第55話

 曲げた腰を伸ばして笑うルルル、その後ろで二個の肉を頬張るマリー。

 あれ、戦闘は?


「ところで、あんでさー、ここで肉焼いてるの~?」


「もぐもぐ、必要なのです。

 邪魔しないように戦ってください、もぐもぐ」


 あ、一応戦闘は続いてるのね。


「いーけどー、あーしも一本もらうね~☆」


「ダメです、もぐもぐ」


「もぐもぐ……味しないじゃん!

 あ、このキモイヌもウケるからあーしがもらうね~☆」


「ダメです」


「ケチケチチャンマリ―!

 いいよ、チャンマリ片したらいいだけだしぃ」


 残りの肉を頬張って剣を構える両者。


「ちょっと待ったーっ!

 僕は今、ルルルの過去を見て分かった事があるー!」


「ギャハハハ、このキモイヌわけわかんねー!」


 叫ぶ僕を笑う派手派手ポニーテール。

 そりゃそうか、僕の魔法はマリーしか知らないはず。


「クグロフのおっさーん!

 あんたがルルルの両親を殺した張本人じゃねーかっ!

 百三十七人殺しの通り魔に魔剣を与えてっ!

 人の記憶を勝手に改ざんしてんじゃねえっ」」


「ムウッ……」


 クグロフの顔色が少し曇る。

 普通なら、デタラメを言うな! とか怒るとこだが。

 話が正確過ぎたのか、僕の魔法を知っているのか?

 どっちでもいい、この中で一番悪いヤツを暴かないといけない!


「ルルルの危機を救ったのはマリーちゃんなんだよ!

 ねえマリーちゃん、クグロフの手足を斬った事は覚えている?」


「はい、結構最近ですから。

 回転する魔剣を回収したら教団の人が邪魔をするので斬りました」


「ほら、インコ女!

 これでわかっただろう。

 親の仇はマリーちゃんじゃなくて教団とクグロフなんだ!」


 初めて真顔になったルルルは腰に手を当てて、一緒にリハビリをした元研究所所長の方へ顔を向ける。


「今の話はホントか、ググパパ?」


「……うむ」


「じゃああとで土下座一回な!

 さーてまた殺し合おうぜチャンマリ―、ギャハハハハ☆」


 すぐに高らかに笑って、刺さった剣に手をかけるインコギャル。

 僕は彼女の言動が理解出来なさすぎて、思わず前に走り出た。


「いやいやいや、ちょっちょっと待って!?

 君の親を殺したのはあのハゲパパだって認めたんだよ?

 倒すのはマリーちゃんじゃなくてあのハゲなんだって!」


「えー、そんな昔の覚えてないコトどーでもいいし。

 それよりあーしは命令されて人を殺す方が楽しいし☆」


 剣を振り回しながら、ウィンクとカワイイポーズを決められた。


「ぐわあああっ、イカれてる、イカれてるよおおっ!

 魔剣崇拝教団は全てがおかしいよおおおおおっ」


 混乱して絶叫する僕にマリーが声をかける。


「肉が焦げてます」


「あっ、いけないいけない!」


 急いでロースト箱に戻ってベリーベリーウェルダンの肉を下ろして次の肉をセットする。

 背後では二人の死闘が再開されて、異なる金属のせめぎ合う音が響く。


「うぐっ!」


「マリーちゃん!?」


 我が飼い主の悲痛な声に振り向く。

 金の二本の槍を構える少女は肩や足に切り傷を負っていた。


「ギャハハハ、チャンマリよわ~い!」


 七色の髪の女は地上に刺した剣を利用して十本の曲がる鉄の槍を、周りにうねらせて遊んでいる。


 無表情のまま態勢を整えるとマリーは走り出す、ルルルの方へと。

 インコ女が操る十本の槍を、二本の金槍をぐるぐる回して防御しながら。

 しかし防ぎきれず、コートに顔に腕に足に切り傷が増えていく。


「おっと、チャンマリお得意の手足切断かぁ! ギャハハハッ!

 バレバレなんだっつーの」


 相手の懐に入るマリー、ルルルは攻撃から防御に転じて鉄の蛇を身体の周りに集める、その瞬間。

 銀髪の小さな少女は敵のみぞおちに掌底を放つ!


「ぐはぁっ!」


 操金の動きにしか注意を払っていなかった七色女は対応が遅れた。

 苦痛に顔を歪ませて身体を曲げる。

 その左顎付近に回し蹴りが追い打ちをかける。

 さらに容赦なく顔面に掌底を叩きこんだ!


「ギャアアアッ!

 あーしの顔になんて事を、このガキがっ!」


 血を吐いて喚きながら大きく後退するルルル。

 慌てて出す操鉄の蛇が見当違いの方向へ飛んでいく。

 マリーが汚れたコートを叩くと。

 お喋り女の手足に暗器が刺さる。


「イタイいたい痛いっ!」


 我がご主人様の優勢で終わるように見えたその時。


「マリー、後ろっ!」


 離れた場所に刺さっていた鉄剣から、槍が飛び出して後方から襲い掛かるのが見えた僕は叫ぶ。

 殴られて飛ばした鉄はデタラメではない、死角の剣に触れて魔力を流す為だった!


「ふっ!」


 後方宙返りで攻撃へ避けると、両者が再び態勢を立て直して対峙する。

 出血はマリーの方が多いハズ。

 しかし派手女の派手な鼻血の噴出の方が目立った。


「ぶばばばばっ、ぐっググパパ!

 小娘が体術使えるなんて聞いてねえよっ!」


「はて、言っておらんかったじゃろかのう?」


「テメーッ土下座あと二回追加だ!

 チャンマリ、次ヨユー無しでマジ殺す!!」


「やっと殺気を出してくれてよかったです」


 お互いよくわからない言葉を吐くと、アンカーで得物を固定して構える。

 両者低く構えるその姿勢は、次の一撃に勝負を賭けるつもりだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る