第18話 盗み聞き
『んで、どうだった? 死んでも食べたかったクスクスロワイヤルは』
『これだよこれって感じ。懐かしいなぁー』
『嘘つけ』
「え?」
『アンタ食べるの初めてだろ』
『…………』
頼の言葉に女性の霊は黙り込んだ。私は万華鏡を耳につけたまま大きく目を見開く。その沈黙は肯定の意味を持っているだろう。
「え!? 懐かしの味じゃなかったんですか? ちょっとあの、私の声聞こえてますよね!!」
「落ち着け卓。ここの声は届かない。その筒は向こうの声をこちらに届けるだけだ」
それを聞いて私は咄嗟に自分の口元を押さえた。聞こえてもいないのに大声を出してしまったことが急に恥ずかしくなってくる。それにしても食べるのが初めてってどういうことなのか。
「そこから何が聞こえたんだ?」
「あの霊……そろそろ食べたいって、あの料理を指定したんです。なのに、食べるのが初めてだと頼が言って、彼女は言い返しもせずに黙りました。この反応は……図星をつかれたって感じです」
「ほう?」
ルイは面白そうに私の話を聞いている。私は話ながら、また筒に耳を済ませた。
『あーあ。ばれちゃったかー。え〜なんでわかったの?』
『何かを初めて食べる時、人はちょっとだけ独特な仕草をするんだ。他人の動きをコソコソしながらも注意深く見て、ゆっくりと迷うように匙を動かす。それが自分の口に合うわからないから、食べるまでにも感想を抱くまでにも間があく。逆にまた食べたい品を食べる時は美味しいことを知っているから気が急くんだ。勧められる前に食べ始めて、自分から感想を漏らすんだよ。アンタは明らかに前者だった』
『へぇ、やっぱすごいね、お兄さん』
『人が料理を食べる瞬間を多く見てきたからなぁ』
『さっすが。これもめっちゃ美味しいもん。特にスープ』
思わず大きく息を吐く。さすが頼だ。彼女の嘘を見抜いたところもとびっきり美味しいスープを作ってしまうところも、何気に私が入れ替わった後に霊の相手をしてくれているのも、挙げたらキリがない。
『そりゃどうもなんだけど……説明を求む』
『だよねー、どこから話したもんかな』
女性の霊はうーんと声を漏らしてから手を止めてぽつりぽつりと語り出した。
『修学旅行でフランスに行って、友達と店に入ったんだ。そこで食べたの。もう見た目も覚えてもないけど』
『いい思い出じゃないのか?』
呆れたようなため息が聞こえる。姿は見えないけれど、何かを諦めて笑っているようにも感じ取れた。
『ぜーんぜん。あいつら別に強いて言うなら友達って感じで、多分友達じゃないと思うし』
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