第8話

「青空みたいな髪も、夜みたいな真っ黒な目も、全部好き、大好き」

「シュティ──」


 隙を作ってしまったその瞬間に私の唇に柔らかいものが押し付けられていた。

 少しカサカサしているから、乾燥しているのだろうか。

 シュティルの唇が私の唇を何度も食む。


 ゆっくりと味わうように何度も繰り返される口づけに思わずうっとりしてしまう。

 口の中に入り込む熱い吐息が何だか心地いい。

 肉厚な舌がそっと差し込まれて上顎のあたりをくすぐってくるから、力が抜けそうになる。


 この世に生を受けて早二十五年。キスのひとつやふたつくらい経験はある。

 と言っても大した経験量ではないけれど。

 でも、それでも──これは分かる。


 ────シュティル、キスが上手過ぎでは!?

 

「……イヴ」

「な、なによ、その呼び方は……」


 しばらく味わってしま──いや、翻弄された後でシュティルが私を甘く呼んだ。

 熱を灯した呼び名に思わずドキッとしてしまうと、物理的に離せずにいる手をぎゅっと握り締められる。


「イヴは、俺のこと好き?」

「き、嫌いじゃないわよ。とりあえず離れ」

「よかった、俺たち両想いだ」


 嫌いじゃないって言っただけだけど!? どうしてそんなポジティブな受け止め方になるの!?

 ──と、再びキスが始まったことでツッコミは胸の内でしかできず。

 さっきより激しさを増したキスに息が切れる。

 苦しくて空いている手でシュティルの肩をばんばんと叩くも、シュティルは私の上から退かない。

 それどころか、この行動を「もっと」という意味に受け取ったかのようにキスをより深めてきた。

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