第3話
夜が明けそうになったのでそこでハルとは別れて格安のネットカフェで3時間ほど睡眠をとってから、ホテル帰りのミキとバイト上がりのリナたちと合流する。
「ねえ聞いて聞いて~、昨日の人マジで顔良くてさ~、でも既婚者らしくて拾ってくれないらしいんだよ~、マジ悲しみ~」
「やばw既婚者に惚れ込んだら終わりでしょwうちらじゃ慰謝料とか払えないってw」
「そうだよね~、金持ちのイケメンで独身っていないのかな~」
ミキとリナは相変わらずの繰り広げている。別に私のことを傷つけるわけでもないけどなんとなくもやもやを感じる。
「うーん、そういう人はきっと相手が見つかってるんだろうね」
適当な返しをすると二人は肯定してため息をつく。うわべでは話にうまく乗りながら内心では昨日の夜のことを思い返していた。ハルは今頃何をしているのだろうか。またあそこに行けば会えるのだろうか。そんな風に話しながらみんなでカラオケに入る。個人的にカラオケの騒々しさは得意ではない。この街に来てから何度も訪れたので慣れはしたが未だにこめかみが痛くなったりする。ハイテンションなリナの歌声に笑いながら合わせるミキを横目に雰囲気で合いの手を入れる私。なんでこうしてるんだっけ?ふとそんな思いが体の中でどろりと流れる。胸が締め付けられて呼吸が浅くなる。またこないだみたいに倒れそうになるんじゃないかと焦った私は二人に断ってトイレへ逃げ込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
短い呼吸をしながら頑張って落ち着こうとするがどうも苦しさは収まらない。いろんな光景を脳裏に浮かべて気を紛らわせようとしていると、ふと昨日の夜のことを思い返した時に胸がスッと軽くなった。何故だかわからないけどそのままの勢いで呼吸もいつも通りに戻る。私の頭の中はハテナといろんな考えでぐるぐるしていた。なんでハルを思い出して落ち着くの?なんで会ってすぐなのに?誰かに似てる?なんか特別なことでもしてた?全部よくわからなくてうんうん考えてるうちにそろそろ戻らないと心配されるななんて思う。私はこの時に一つのお守りを手にしていたことに気づけた。それがここに来てからの一番の幸せかもしれない。
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