第24話 王家御用達の免状と、新たな依頼

王家御用達の免状


 貴族による誘拐事件から数日が経った。

 事件はすでに王宮や貴族社会にも広く知れ渡り、ユキが王家に仕える美容師であることは公然の事実 となっていた。


 「ユキ、お前の働きが正式に評価されたぞ」


 公爵家のグラナードに呼ばれ、王宮へ向かったユキは、一枚の書状を手渡された。

 それは、王家の紋章が刻まれた厳かな免状だった。


 「布山ユキ殿、陛下の名のもとに、王家御用達の美容師としての免状を授与する」


 ユキは目を瞬かせた。


 「……私に、これを?」


 高官が頷き、口を開く。


 「今回の事件で、お前の立場が貴族たちの間で明確になった。

 王家の後ろ盾があることを公にすることで、今後お前に危害を加える者を牽制する狙いがある。」


 ユキは書状を見つめながら、複雑な気持ちになった。

 確かに、今まで無防備だった自分の立場を守るためには必要なことなのだろう。


 しかし——


 「これを受け取ったら、私は“王家専属の美容師”にならなきゃいけないんじゃ……?」


 ユキの問いに、高官は穏やかに首を振る。


 「いいや。これはあくまで“独立した美容師”としての立場を尊重するものだ。

 王宮での施術は今後も頼むが、それ以外の仕事はお前の自由だ」


 ユキはその言葉に少し驚いた。

 (王家は、私の独立を認めた上で後ろ盾を与えてくれるのね……)


 王家の支援は大きな力になる。しかし、ユキはあくまで“美容師”としての道を貫きたかった。


 「……わかりました。ありがたく頂戴します」


 そうして、ユキは王家御用達の美容師として正式に認められたのだった。


広がる影響


 王家の後ろ盾を得たことで、ユキの名前は貴族社会でさらに知られるようになった。

 特に、貴族夫人や令嬢たちの間で「ユキに施術を頼みたい」という声が急増していた。


 「ユキさん、本当にすごいわね!」


 イーヴァは満面の笑みで喜んでくれるが、ユキは少し気が重かった。


 「……なんだか、どんどん大ごとになっていく気がする」


 「でも、それだけユキさんの技術が認められてるってことよ?」


 確かに、それは嬉しいことだ。

 しかし、ユキは美容師として、もっと“普通の人”のためにも働きたいと思っていた。


(貴族だけじゃなく、庶民にも気軽に美容を楽しめる環境を作りたい……)


 そんなことを考えていると、新たな依頼が舞い込んできた。


貴族からの相談「白髪を何とかできないか」


 「布山殿、あなたの技術で何とかしてほしいのです」


 そう言って訪ねてきたのは、とある貴族の婦人だった。

 彼女は、手鏡を見ながら少し申し訳なさそうに言った。


 「……最近、白髪が増えてきてしまって。

 あなたの“技術”なら、何か方法があるのではないかと思いまして……」


 ユキは彼女の髪をじっと観察した。


 確かに、ところどころに白髪が混じっている。


 (なるほど……やっぱり、白髪染めの需要はあるのね)


 地球でも白髪に悩む人は多い。

 染めることで若々しい印象を保てるし、本人の気持ちも明るくなる。


 (でも、この世界にはまだ“髪を染める”という文化がない)


 染料を使えば白髪を目立たなくすることは可能だろう。

 問題は、この世界に「髪を染めるための植物」があるのかどうか だった。


 ユキはしばらく考えた後、静かに口を開いた。


 「……方法を考えてみます」


 「本当ですか!?」


 貴族の婦人が目を輝かせる。


 「ええ。ただ、まだ試したことがないので、まずは染料になりそうな植物を探してみます」


 そうして、ユキの新たな挑戦が始まった。


つづく

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