二人きりの夜

第26話

時計の針が9時を指し示す頃、古庄が大きなため息を吐いた。




「ああぁ~…。さすがに腹が減ったなぁ~」



そう言われても、何も夜食になるようなものもないし、店屋物を取ることも不可能なので、どうすることも出来ない。


あまりに申し訳なくて真琴は、



「すみません……」



と謝りながら、



――……やっぱり帰ってもらった方がよかった……



と、心の中では呟いていた。



真琴は、人に迷惑をかけるということが嫌いだった。

ましてや、一緒にいるだけで息苦しい古庄に対しては、なおのことだ。



しかし、古庄が真琴の謝罪を聞いて、逆に申し訳ないような顔をする。



「いや、ごめん!別に賀川先生を責めてるわけじゃなくて。残ったのは、俺の意志だし。……そうだ!」




古庄は何か思いついたように席を立って、同じ学年部の戸部という教師の机へと向かった。



「確か、戸部先生はここに非常食をストックしてあるはず……」



と言いながら、戸部の机の引き出しを開けて中のものをかき回している。

真琴は何をしているのかと、目を丸くして古庄の行動を見守った。

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