第10話 異端
「マテオ、状況は?」
「屋敷は他の聖騎士たちで取り囲んだのデアル」
「まだ気づかれてはいないようね」
夜中の貴族の邸宅の集中する一画。聖騎士団の任務に今回は俺も同行することになった。俺に
「では、踏み込みます!」
シルビア団長の号令で、庭木に
おいおい、そういうのいいのか?
大きな
「ここに潜んでいるはずなのデアル!」
先頭を行くマテオさんの声と同時に階段を上がった二階から扉が破壊される音がした。シルビアさんとその部屋に到着すると、ガウンを
「だからそれは誤解だと言っているであろう! おおっ、あなたはシルビアさま! どうぞ私の話を聞いていただきたい」
彼は貴族の中でも急進派とされる人物、パパン卿。政治的に邪魔な存在としてもともと目をつけられていたようである。でも、聖騎士団の団長とはいえ、シルビアさんに「さま」づけ? 副団長のマテオさんに対する態度とは大きく違うような気がする。
「いえ、パパン卿。もう調べはついているのです。ああ、来たか」
するとキースさんが何か紙の
「地下の隠し部屋にこれと現物がいくつもありました」
「そうか」
「そ、それは……」
シルビアさんが
「
後ろからこっそり覗くとそれは
「マテオ、それで彼らは?」
「ミメーシスなのデアル。問題ないデアルな?」
「ああ……、規定通りだ」
シルビアさんと何か話したマテオさんが拳を構えた。その拳はうっすらと赤い光が宿っている。あれは身体強化? 普通に殴っても人を殺してしまうような怪力なのに、どうしてそんなことまでして……。
「ま、待て。お前たちは『奴ら』の情報が欲しいのではないのか? どうだ、取引しようではないか。私なら……」
「要らんのデアル。悪魔が貴様のような小物に正しい情報を伝えるはずがないのデアル。
「くっ、ならば!」
パパン卿はガウンの下に隠し持っていた何かを取り出しこちらに向けた。
「それは『銃』なのか!? そんなものまで流出しているなんて……」
その小型の魔道具のようなものを向けられたシルビアさんがそう言った。
「さすがはこの世界の『
彼が何かを言い終える前にマテオさんが踏み込んだ。
「がっ!」
「きゃっ」
パパン卿とその夫人の姿が一瞬で消滅すると同時に、パンッという乾いた音を俺は聴いた。
「うっ……」
「アルベルト!」
俺の右肩が焼けるように熱い。遅れてきた激痛に俺はしゃがみ込む。何が起きた? 肩が
「じっとしているのです、アルベルト。だ、大丈夫だ、落ち着くのだ! ま、マテオ、弾丸はどうなった?」
「問題ない、貫通したのデアル」
シルビアさんの声のほうが慌てているように聴こえていて、こんな
「ん?」
彼女の両手が俺の肩の傷口に添えられた。そしてじんわりとした何かが流れ込んでくる。いままで感じていた熱さと痛みがひいていく。
「あれ? 痛くない」
シルビアさんが手を離した肩には血も消えていて、よく見えないがおそらく傷も消えているようだった。これが治癒魔法なのか。見上げるとシルビアさんがホッとした顔をしていた。この魔法には魔力や体力を多く使うのかその額には汗が
「うむ? そのクローゼットの中に潜んでいる者がいるのデアル」
それを聴いたキースさんたち騎士さまは剣を抜いてクローゼットに向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます