第17話 王家への献上と新たな展開
王宮へ向かう馬車の中、ユキは緊張で手のひらにじんわりと汗をかいていた。
(まさか異世界に来て、こんなに早く王宮に足を踏み入れることになるなんて……)
横に座るイーヴァは相変わらず楽しげで、窓の外を眺めながら「王宮ってすごいのよ!」と無邪気に笑っている。
一方、グラナードは表情を崩さず、静かに腕を組んでいた。
「ユキ、あまり緊張するな。今日はただの献上式だ」
「いや……普通に緊張するでしょ……」
「王家に認められるというのは、そういうものだ」
(まるで当然のように言うけど、私にとっては一世一代の出来事なんですけど……!)
そうしているうちに、馬車は王宮の前に到着した。
王宮での献上式
目の前に広がる壮麗な宮殿を見上げ、ユキは改めてこの国の格式を実感する。
(これは……すごい)
白亜の壁、荘厳な装飾、広大な庭園——すべてが完璧に整えられ、まさに王の住まう場所だった。
王宮の門前で、出迎えの侍従たちが一礼し、彼らを中へと案内する。
「マーストン公爵、陛下がお待ちです」
グラナードが頷き、一行は王宮の奥へと進んでいった。
大広間に通されると、すでに王族たちが集まっていた。
王座の前に座るのは現国王——
その隣には、優雅な姿勢で椅子に腰掛ける王妃。
そして、側近たちが控えている。
ユキは、その場の威厳ある雰囲気に思わず息を飲んだ。
(これが……王族……)
グラナードが一礼し、堂々とした声で献上の目的を伝える。
「陛下、王妃様。本日は、マーストン家より新たな織物を献上するために参りました」
侍従が用意した台座に、シルクウールで仕立てた衣服が丁寧に置かれる。
ユキが開発に関わった生地——それが、王家の目の前に並べられたのだ。
王家の反応
王妃が、興味深そうに手を伸ばし、織物の感触を確かめた。
「まぁ……これはなんて滑らかで心地よい肌触りなのかしら」
彼女は思わず感嘆の声を上げる。
「今までのシルクとは異なるわね。しなやかで、それでいて適度な張りもある。これは何かしら?」
グラナードがユキに視線を送る。
「説明してやれ」
ユキは内心「え、私が!?」と焦ったが、ここで引くわけにはいかない。
深呼吸して、落ち着いて説明を始める。
「これは、シルクに適量のウールを織り込み、表面を滑らかに加工した新しい生地です。シルクの柔らかさと光沢を活かしながら、ウールの特性を組み合わせることで、より上質な質感を実現しました」
王妃は目を輝かせながら、生地を撫でる。
「素晴らしいわ……このような織物が生まれるとは」
ユキはホッとしながらも、次の言葉を聞いて驚くことになる。
「陛下、この織物、王家の公式衣服として採用するのはいかがでしょう?」
(え!? そんな展開に!?)
王妃の提案に、国王が静かに頷く。
「うむ。実際に見ても、その価値は明白だ。この織物は確かに王家に相応しい」
そして、王はユキをじっと見つめた。
「これは、お前が考案したものなのか?」
ユキは少し戸惑いながらも、しっかりと頷いた。
「はい。素材の特性を活かして改良を試みました」
王は満足そうに頷く。
「素晴らしいな。その発想力と技術、ぜひともこの国に役立ててほしい」
ユキ、国家の庇護を受けることに
こうして、王家は正式にユキの技術を支援することを決定した。
「今後、お前の研究に必要なものがあれば、マーストン公爵家を通じて要請するといい」
王の言葉に、グラナードも頷く。
「マーストン家としても、ユキの活動を全面的に支援する」
(なんか、すごいことになってる……)
ユキは驚きつつも、これが自分の活動を広げる絶好の機会になることを理解していた。
(これで、より良い道具を作る環境が整う……!)
しかし——その場にいた貴族の一部が、意味深な視線を送っていることには、まだ気づいていなかった。
つづく
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