第2話 神栖の決断
「マジ!?やったあ!」
そう言って諏訪は思わず声を大にして、峯とハイタッチ。
諏訪と峯は神栖を学校へ連れ出すため、かれこれ一週間ほどモーニングコールをかけ続けていたのだが、彼女らの勢いに圧倒されたのかはたまた根負けしたのか、いずれにしても神栖は学校へ行くと口にしたのだ。
「今言ったぞ。やっぱ取り消すってのは無しだよ?」
「―――わかってるって」
諏訪はそんな二人の会話をよそに、やにわにスマホを取り出す。
諏訪が確認したのは時刻―――――
その時スマホはちょうど10時を指していた。
「んー。10時かあ」
「どしたの諏訪ちゃん」
峯が諏訪に問いかけると――――
「いやあ、今だと先輩…いや先生も授業中だよなーって。流石にいきなり授業に参加は神栖君もしんどいでしょー?」
「あー確かに。じゃあ今から行くのもちょっと厳しいか」
諏訪はどうしたものかといった様子で頭を悩ませる仕草を見せるも、妙案が浮かんだかのようにふとつぶやく。
「じゃあお姉さんたちと遊ぶかー」
「――――はあ?」
意外な提案に思わず声が漏れてしまう神栖と峯。
「だって確か13時くらいまで授業あるでしょー、先輩は昼休みまでろくに時間も作れないだろうし、それまで暇じゃん」
「でも万が一補導とかされたら私たちも面倒だよ?」
「大丈夫でしょー。神栖君、背も高いし結構オシャレさんだし。ウチらに混じってもバレやしないって」
「さっきまで学校行けって言ってた人の言葉とは思えないんスけど…」
全くもってその通りである。
世間一般の良識ある大人ならば、学校へ通わない不良生徒を助長するような言葉は間違っても吐かないのではないだろうか。
それが学校をほっぽり出して今から遊ぼうと言われては、先ほどまでの学校へ行けという主張とも齟齬が生じてしまう。
だが諏訪は神栖のそんな疑問は意にも介さない様子で続ける。
「良いじゃん、今から一度帰って制服に着替えて、真面目に授業受けに行きますってのも難しい話でしょ。
それに先輩だって学校に連れてこいとは言ったけど、神栖君に授業受けさせろとは言ってないしー」
「それって言葉のあやだろ…」
峯は思わず苦笑いを浮かべるも諏訪の主張そのものを否定するつもりはない様子。
「まあちょっとくらい神栖君に付き合ってもらわんと割に合わんか」
どうやら峯も納得してしまったらしい。
「となれば答えはひとつ。今から遊ぶぞー少年」
「――――拒否権は?」
「無い。諦めな」
そう言うと峯は神栖の手を引き、諏訪は彼女らの言う“先輩”へメッセージを入力しながら―――――
「ほらほらー記念に写真撮るよー」
パシャリ――――とスマホカメラの乾いた音が牛丼屋の店内に響いた。
流石は今時の女子と言うべきだろうか。神栖の手を引っ張りながらもクルッと振り返りペロッと下を出しながらスマホカメラに向かってピースをする峯とそれに戸惑いを見せる神栖の姿。
そしてウインクとピースをしてキメ顔の諏訪が鮮明に映し出されたスマホを手に彼女は店を出る。
ありがとうございましたーという店員さんの声を受けながら、店の外へと歩を進める諏訪と峯、そして店員さんに対し軽く会釈する不登校児、神栖。
こういう所は律儀なんだな―――と。
内心、神栖の意外な一面を感じながら横目で眺めつつ、諏訪はメッセージを送信した。
《神栖君、学校行くって。
とりま昼休みに連絡くだちいー》
「送信っと。じゃあ行こっかー」
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