貴女にガーベラの花束を

夜桜酒

1.退屈な毎日

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高校生になったら、何か変わるのだと思っていた。

しかしそんなものは幻想でしかない。

抱いていた微かで淡い夢は夢でしかなかった。


朝早くに学校に行って友達と会って話して、退屈な授業を受けて、終わったらまた友達と話す。時間が来たら下校の繰り返し。


中学と全く変わらない日常を過ごすだけだった。そんな日常に私はどこか苛立「起きろおおおお!」


「…起きてんだけど。」


人がせっかく慣れないナレーション的なことしてんのに。


邪魔するなんぞ不躾ではないだろうか。


「起きてるだけで、ちっとも準備してねぇじゃねぇかよ!時間に余裕はねぇんだぞ?はやく準備しろ!飯食うぞ飯。」


チラリと目覚まし時計を見る。


AM7:00


「こんな朝早くにどっか出かけんの?準備ってなに。」


誰が好き好んでこんな朝早くに大声を聞かされなければならないのだろうか。

二度寝できる時間なのに。


「はぁ?何言って…ってお前忘れてるだろ!」


「何が。あ、もしかしておっさんの命日?」


「誰だよ!つか、どっから湧いて出てきたんだよ、おっさん。」


「もしかしたら、世界中にいるおっさんの1人が死んだ日かもしれない。」


「んなことあるかよ!世界中のおっさんに謝りやがれ!!今日から学校、始業式だよ!忘れてんじゃねぇ。」


何かと思えば…。

なんだ、そんなことか。

ものすごい覚えたくない事柄じゃない。

でも口に出したらまためんどうだからやめておこう。


携帯を見ると4月7日が表示されている。

確かにこの日は学校始まる日だった気がする。いや、あいつがそう言うからにはそうなんだろうな。


「んじゃあ準備できたらこいよ。」


「…はぁ。」



これ以上待たすとものすごくめんどい展開になる。何日もくどくどとお説教タイムになるからだ。


あいつのお説教タイムって地味に長い上に親に話行くからなぁ。



パジャマを脱ぎ、適当にTシャツを着る。

ハンガーにかかってる制服に手をかけ、白いワイシャツを着てネクタイを緩くしめる。

もちろんワイシャツの上から2番目のボタンまでは開ける。



チェックのスカートを短く履いたら、袖をまくり、ファスナー付きのパーカーを腰にまいた。

これが私の基本スタイルだ。

夏は長いワイシャツが半袖に変わるだけだし、冬はパーカーの上からブレザー羽織る。



それから洗面所に行き、顔を洗ってから髪を整える。

整えるっていっても私の髪の毛は肩よりすこし下ぐらいの長さだから、はねた寝癖を櫛でとくだけなんだけども。


「準備できたけど。」


「おう。朝飯できてるから食って学校行くぞ。」


テーブルにはご飯に味噌汁、卵焼きに焼き魚がある。

うん、完璧な和食だ。


「「いただきます。」」


そういって食べ始める。

うん、うまい。


ご飯はもともと米がいいけど、味噌汁とかよく出汁がきいてる。

卵焼きも私好みの甘めだし。



「思うんだがよ、普通は逆じゃね?」


「何がよ。」


「ほら、幼なじみでこういうのってさ、普通は女……俺たちの場合、千景が俺の家に来てうまい飯作って、俺を起こすじゃん。んで、一緒に飯食う。これが普通じゃね?」


こいつは……。

夢みてんのか。


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