第286話

「お前何言ってんの?どういう意味だよ?」


「言葉のままの意味なんだよね」


「冗談…じゃねぇよな―――…」





聞くまでもない。


渚がそんな冗談言うような女じゃねーのは俺が一番知ってる。





「…―――いつ?」


「譲のライヴ見に行った後。その足で空港に行く」


「そんな急な話っ……」






黙って受入れろって?


相談もなく、この展開から理解しろって?






「ふざけんな!事後報告かよ!!お前さっき自由の身つっただろ?どこが自由の身だよ?!」






軽く見られてる気がしてならなかった。


自分の存在は迷う理由にすらならないのだと悟り、自己肯定感を奪い取られたような虚しさ。

そして、おさまらない怒りに震えた。




話し合いは放棄。

矛先のない苛立ちに耐え切れず、逃げ出そうと渚に背を向けた。





いつもだったらこれで終わり。

渚は顔色一つ変えずに声を荒げる俺を放置する。


でも今日の渚は違った。

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