第18話、ペット
ワイは怒れる母上と喧嘩した。
母上から逃げる
アネウットと屋敷から脱出。
ワイ君家の敷地は結構広大や。
屋敷と街に繋がる方面の道は、管理が行き届いとる。
だが………屋敷から街へと繋がっとらん方面の道。
人気の無い道は管理があまい。
その中の森へ繋がっとる道を進む。
森の中にワイの隠れ家があるから。
屋敷から、距離が離れれば離れるほど管理もずさんになる。
そもそも伯爵領自体が母上のモンや。
人が住んでたり人気の多い場所は大抵市民に売買や貸し出されとる。
だが、それ以外の土地は母上の物や。
人の往来の少なく広大な場所には、自然と母上の目の届かない場所も出来る。
そこを勝手に使用する輩もおる。
ワイ君も母上に気が付かれないように、一部の施設を私物化しとるが………
まぁ、たぶん母上にバレとらん。
はず………
たぶん。
とりあえず
そこに向かって逃げとる。
「………」
「………」
黙々と黙って走る。
ワイの走る速度に後ろから軽々とアネウットはついてきとる。
ワイは基本的に、他人を思いやる。
ソンなことが出来ん。
気を使うとかも出来ん。
他人にあわせることも出来ん。
だからワイは無能なんや。
そんなワイの走る速度に、平気で着いてこれるアネウットは異常や。
アイアン家の紋章で体力強化されとるワイの立場ないでホンマに………
ま、誰かに負ける事にはなれてるし………
他人に嫉妬する事が無い。
それが、ワイ君の美徳やからな。
アネウットの身体能力に嫉妬して、悪感情を持つわけでもないけどな。
「目的地が見えてきたで〜」
「………え? わぁ〜。思ったよりも随分と大きな建物ですね」
「まぁなぁ〜〜〜」
初見のアネウットが驚くのも無理は無い。
ワイが向かってた避難場所は、平屋ながらも、ちょっとした体育館程度の広さがある建物や。
外から見てもかなり大きい。
人気の無い森の奥に、こんなデカイ建物があるとは、普通は思わんから驚くわな。
「若様。随分大きな建物ですが、コレは何の施設なのですか?」
「ん? ワイ君のペット小屋や」
「ペット? さっきも聞きましたが………こんなにも大きな施設だとは」
「婆上にもらったんや」
「若様のおばあさま?」
「そうや。母上に隠れてペット飼えるように、この建物くれたんや」
「はぁ」
「ちな、ワイの婆上は母上のほうの婆上な」
ワイ君家………
プラチナム家のほうの婆上は有能。
プラチナム家の女は有能。
男は無能や。
ちなアイアン家のほうの婆上は………
というかアイアン家は………
もれなく全員。
頭のネジが外れとる。
つまり
ワイは頭のネジが外れたアイアン家。
そして男が無能なプラチナム家の男。
そう言う、2重のジンクスを背負ったサラブレッドや。
………
正味、
ワイ君等、3兄弟。
ある意味なるようにしてなった無能や。
まぁ、ワイら本人達は然程気にしとらんのやけどな。
「若様は、何のペットを飼ってるのです?」
「ん? ペットはペットやろ」
「え〜と。どんな動物を飼ってるのですか?」
「ペットはペットやで。違いは無いで」
「………」
あ、あれ?
なんかアネウットが無言になった。
むう。
解せぬ。
ワイは他人の思考や感情を読む事が出来んからなぁ。
また、ワイは変なこと言ったか?
「あ!」
「若様下がって下さい! 魔獣です」
ワイ等の前に影が2つ飛び込んでくる。
ワイが反応するよりも早く、アネウットはワイの前に回り込む。
そして何処からか取り出したナイフを構えた。
ワイ君等の目の前には、2匹の巨大な犬の様な魔獣が飛び出してきた。
魔獣………
人を食べる獣の事や。
でも………
「アネウット大丈夫や。そいつ等ワイ君のペットやで」
「え? 若様。今なんと言いましたか?」
信じられないと、
目を白黒させるアネウット。
「ソイツ等がワイ君が飼ってるペットのうちの二匹。そいつ等は1番新しく飼い始めたペットなんや」
と、ワイが言う。
「………………若様。人を襲う魔獣をペットにしてはいけません」
「ファッ? そうなんか?」
「魔獣を家畜化するのは困難です。懐いたと思っても、ひょんな事から人を襲いますから」
「でも………こいつ等、ワイ君に懐いとらんで」
「え? でも………ペットって」
「婆上様の教えでは、ペットとは自分を襲ってきたモノ。それをねじ伏せて、つまり逆らえん様にしたものの事らしいで」
「………」
「コイツ等もワイ君に懐いとらんけども、つまり絶対に逆らわん様に躾けたで」
「若様………それはペットと言って良いのかどうか、判断出来かねます」
「ワイ君の婆上は有能やで。やからつまりペットで間違いないで」
「そ、そうですか〜? う〜ん」
困惑するアネウット。
あれ?
ワイなんか変な事を言ったか?
『ワイ君
またナニカやっちゃいましたか?』
ワイとワイのペットを前に、何やら考え込むアネウット。
ワイはその横をすり抜けた。
2匹の大きな犬型ペットに近づくと………
『ギャン』
ペット達は1声鳴いて、その場に伏せる。
「な、ワイ君には逆らわんやろ」
「本当ですね。凄い。と言って良いのか判断に困りますね」
「そうか?」
「魔獣が懐くなんて………あ、アレ。この子ら震えてる?」
地面に伏せたペット達。
ガクガク震えてる。
「だから懐いとらんで。恐怖で押さえつけとるんや」
「え?」
「ペットは2度とワイに逆らわん様に、つまり死の恐怖で従えるのが1番。と婆上に習ったでな〜」
「ええ〜!」
ワイ君等の前で………
伏せて恐怖にガタガタ震える2メートル近い大型の犬っぽい魔獣。
その様子を見て、アネウットは更に困惑しとる。
「ワイ君を殺すつもりで、ワイに挑んできたモノ達。その中でワイの反撃に耐えて、生き残ったモノの事をペットと呼ぶんやで」
「え〜と。若様………それはもうペットと呼んでいいかどうか………」
「ワイ君とワイ君のツレには絶対に牙を向かん様に、恐怖を与えとるから。武器を納めて大丈夫やで〜」
「………若様。イロイロ大丈夫とは思えませんが………もしかして、この建物の中には他にもそんな魔獣が………」
アネウットが渋い顔をしとる。
アレレおかしいな。
『ワイ君。また何かやっちゃいました?』
◆◆◆
土地を支配する
人を支配する
自分を支配する
どれか1つでも支配出来れば、自然とモテる魅力がそなわるもんだ
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