第十節『わがまま小僧』
「あのさ—俺、冒険課程を受けることにした」
「…だめ」
「その反応だと、知ってたんだな。ミクリアから聞いたのか」
小さくうなずくララ。
「俺が決めたことだし…っていつもなら言うと思う。けど、もう自分勝手なこと、っていうか人の意見を聞かずに突き進んでいくのはやめる。それでさ、ララも一緒に受けないか? 冒険課程」
さっきまで輝きがなかった目に一抹の光がともった。
正直賭けだった。自己中で自分勝手な俺がララを傷つけていた。避けようとしていた。それでもやはりララのことをあきらめきれなった。そしてだらだらとぎこちない関係を保ってしまっていた。
でももう決めた。
俺は俺で多分これからもわがままで頑固、自己中なのは変わらないだろう。それでもララのことが、たぶん。好きだ。
だから、だからもうこれで決めちまおう。
ララが本当の俺、わがまま頑固自己中のありのままの俺には着いていきたくないと思うのなら、もうこの関係は終わりにしよう。それが最低のわがままでも。
でも、もし好きでいてくれるのなら、一生をかけて今までのことを償って、それで絶対に幸せにしてやる。
ララの目の光がゆらゆら弱くなったり強くなったりを繰り返している。
あとはララが決めるだけだ。
「全く。最後までわがままばっか言って。一回でも私のことを思って行動した事あんのかな。レナグに愛想付かされないようにね。」
そう言ってララが立ち上がる。負け…か。仕方ないのかもしれない。それだけのことをしてしまった。
「じゃあね。ちゃんと生きてなよ」
その言葉話最後に俺はララの顔を二度と見なかっ—
「ってなるかあー!! アホー!! 蹴っ飛ばすぞワレェ!!」
「——っっっ!」
「あのなあ、私がこれまでどれだけあんたに…どれだけあんたに惹かれてきたかわかってんのかああ! だいたいなあ、これで私が離れてあんたが冒険課程中に骨になったら胸糞悪いだろうがよおお。どこまでわがまま自己中なんだてめえ。あ? アフターサービスがなってねえぞこらあ!」
うおお、まじかあ。顔を赤くし息を切らしてはいるが、その威圧感はまさに化身そのものだった。
「はあ、ほっんとにこいつは。いつになったらわかるんだか。ま、仕方ないか。脳筋だし。致し方なし。レナグとミクリアがかわいそうだしねこんな邪魔者がいて。私がついて行ってあげるわ。冒険課程。でも、絶対に死なない、無茶しない、そもそも心配かけない! これが条件! わかった!?」
「…は、はい」
「はっきりと!」
「はい!! 了解しました!」
「ったく」
良かった。心の中を安心感と幸福感が満たしていくことを感じることもなく、喜びが最高到達点になった。
そして、なんか目が熱いと思ったらいつの間にか号泣していた。
「ほらっ! タオル!」
ああ、よかった。本当に。
心の底からそう思った。こみ上げる思いを抑えるのに相当力を入れた。今にも飛び上がりたい気分だ。
「決まったみたいだな」
いつの間にかレナグがいた。ミクリアもララと一緒に喜びあっている。
「ああ。最高の形でな」
「それはよかった。わがまま小僧。」
「やめろよそれ。恥ずかしい」
そうか、会話を聞かれていたかもしれないのか。というか最後のあれは絶対に聞こえていただろう。自然と汗が出て、耳も桜色になる。
「まあ、聞こえてたけど。てか聞いてないっていう方が無理あると思うけどとりあえず隊員探しも終わったことだし、一件落着だな」
「ミクリアもいいって言ってくれたのか」
「ああ」
「が、頑張らせてもらおう。ららのためだし。」
「そうね。白亜とレナグだけじゃすぐ白骨になりそうだしね」
「その表現なんとかなんねえのかよ?」
「事実だから」
「はい…」
「お、大船に乗った気持ちで、ぼ、僕たちに任せて。ちゃ、ちゃんとれなぐ、と後、はくあ、サポート、する」
俺が次いで感があるのはこの際気にしないでおてやろう。レナグのやつもそのうちなんかしらすることだろう。
「さてと、小隊員もそろったし、冒険開始と行きますか」
そうレナグが言った。いよいよだ。本格的に始めるか!
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