第三話:深海の戦い①

 ライスは、司令塔の中央で腕を組みながらスクリーンを見つめていた。

 目の前のデコイを仕掛けてから数分。

 正体不明の潜水艦反応をじっと観察している。


「デコイが奴らに引っかかったか、反応が確認された」


 オペレーターが報告すると、ライスは微笑を浮かべる。

 だが、その笑みは冷徹で、狡猾なものであった。


「相手は警戒しているが油断しきっていないようだ。興味深い……向こうの潜水艦の艦長はどんな男だろうか? 奴らも我々の存在に気づいているが、完全には反応していない」


 副官のクライスが、その時点で口を開く。

「確実に接近しているようですが、奴らが先に仕掛けるとは限りませんね? 彼らも無音航行で距離を詰めている。」


 ライスは少し首をかしげ、冷徹に指示を下す。

「あまり悠長にしていると、相手の思惑通りに動いてしまうな? 警戒心を増しつつ、こちらの位置をしっかりと悟らせてやろう。彼らがこちらに対して反撃するように仕向けるのだ」


「了解しました。」


 オペレーターが素早く操作を行うと、UXX334は静かに進行方向を変える。

 彼らの目的は、相手に悟られずに接近し、先制攻撃を仕掛けることだった。

 しかし、そこで急激に方向転換をすると、向こうの潜水艦に気づかれる可能性が高まるため、ライスはあえてのアプローチを選んだ。


「緩やかに方向を修正し、速度を落とせ! あくまで敵の注意を引かせるためだ」


 ライスの冷静な指示に従い、UXX334はゆっくりと動き出した。

 だが、この動きは単なるおとりに過ぎない。真の目的は――


「魚雷発射準備、ターゲットは正体不明の潜水艦! 発射管はすべてセット完了。発射時、間髪を入れずに目標を撃つ。」


 艦内の空気が一変する。


「ソナー、目標の位置を最終確認。距離は?」


 オペレーターが答える。

「目標距離、600メートル。魚雷射程圏内」


「よし、射撃管制システム、ロックオンだ」


 ライスは冷徹に、艦長の席に座ると、ゆっくりとトリガーを引いた。


「超音速魚雷、発射!」


 UXX334の魚雷発射管から、音もなく激しい圧力の中で一発の魚雷が飛び出す。

音を殺したその魚雷は、闇の中で目標に向かって滑るように進んでいく。

そして、彼は続ける。


「最初の一撃を奴らがどう動くかだ」


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