第三話


アラームの振動に目覚めると渋滞に巻き込まれているのか予定よりかなり遅れていた。このままじゃ予約に間に合わないかも。

いつも遅れないようにと早めに起きたり出発するのにスキマ時間を見つけるとスケジュールをねじこんでしまったり、掃除を始めたりしてしまい五分十分の遅刻癖が治せない。


「おはよ。遅れてるね」

「仕方ないよ。キャリーもってそのままクリニック行こう」


邪魔くさいキャリーを持ったまま移動するのは避けたかったが遅れるよりはいいだろう。

ようやくバスを降りたのはクリニックの予約時間だった。

だらだら歩くエミを急かし半分走るようにクリニックへ向かう。


「こんにちは。お待ちしておりました」


流暢な日本語と笑顔で通訳さんが出迎えてくれた。


「遅くなってすみません」少しあがった息で遅刻を詫びる。

「大丈夫ですよ。どうぞ座ってください」


タブレットにカウンセリング内容を入力し同意書にサインをしていく。

院内は簡素な装飾だが清潔感があり待合の半分ほどが埋まっていた。


室長はクールな美人でアップセルがなく好印象だった。

必要以上に接客に愛想の良さを求めるは日本独特の文化だと思う。


余計な利害を生まない為にも代金に見合う接客サービスの方が客がつけ上がらなくていいのではないか。


カウンセリングの結果、希望通りハイフと糸リフトに決まった。

施術着に着替えコンタクトを外し顔を洗う。


ハイフを打った後、片言の日本語の看護師が麻酔クリームを塗布してくれた。

色が白いな。鼻の形が可愛い。

目が合うとにこりと微笑んでくれて私も笑顔を返した。


カウンセリングに同席してくれた通訳の女性が医師の言葉を日本語で伝えてくれる。左右差が出る可能性や内出血のリスクなど改めて口頭で注意事項を説明され、なりたいイメージを伝える。


「頬のボリュームを減らしてたるみを引き上げたいんです」

頬骨のあたりを指さし、こめかみに向けて引き上げる動作をする。

「わかりました。ほうれい線にヒアルロン酸を入れた方がより綺麗になりますよ。どうですか?」


「お願いします」

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