーリエのお母さんと思われる人物の声が聞こえた。彼女は前で固まっているアマーリエのお父さんを押しのけて、中に入った。


「あっ、お客さんが――」


 彼女もアマーリエに目が向いたとき同様に固まった。


「もしかして……アマーリエか?」


 最初に口を開いたのはアマーリエのお父さんの方だった。その問いに答えたのはエミーリエだった。


「ええ、そうなの。アマーリエがさっき帰ってきたの」

「そうなのか……。無事でよかった。心配したんだぞ」


 アマーリエの父はエミーリエと同じく涙を流した。


「よかった……よかったわ……突然いなくなったから、心配だったのよ」


 アマーリエの母も涙を流してその場に膝から崩れ落ちた。そんな母と父にアマーリエは近づいていった。


「心配させてごめん。でも、私は元気に生きていたよ」


 アマーリエは心配をかけて申し訳なかったという気持ちと再会できてよかったという気持ちが混ざっていた。

 しばらくして、二人は落ち着いたようだ。今度はオーレルとリリスに目を向けてきた。

 二人は先ほどと同じように自己紹介をした。その反応はエミーリエと同じものだった。


「見苦しいところを見せたね。私はアマーリエの父のアルフォンスだ。娘が世話になった。ありがとう」

「私はアマーリエの母のフローラです。お二人には娘を助けていただき、感謝しています。ありがとうございます」


 二人に頭を下げられたオーレルとリリスだったが、少し戸惑った。


「いえいえ、僕もアマーリエには助けられていますから、こちらこそありがとうございます」

「ええ、ワタシもアマーリエのおかげで楽しく過ごせているわ」


 オーレルとリリスの言葉にアルフォンスとフローラは娘が良い友人を持ったなと思った。

 その後も会話を続けていると、次第にオーレルたちは互いに打ち解けていった。


「オーレルさんもリリスさんも今日はぜひうちに泊まっていってくれ。娘を助けてくれた恩返しもしたい。どうだろうか?」


 オーレルとリリスはアルフォンスにそう言われ、ありがたくそうさせてもらうことにした。


 夕食は豪華なものをごちそうしてもらった。おいしいご飯を食べながら、オーレルとリリスがアマーリエの家族と楽しく話していくうちに夜は更けていった。

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