第8話
「今、彼の絵は世界中を巡っている」
「へぇ、さすが芸術商様だ。画家志望のヤツがみんな揃って名を挙げるだけのことはある。────ブラウウェル伯爵の目に留まれば成功は約束されたも同然ってね」
「ハハハ、畏れ多い評価だ」
謙遜しているがその表情は満更でもなさそうだ。
「私はただ自分が良いと思ったものを自信持って薦めているだけだよ」
「……んで、そのピンゼルがどうしたっていうの」
ここまで来れば、彼の目的はやはりヌードモデルのことなのだろうとあたしは思っていた。
「彼の絵は世界中にあると言ったが……実は一枚だけ、手元に残してある。それが────ヴィアンナ、貴女の絵だ」
「……あたしの?」
「ピンゼル画伯が生涯で初めて描いた裸婦……私はその絵にね、一目惚れしたのだよ」
伯爵の言葉に、あたしは初めて彼の顔を正面からまともに見た。
彫りの深い顔立ちはまるで彫像のように整っている。こういう顔を眉目秀麗と言うのだろう。
噂によると四十過ぎらしいが年齢に見合った皺もなく若々しさを保たれた肌だ。三十代前半だと言っても通じるかもしれない。
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