ハズレスキル「踊り子」は使い方次第でチートレベルになりました

道谷

第一話 追放と追憶

「お前みてぇのはクビだ。

役立たず。」


ギルドマスターが黄ばんだ乱杭歯を剥き出しにしながらそう言った瞬間、俺は雷に打たれたかのような衝撃に貫かれる。

断片的な記憶が繋がり、ある一つの結論が導かれた。


__俺…ケイン・アトレファーは、前世の記憶がある。

これは、転生というやつだ。

前世では、俺は日本でサラリーマンをやっていて、今と同じように仕事をクビになって、それで…


「おい、聞いてるのか?!」


ギルドマスターのダミ声で、また現実に引き戻される。

混乱の最中にいる俺は、ヘラヘラと笑うことしかできなかった。


「あー、はい。聞いてます。

…世話になりました。

荷物をまとめて、すぐ、出て行きます。」


ギルドマスターの冷たい目線から逃げるように部屋を後にした。

俺がクビになったのも無理は無い。

俺の特有スキル「踊り子」は、戦闘において全く役立たない、俗にいうハズレスキルだからだ。



余談だが、この世界には2種類の人間がいる。

一つはスキルを持たない、一般の人間。

もう一つは、生まれながらにスキルを持つ、「幸運持ち」と呼ばれる人間だ。



生まれた瞬間に、祝洸と呼ばれる光に包まれた赤子。それが幸運持ちの証拠となる。

国の専門職によって、スキルの鑑定と認定が行われ、俺はそこで「踊り子」であると判定されたのだ。



一般的に幸運持ちは遺伝すると言われており、その殆どを貴族や国のお偉いさんが占めている。


そんな中、俺は珍しく一般人の家系出身だ。

俺の親族では、これまで幸運持ちが出たことはなかった。

そんな環境にいながらも、両親は俺を過度にチヤホヤすることなく、普通に育ててくれた。

そのおかげで、「踊り子」が大したスキルじゃ無いと判明した時も、大きなショックを受けずにすんだ。


また、幸運持ちは任意でギルドに入会することもできる。国には大小様々なギルドが存在しており、その規模により待遇は大きく異なる。


俺が入会していたギルド「白翼のピネルー」は、誰もが認めるトップギルドだった。

基本給は高いし、福利厚生も完璧。

在籍している幸運持ちも、所謂トップクラスのスキルを持っている者ばかりで、「白翼所属」というだけで、世間から一定の信頼を得られるほどだった。


俺みたいなハズレスキル持ちが、そんなトップ企業に何故入れたかというと、前ギルドマスターが俺の踊りのファンだったからだ。


「ケインの踊りを見てると、なんだか元気が出てくるなあ…」


彼はよくそう言ってくれた。

実際、俺のスキル「踊り子」は、踊りを見た人のステータスをちょっぴり高める効果があった。軽い不調くらいなら治すこともできた。

ただ、病気や怪我を癒せるほどの力は無い。


まあ、それだけの、本当にへぼい能力だ。

前ギルドマスターは年齢を理由に退団し、彼の息子が跡を継いだ。

敏腕というやつで、息子は徹底的に無駄やコストをを排除した。

前ギルドマスターのお目溢しにあっていた俺だったが、あっさりとクビ宣告を受けてしまったというわけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る