第11話
「シュティル……私はもう家族もいないし、良い家柄の生まれでもないわ。あなたより六歳年上で、あなたよりも少し早くおばさんになっちゃう……本当に、私でいいのかもう少し考え──」
「生まれや年齢なんて関係ない。俺はイヴが好き本当に好き大好き。愛してるイヴしか考えられないくらい愛してる。永遠にずっと一緒にいたいくらい愛して」
「う、わ、わかった。わかったから……もう、言わないで」
シュティルに触れられながらずっと考えていたことを告げると、途中で情熱的に遮られてしまった。
愛の倍返しに頬が熱くなっていくのを感じて、私も覚悟を決めた。
シュティルのことは本当に嫌いじゃない。
かと言って、色恋関係になれるかと問われたら言い淀んでしまうけれど。
でも、流し流され、彼の勢いに圧され、ここまで来てしまった。
その間、不快だったかどうかと問われたら、嫌じゃなかった。
嫌ではなかったから、そこまで強く拒否はしなかった。
これはもう、そういうことなのかもしれない。
でも、年上の矜持とでも言うのか。それを認めるにはなんだか悔しい気持ちがして、まだまだシュティルに対してお姉さんぶりたい気持ちがある。
そしてその気持ちに自信もない。
恋愛事などご無沙汰だったから、不意打ちのような出来事に対しての動揺をときめきだと錯覚している可能性だってある。
だから、私は言わない。
「ああ、イヴ……イヴ、好き、大好き……」
「わかったから、もう言わないでってば……」
「無理……言葉が勝手にあふれてきちゃうから無理。我慢できない……」
──好き。
熱く私を見つめ、愛を何度も囁いてくる。
鈍い痛みをもたらす圧に私は微かに呻きながら、握り合ったままの手をぎゅっと握った。
しかし思ったよりも痛くない。
噂に聞いていた痛みをそこまで感じることなく、私は処女卒業の瞬間を迎えた。
「ああやばい……イヴ、大好き。大好き……」
「……そんなに、何回も……言わないでってば……」
あふれる想いをぶつけてくるかのように、情熱的なキスが再び始まる。
長く長く、キスは続いた。
もう、唇がひりひりしちゃうくらいに長く。
すると、不意に私の上でシュティルがぶるぶると震え始める。だめ、とこぼした吐息が私の耳を掠めた。
おそらく果ててしまったのだろうと私は思った。
なんだかあっけない。
まるで噂に聞いていた童貞のような感じ。
────もしかして、やっぱり初めてじゃなかった?
「シュティル……? あなたって、女性経験なかったの……?」
綺麗なアメジストの瞳が怪訝そうに私を睨んだ。
「根暗な俺にそんな相手がいると思ってるの?」
────ですよね、ごめんなさい。
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