第5話 スキルのレベルアップ
「クリス、またボーッとして。早く解体を済ませちゃうぞ。」
手を止めて考え込んでいたらしくて兄上に叱られた。
言われて、オオトカゲの皮を剥ぐ作業を進める。
血抜きだけして持って帰っても良いんだけどね。荷物を少しでも減らしたいのもあるけど、持って帰ってから解体をすると掃除をする手間がかかる。
森の中だと、血やら不要な部位は埋めてしまえば良い。
以前裏庭で解体をした時に内臓を庭に埋めたら結局異臭がして、母様にめちゃくちゃ怒られたことがある。
「よっと……。あれ……?おおっ?」
オオトカゲの解体を終えて、肉は葉で包んだ後に布で包んでリュックに詰め込んだ。爪は牙も包んでしまい、皮は麻紐で束ねた。
リュックを背負ってオオトカゲの皮を紐でまとめたものを両肩に背負った兄上が、妙な声をあげて目を見開いた。
「どうしたの?」
「なんか、ふわっと軽くなったぞ。全く重みがないわけじゃないけど。ちょっとふわっと妙な感覚があって。」
「まさか……。」
「うん。『運搬』スキルがレベルアップしたかも。」
兄上にそう言われてじっと兄上を見ると、兄上が背負っているリュックや紐で吊るしたオオトカゲの皮の周囲に何かうっすらとキラキラ光る気がした。目を凝らすと、兄上の荷物の周囲にうっすらと魔力の膜のようなものが見えた気がした。
「今までちょっと軽くなってきたって思ったのも、やっぱり『運搬』スキルだったんだよ。前にちょっと軽くなったって感じたのと同じ感じでさらに軽くなったと思う。」
「ええ……。いいなあ。」
「そっちのも持とうか?」
「いや。僕だってちゃんと『運搬』欲しいから、沢山持たないと!」
兄上が、僕が運ぶように少し小さくまとめたオオトカゲの皮に手を伸ばしたので断って、自分で担ぎ上げる。
ずっしりと肩紐が肩に食い込む。重いけど続けないとスキルは得られないと思うので気合いを入れる。
「クリスも前に荷物が軽く感じるようになったって言ってたじゃん。『運搬』スキル自体はもう持っているんじゃないかな。」
「『持っているかも』くらいのレベルじゃなくて、ちゃんとわかるくらいのレベルにならないと。最終目標は『収納』だし。」
「……母様の話だと、スキルのゲットや初期のレベルアップには魔力量とか魔力制御が関連していそうだって。」
「じゃあ、もっとオオトカゲを狩らないと。」
「これ以上、運べないだろ。まだ日が明るいから一度帰ってから、角兎でも狩りに行こうぜ。」
「角兎のシチュー!」
「シチューいいよなぁ。」
ホロホロと煮崩れるくらい柔らかく煮込んだ角兎の肉を思い浮かべてテンションが上がる。ずっしりと肩に食い込む重みも気にならなくなった。
サクサクと軽快な足取りで帰路につく。帰り途中に、蛇尾鳥という蛇の尾をぶらぶらさせている鳥の魔獣を見つけて、風刃をぶつけまくって二羽仕留めた。
蛇尾鳥は小さいし持ち帰ってから解体でも大丈夫なので、首を切り落として血抜きだけをした。兄上が持ってくれると言ったけど、頑張って一羽は自分で運んだ。
「あらあら、大猟ね。お疲れ様。」
領主邸に戻って、厨房に続く裏口から狩ってきた獲物を運び込んでいると母様がやってきて、戦利品を見渡して微笑んだ。
「シャワーを浴びてらっしゃい。」
「母様、これから角兎を狩りに行きたいんだ。」
「俺、『運搬』スキルが出たのがはっきりわかったんだ。クリスも早くスキルが欲しいんだって。」
「あらあら。ローレン、おめでとう。……そうね。でもお昼の時間も近いから、角兎狩りはお昼を食べてから行きなさいな。怪我はしていない?」
「大丈夫だよ!」
「そう、よかったわ。……あら、キノコ?」
ニコニコしていた母様が、僕のリュックから出てきた赤と青のキノコを見て、少し目を大きくした。
「色材に使ってみようかと思って採ってきたんだ。」
「それなら調理に使われないように分けておきなさいね。」
「はあい。」
「こっちの枝は画材用かしら。」
「うん。一部は板にする。……薪にしないでね。」
「はいはい。乾いてないから大丈夫だけど、ちゃんと保管しておきなさい。」
「はあい。」
僕はキノコと採取した枝を、倉庫部屋に運んだ。倉庫部屋には僕専用の木箱があるのでとりあえずそこに突っ込む。さっさと昼食を食べて角兎を狩りに行きたいのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます