「彼女にフラれたので、最強幼なじみ(美少女)と偽装カップルになったら……なぜかイチャイチャが止まりません!」
やこう
第1話 「付き合ってみる?偽装カップルとして」
放課後の教室。西日に照らされた窓際で、俺――
「……え?」
思わず聞き返すと、彼女は憐れむような目を向けてくる。
「だから……別れよう、蓮」
もう一度、はっきりと告げられた。
俺の目の前に立つのは、生徒会副会長の
成績優秀で、家柄も良い。
おまけに運動神経もいいという完璧超人
。そのうえ性格も穏やかで、学校中の男子の憧れの的だった。
そんな彼女と俺は、約三ヶ月前から奇跡的に付き合っていた――はずなのだが。
「え、ちょ、待って。いきなり別れようって、どういうこと?」
「……蓮は優しいよ。でも、それだけ」
「それだけ?」
俺が聞き返すと、莉央は少し言いにくそうに視線を逸らした後、ため息混じりに続ける。
「優しいし、悪い人じゃない。でもね、蓮って……正直、つまらないの」
「…………」
頭を殴られたような衝撃だった。
つまらない? 俺が?
「もっと刺激が欲しいの。ドキドキしたいの。だけど、蓮と一緒にいても、それが感じられないの」
「……俺なりに、大切にしてきたつもりだけど」
「うん、それはわかる。でも、もう耐えられないの。ごめんね」
そう言うと、莉央は名残惜しそうに微笑んだ。
――こうして、俺の初めての恋は、あまりにもあっけなく終わった。
******
家に帰る気になれなかった俺は、そのまま公園のベンチに座り込んだ。
もう夕方で、すれ違う人もまばらになっている。
ふとスマホを取り出し、莉央とのLINEを開いた。
そこには、昨日まで普通にやりとりしていたメッセージが残っている。
"明日、お昼一緒に食べようね"
"うん、楽しみ!"
……昨日までは、普通だったのにな。
つまらない。刺激がない。ドキドキしない。
つまり、俺は"普通"すぎたってことか。
そりゃあ俺は、特別イケメンでもなければ、運動神経が抜群にいいわけでもない。
成績もそこそこ。
どこにでもいる、平凡な高校生だ。
(それでも、俺なりに好きだったんだけどな)
ため息をつき、スマホをポケットにしまった、そのとき――
「……なに暗い顔してんの?」
突然、すぐ隣から声をかけられた。
「うわっ!? って、お前……」
驚いて横を見ると、そこには九条芹奈(くじょう せりな)が立っていた。
俺の幼なじみであり、県内最強の女子剣道選手。凛々しい顔立ちに、すらりとした長身。
普段は感情をあまり表に出さないクールな美少女で、学校では「鉄壁の姫」とか呼ばれているらしい。
「蓮が一人で黄昏れてるとか珍しいな。彼女にでもフラれた?」
「……ああ、まさにその通りだよ」
「マジで?」
意外そうに目を見開く芹奈。
流石にデリカシーないことをしたと思ったのか後ろめたい顔をする。しかし彼女はそれでも続けた。
「まあ、蓮みたいな優男は、いずれ飽きられると思ってたけど」
「お前も俺のこと、つまらないって思ってたのかよ……」
「冗談。で、なんでフラれたの?」
……冗談か。まぁ彼女なりの冗談で少しでも元気にさせようとしてくれたのかもしれない。
「つまらないから、だってさ」
「……あー、なるほどね」
なぜか芹奈は納得したように頷いた。
「俺ってそんなに退屈な人間かな」
「退屈っていうより……うん、まあ、無難?」
「フォローになってねぇよ」
俺がため息をつくと、芹奈は少し考え込むように腕を組んだ。
そして、なぜかニヤリと笑い――その言葉を告げた。
「——じゃあさ、私と付き合ってみる?」
「……は?」
唐突すぎる提案に、思わず固まる。
「だから、私と付き合ってみる? 偽装カップルとして」
「……なんでそうなる?」
「蓮は彼女にフラれたばっかでしょ? だったら、私と付き合ってるフリでもすれば、周りを見返せるんじゃない?」
「別に俺、見返したいとか思ってないけど」
「それに、私もちょっと面倒なことになっててさ」
そう言いながら、芹奈は少し不機嫌そうに続ける。
「最近、しつこい告白が多くて困ってるんだよね。付き合ってる人がいれば、そういうのも減るでしょ?」
「……いやいや、だからって偽装カップルは極端すぎないか?」
むしろ俺がどうこうと言うよりかはそっちの方が本命なのだろう。
「いいじゃん、別に減るもんじゃないし」
「いや、減るとかの問題じゃなくて……」
俺が言葉を濁していると、芹奈はじっと俺の目を見て、まるで挑戦するような口調で言った。
「それとも、私じゃ不満?」
「……そういう問題じゃないだろ」
「じゃあ、決まりね」
「ちょっ……!?」
俺の返事を待たずに、芹奈はスマホを取り出し、何やらポチポチと操作する。
「とりあえず、私たち付き合い始めたってことにしとくね」
「え、待って、勝手に?」
「だってもう決めたし」
「お前なぁ……」
おかしい。完全に流されている。
だが、このときの俺はまだ知らなかった。
――この"偽装カップル"が、思わぬ方向に転がっていくことになるなんて。
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