第4話ただの生徒

いつも通り、学校に行って、友達と話して、授業を受けてそんな日々がずっと続けばいいなと思っていた。

あんなことがあるまでは、私は何も知らなかった。

ただの生徒だったのに…。

二年の冬。

もう少しでクリスマスだね〜、とか。

年末年始どうする?とか。

教室の至る所で冬休みの話題で盛り上がっていた。

ただ好きな人もいなければ、年末年始は毎年おばあちゃんの家で過ごす私にとって、なかなか入れる話題ではなかった。

みんなが初詣の予定を立てたり、クリスマスのデートの話をしているのに…。

ただ聞いているだけ。

そんな日々が続いていた。

終業式の一週間前くらい。

突然、屋上への出入りが禁止になった。

何があったかは知らない。

そこからはみんな、その話で持ちきりだ。

いろんな憶測が飛び交う中、久しぶりに私も話題に入れる気がした。

ただ、自分の憶測を言うだけで、輪に入れている気がした。

本当は何があったのか、それに関わっていた人たちがどういう気持ちかも知らないのに…。

冬休みが終わればその話題が出ることはなかった。

そして再びその話が広がったのが、3年の夏。

受験期でみんな焦っている中、私は未だ何も考えていなかった。

先生には、何もしたいことがないんだったら、この大学行ってみたら、とかいろいろ言われたけど、なんかずーっとモヤモヤした感じでやる気が出ないというか。

そんな日々の中、屋上に入った生徒がいる、っという話を集会でされた。

誰なのかも、なぜかもわからない…。

心当たりのある生徒は言うように、とそれだけ言って、他の連絡事項や生徒会の話が始まった。

私はただの生徒で、何も知らない…そのはずだったのに。

私はみてしまった。

隣のクラスの男子が屋上にいるのを。

言うべきか悩んでいた。

ただ言ったらめんどくさそうだな、そう思って言わなかった。

近くに先生もいたし、私が言わなくてもって、そう思っていた。

ただ、確かに屋上で何をしていたのかは気になった。

だから自分で聞きに行くことにした。

なんだか初めてな気がする。

1人で誰にも言わずに何かをするというのは。

そう思いながら昼休みに、隣の教室を覗いてみた。

そこにはあの時屋上にいたあの男子の顔があった。

ただ名前もわからないし、どうやって話しかければいいのかもわからなくて…。

その日は教室にあの顔があることを確認して終わった。

次の日の昼休みまた隣の教室を覗きに行った。

屋上にいた男子が、席を立ち教室をでた。声をかけようとしたけど、かけれなかった。

途中まで追いかけれたけど、途中で見失ってしまった。

次の日の昼休み。

昨日と同じように覗きに行くと、屋上にいた男子が、扉の前で待っていた。

「きみ、一昨日からずっとここにいるよね?

しかも昨日途中まで尾けてきてたでしょ。

なにか言いたいことあるならはっきり言えば?」

そう言われて少しびっくりした。

けど、正直に私は訊いた。

「この前屋上にいたよね?何してたのかなって。ただそれだけ。」

「あーね。そっか。みちゃったか。しょうがねーな。ついてきな。」

言われるがままに着いて行った。

そのまま屋上に連れてこられた。

今まで学校のルールとか破ったことなかったから、すごくドキドキしながら着いていった。

でもそれ以上にあまり悪くなさそうな人なのにこんなことをしているのか気になったしまった。

「ほら、ここが俺たちの秘密の場所。ここに鳥の巣があるんだ。」

そう言って、鳥たちを見せてくれた。

「なんて鳥?」

気になって訊いてみた。

「さあ?知らね。でも可愛いだろ?大事に飼ってんだ。」

「へぇ。なんかもっと悪いこととかしてるのかと思った。意外。」

ただ思ったことをそのまま言った。

いつもは、馬鹿にされないかなとか、変な空気にならないかなとか、周りに気を遣って喋ってるけど、この人なら大丈夫だと思った。

「意外ってなんだよ!まぁこれでお前も共犯だな。」

「そうだね。ねえ、なんで屋上出入り禁止になったの?」

「あぁ。実は、ここで自殺しようとしてた奴がいたんだよ。

そん時から俺たちがここ使ってたから、たまたま止めれたんだけど…。

そっから、学校も来てないし、何してんのかは知らねえ。」

『バタンッ』

「ごめん待った?」

そう言って屋上に入ってきたのは、同じクラスの子だった。

「いーや、全然!そうそう、それより新しく共犯になるからこいつ。」

「えーとよろしくお願いします?」

「よ、よろしく。」

お互いに同じクラスっていうのは、わかるんだけど、名前が出てこない。

でも名前が聞けなくて、少し気まずい空気が流れた。

「そうそう、こいつが自殺しそうだったのを止めたの。すごいっしょ。俺の相棒。」

そう言いながら笑う彼にすこし、心を動かされた。

「へぇ!そうなんだ。」

「あぁ、昔僕も助けられたことがあって。

いつか死のうとしている人を助けられたらなって。

それがその人のためになったかはわからないけどね!」

そう言いながら少し空をみていた。

「なぁお前明日からも来るだろ!?遠慮せず、名前で呼んでいいからな。」

そうして私は、普通のルールを守る良い子ではなくなって、目標もできて、そこからは昼休みになるたびに、屋上で3人ご飯を食べたり、勉強して同じ大学に入った。

そして、あの日屋上で見かけた彼と付き合い始めた。

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