吸血鬼の少女を拾ったらクラスメイトの異種族の知り合いが増えた件 ~異種族のあふれる現代日本で俺の生活が終わっている~
まぬぱあ
1st order ある日雪の中、全裸の美少女に出会った
俺はしんしんと雪が降る日に、その真紅に輝く瞳と、雪の結晶と言えるほどその白すぎる肢体。幼く儚く、それでいて全裸の痴女と出会った。
───
しんしんと雪が降っている。マイナスを二十度も限界突破した北海道の肌を突き刺すような寒さにはなれない。
今着ているベージュのロングコートも、も本州にいた頃に買ったお気に入りのものだが北海道の寒さにはどうも勝てないようで、まるで肌着のまま外に出ているようだった。
「寒…」
芯から底冷えする道すがら、俺はくしゃみを誰にも聞かれずとも一つした。
俺、
東北から去年の年度末に親父の都合で引っ越してきたが、北海道がこんな寒い土地だとは考えもしなかった。
ただ、漠然と寒い土地だとは知っていたが、夏は暑いし冬は温帯に属する日本にはあるまじき温度をたたき出している。
雪は道路端に俺の背より高く積まれている。これを他人事だと思いテレビや動画の中で見ていた時は『すげー』以外感想しか出てこなかったが、今やこれを毎日見るともはやロマンとか、憧れ以上にあきれが勝つ。
おかしいだろ、積雪量。人死ぬて。というか毎年、雪下ろし(家の屋根から雪を落とす作業、やらないと家がつぶれるらしい)作業途中に雪に巻き込まれる死亡事故が発生しているらしい。
こうした話を聞くと、冬季の玩具のようだった雪が怖いものに思えた。
しかしこの雪も不思議なもので、雪が多ければ人が凍え、生活に不便が発生するのにも関わらず、彫像やそれを使った町おこしなどが成功している。要は雪の美しさに人は惚れこむのだ。
神秘さと残酷さを併せ持った雪だが案外俺は嫌いじゃない。
それは歩くと新雪がブーツの中に入ってくるのとか、ちょっと溶けだした雪がさらに凍って馬鹿みたいに歩きにくいとか、そういう話ではないのだ。
雪が降り人の行きかいが少なくなり、ただ雪がしんしんと降る静かになる空間が好きなのだ。
雪は人の全てを隠してくれる。残忍さと神秘さを持った雪のただ一つの相違ない事実だ。
だから俺は気づかなかったのかもしれない。全てを隠すという雪が秘匿していた文字通り神秘性と残忍さを持つ存在に。
瞬間、眼前の雪山がごそりと揺れる。
雪山がごそりと一部動きだし俺は慌てた。野生の動物。この時期にはいないかもしれないが野生のクマが現れたのなら俺はひとたまりもない。
クマだとしてもこの場から背を向けて逃げるのは得策ではないと考え固唾をのむ。
「あ………?」
「…………?」
眼が合った。
雪の精霊?
え、
「……っちょ、全裸! ?隠して! てか、なんで雪のな…おい!これ着ろ!」
クマかあるいは、と緊張の面持ちで待ってた俺の目の前に現れたのはなんと、少女だった。
否、嘘である。
そこから現れたのはなんと全裸の少女だった。
俺は急いで羽織っていたコートを相手に差し出す。
「………?」
相手はキョトンとした表情で俺のコートを見ている。俺はそれに恐怖を抱いた。
なぜ意味がわからないんだ。
俺はまだ埋まってる体を手を引き雪の中から取り出す。
掴んだ二の腕は恐ろしく冷たく、顕になった肢体の妖艶さなんて無視し無理やり少女にコートを着せる。
「ん〜〜〜〜〜!」
「バカ、抵抗するな。寒いだろ」
相手が抵抗するが、俺より少女は幼く体格差で何とかコートを着せることができた。
(コレ、どうするのが正解だ…?)
俺が頭に悩ませていることを理解していないのか眼前の少女は楽しそうに雪と戯れている。
コートからちらちらとのぞかせる真っ白な肢体がなかなか変態チックで服を着させないほうが良かったのでは…?と思考が明後日の方に飛んでってしまう。
真っ白な全身に俺のブラウンのコートを着せることで、ある種のファッションセンスを見せていた。
ほほ笑むたびにうっすらとほそまる赤い瞳に俺は何か目を離すことができなくなっていた。
見た目は完全にアルビノの異国風の人間。しかしなぜ今全裸で雪の中に…?
一瞬警察に届けるべきかと考えたが雪の中から出現した全裸の少女は人間じみたものを感じない。
というか普通の人は雪の中に全裸で入らない
俺は完全に考えるのをやめた。
(もう無理だ、警察に保護してもらおう)
俺は幾分か冷静になった頭で、そう結論付けスマホの電話をタップする。
その瞬間俺の右手の甲に小さい、鋭い痛みが走った。紙で切ったときの痛みと言えば差し支えないだろうか。
右手の甲をちらとみる。痛みのわりに出血量が多く、手の甲全体が赤く染まっている。
俺は持っていたハンカチで手をきれいに拭った。
「ん…?なんだこれ、文字?」
手の甲には紋様のような傷跡、というか見知った文字のようなというか英語を不細工に象ったような傷跡が存在した。
「まりあず…おーだーせいぶ…?」
詳細に書くとしたら『Maria's oreder save』と傷跡で書かれていた。
雪の中から這い出た全裸の痴女もとい少女。そしてほとんど時差無く表れた奇妙な血の文字。俺はほとほと自分が置かれている状態を知りたかった。
(なんだコレ…)
俺は立て続けに訪れた意味も訳も分からないことに俺の頭は嫌が応にも混乱していた。
絶対コレ、眼前の少女と関連しているのだろう。
そう考えるのが自然だ。しかし俺の頭はもういっぱいいっぱいだった。というかこのクソ寒い中貴重な耐寒装備を渡した俺をほめてほしい。
俺はもう半ヤケクソ気味に交番のダイアルを押した。
血の文字がじんじんと痛む。
『はい、
「すいません、ちょっと迷子の子供を保護したんですがこの子の事を保護──痛っっっっ!」
俺は反射的にスマホを地面に落とし、痛みを少しでも和らげるためにうずくまった。
急速に俺の右腕の痛みが全身に広がる。激痛なんてもんじゃない、全身の神経を愛撫されているようなおぞましい痛みが文字を基点に広がる。
おい嘘だろ、クソガキが。
『……迷子?どうされましたー?』
俺は痛みを取り除くために、迷わず電話を切る。
そうすると案の定全身の気持ち悪さが消え去り、残ったのは不思議そうにジッと見つめる少女とみじめにもうずくまっている俺であった。
「save…つまりはこいつを保護しろってことね…」
もう命運は決まった。
くそったれながら、俺はこのマリアズなんちゃらに逆らえないらしい。というか警察に連れて行こうとするのも保護じゃないのかよと心の中で悪態をつく。
「おい…変な呪い掛けやがって…なんで俺なんだよ…」
「……?」
彼女は言葉が通じていないようで、俺の事を観察しているようだった。
「とりあえず、俺んち来るか?」
とりあえずどころか、この子を保護しないと俺がどうなるか分からんのでぜひともついて来てほしい。
しかし眼前の少女は訳も分からなそうな顔できょとんとするだけだった。
そういえば言葉分からないのだった、と強くうなだれた。
しょうがないので手を繋いで俺の家に少女を連れて行くのであった。
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