その14:小豆の一日 そのに!

朝八時。朝食の食器を戻し終わった後、私は週に一回の集合へ向かう。


籠守の、週に一度の集合はつい最近始まったこと。

月に一度の定例報告会はあるけれど…それだけじゃ足りないもの。

先の事件で衛兵の怠慢問題だけじゃなく、籠守同士の連携が取れていないことも問題視されたのよね。


幸いにして、現場の近くにいた撫子が浅葱と連携が取れたから、無事に終わったけれど…浅葱がいなかったら?撫子が周囲と関係が希薄だったら?

色々な可能性を導き出した時、私達ってあまり関わり合いになる時間がないのよね。

やっぱり籠守だし。自由時間は限られている。

限られている時間で交友関係を新規に開拓するよりは…今までの間柄と時間を過ごすのが当たり前なのよね。

浅葱みたいに誰かれ構わず声をかけて、あの新橋と東雲どころか鳩羽様と翡翠様まで巻き込んで駒回し大会を始める子はレア中のレアよ…。

まあ、とにかくそういう欠点を補うために、顔合わせを増やそうって話になって…この時間が設けられたのよね。


「あ、おはよう。撫子!今日もいい朝ね!」

「おはようございます、小豆さん」

「山吹もおはよう」

「おはよう、小豆ちゃん」

「あれ?いつもならここで浅葱が…」


最近十代組で自由時間を遊んでいる関係で、撫子と山吹だけじゃなく、浅葱とも関わる時間が多いのだけど…。

それにしても、山吹の暗い顔は何なのかしら。

何かあったのかしら。


「今は、未踏開拓軍時代の…上官さんとお話ししているんじゃないかな」

「ああ、露草さんね!小豆、一度会ってみたくって!」

「強い人好きだもんね、小豆ちゃん…でも、私はあんまり…」

「嫌いなの?」

「複雑なだけ…お兄ちゃんのお嫁さんだった人だから…」

「…世間って狭いですね。浅葱の上官が山吹さんの義姉だなんて…」

「私もそう思うよ、撫子ちゃん…」

「ふぅん…」


山吹のお兄さんの話は何度か聞かせて貰ったことがあるわ。

小さい山吹が将来に困らないよう、お金を稼ぐ為に未踏開拓軍に入ったのよね。

志が凄く格好いいお兄さんだと思ったもの。


けれど、死んでしまったら何も意味はないわ。


遺された大事な人達は、悲しむしかできないんだから。

唯一の家族なら…山吹のこと、もっと考えてあげてほしかったわ。


「小豆が露草さんと山吹が顔を合わせずに済むよう取り計らうわ。任せて頂戴」

「でも、小豆ちゃん…」

「まだ、面と向かって話す覚悟ができていないんでしょう?それまでは小豆を頼りなさい!」

「ありがとう…。白鳥様からも話してみた方がいいって言われているんだけど…どうしたらいいか、まだわからなくて」

「仕方ないわ!決心が付いたら教えて!浅葱に頼んで会える場を整えて貰うわ!」

「何から何まで気遣ってくれてありがとう、小豆ちゃん」

「当然よ!小豆と山吹の仲でしょ?」


小豆とは同い年で同期。

それだけじゃない。苦節はずっと共にしてきた。

私には悩みはないけれど、山吹には沢山の悩みがある。

それを支えるのも、今に始まったことではない。

自信がないところは、雀様とそっくり。

けれど山吹も雀様は心に芯が通っている、誰よりも優しい人。

そんな二人の手を少しでも引けるように、私が自信を持って二人の前を進まなきゃ。


「おはよう、浅葱」

「あ、はよ。小豆」

「もしかして、露草さん?」

「ああ。こうして会うのは初めてだな。私は露草」

「小豆は小豆。よろしくね!早速だけど、浅葱も含めて相談したいことがあるの。耳を貸して頂戴?」


「なになに、小豆からの相談って気になるや。悪巧みだといいなぁ」

「そんな大層なものじゃないわよ」

「で、小豆だったか。何の相談だ?」

「今日の衛兵達の演習。私も参加するわ。それで、貴方達のどちらかと模擬試合をしてほしいの」

「「へ?」」

「小豆、腕に自信はあるのよ」


自信たっぷりに告げてみる。

魔物相手に戦ったことはないけれど、いい腕試しだと思うの。

それに、山吹から視線を逸らすためには、これぐらい無謀そうな提案をしなければ…興味を私に向けることはできないと思うの。

大丈夫。私は小豆よ。

私にできないことなんて、何もないわ!

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