第3話 いじめの理由

――――3年10組


「池田さん、なにかあったの?顔が真っ青だよ。」

梶君が心配して聞いてくれました。

でも、前の学校でいじめられてたことや、さっきの伊藤さんたちに言われたこと、梶君には知られたくなくって、

「...平気。」

とぼそっと答えました。


それからも、梶君はなにかにつけて私に優しく接してくれました。

はたから見たら、『彼女?』って感じでした。


それと同時に、伊藤さんたちのいじめはひどくなってきました。

ノートや教科書に落書きされるのは、当たり前。

そのうち、上靴や体操服を隠されたりもしました。

そして、机に〈死ね!〉と書かれました。

梶君ははそれを見て、伊藤さん達を怒鳴ってくれました。

「伊藤さん!君か!?こんな落書きをしたのは!!!」

普段、大きな声さえ出さない梶君が怒鳴ったもんだから、みんながびっくりしていました。

そんな梶君を、浅倉沙月(あさくらさつき)さんが、止めに入りました。


「梶君!話があるから、ちょっと来て!」

浅倉さんは梶君を階段の踊り場まで連れて行きました。

私は、梶君と浅倉さんを追いかけました。

そんな私を高橋大地(たかはしだいち)君は追いかけてきました。

階段の踊り場の前で、私と高橋君は二人の様子を見ていました。


浅倉さんは怒った口調で話していました。

「梶君、どうして、池田さんがいじめられてるかわからないの?!」

「えっ?」

梶君はきょとんとしていました。

「あなたよ!」

「一番の原因は、あなたが池田さんを構うからなのよ!」

「どういうことなんだい?」

浅倉さんは、呆れたようにいていました。

「伊藤さんは、梶君のことが好きなのよ。」

私は想像もしていない言葉に驚きました。


「高橋君、私、梶君のところに行きます...」


「池田さんが梶に話があるそうだ。」

「朝倉、教室に戻るぞ。」

大地は浅倉さんを連れて教室の戻った。


「梶君...」

池田さんがふるえながら、僕を呼んだ。

僕はその場で思わず池田さんを抱きしめた。

「僕が守るから!」

「梶君...」

「浩平だ。」

「湖桃。」

僕は、はじめて、池田さんのことを、下の名前で呼んだ。


湖桃を連れて帰ると、大地と浅倉さんに言われたのだろう。

伊藤さんが湖桃の机の落書きを消していた。

僕は、結局、湖桃の為に何をしてきたんだろう...


大地と浅倉さんが目を光らせてくれてるおかげで、表立ったいじめはなくなった。

僕は教室で湖桃と仲良くすることは極力避けた。


そして、お昼休みに生徒会室で湖桃と過ごすことが日課になった。

帰りは、学校から離れたところで待ち合わせをして一緒に帰った。


そうしているうちに、自然に唇を重ねる関係になっていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る