デーモンキング~ゲームの魔王は異世界でも魔王をする~
@Revak
第1話 異世界転移
インフィニティ・オンリー・オンライン。通称IOOというゲームが存在した。
西暦2067年にサービスが開始したゲームであり、この年代となっては珍しくもないVR型のMMORPGである。
世界観としては中世ファンタジーであり、人間以外にも様々な種族が存在し、モンスターも多数存在している。
世界各地にダンジョンもあり、プレイヤーは好きな事を出来るというゲームだ。
だがこのゲームを一言で表すならば『クソゲー』である。
名前にもある様にオンリーワンのクエストやアイテムが多数存在する。
たった一人しか受注できないクエスト。世界にたった一つしかない超級のレアアイテム。
世界で一体しか存在しないボスキャラクターなどなど。誰かが倒す、手に入れる等をすれば二度と出来ない事が余りにも多いゲームだ。
何故こんなゲームを作ったか開発は取材でこう述べている。
「少女が母の病を治す為に薬草が入るとプレイヤーに依頼する。すると何百何千、何万のプレイヤーが少女の母の為に何千もの薬草を持っていく事になる
現実的に考えてこれはおかしいでしょう。ですのでそういったことが無いよう被り等無い、クエストを誰かが達成すれば二度と受注できないゲームを目指しました」
と。
ある種の暴論だろう。ゲームに現実を持ち込むなと言われる事だ。
だが開発は変に真面目でそういったことが無いゲームを目指してしまった。そして出来たゲームがインフィニティ・オンリー・オンラインだった。
インフィニティ・オンリー・オンラインは基本プレイ無料一部課金要素ありのゲームとしてコアな人層に売れた。
何しろたった一つのオンリーワン。誰もが望む特別になりうるゲームだからだ。
特殊条件を満たしクエストを達成しアイテムを得れば自分だけの最強に成れる──そんなゲームに飛びつく人間は多い。
それ以外にもキャラクターエディット面でも評価を受けた。自由なキャラクターエディットは勿論の事外部ツールを用いて3Dデータを制作すれば運営とAIの判断ののちゲーム内に自作のモデルを入れることが出来るのだ。
キャラクター以外にも装備品、衣服やネックレスなどの装飾品に加え剣や杖等の武具も。キャラクター制作という点で見ればこれほど自由度が高いゲームは少ないと言っていいだろう。
AI全盛の時代。テキストとして自分が考えたキャラや武装を書き起こせばそれだけでAIが3Dモデルを制作してくれる時代である事も相まって人気が出た。
またフィールドも広大であった。
砂漠地帯に雪原地帯など、一昔前のRPGの様にファンタジーらしい地形も多かった。
そしてオンリーの名に恥じぬようにクエストは膨大。AI生成と運営による手動生成を合わせクエストは尽きることなく生成され続け、キャラクターは生まれ続ける。
クエストの数だけストーリーが存在する。誰もが自分だけのストーリーを構築出来た。
そんなクソゲーも時が経てば寂れていき、見向き去れなくなり、ひっそりと消えていく。
西暦2072年冬。サービス終了を告知したゲームは終わりを迎えようとしていた。
「今日で最後、か」
城の塔で。異形がポツリと呟いた。
外見は人間に非常に酷似している。背丈は二百二十センチ程。筋骨隆々の肉体。紫色の爪を有している。
豪華絢爛な宝石が使われた衣服を纏い、拳大のルビーの宝石が付いた王酌を手にしている。
顔は人の物であるが異様である。まず両目が縫い付けられ閉じている。額には縫い目が存在するが王冠を被っている為隠されている。
髪は黒いが先端が朱く染まっており、異様な雰囲気を醸し出している。
こめかみからは黒い結晶にも似た角が突き出ている。
「どうすっかな」
男──バァル・ゼブルというプレイヤーはまたも呟いた。
ギルド、ソロモン。
インフィニティ・オンリー・オンラインに多数存在する雑多なギルドの一つ。
構成人数は二十四名というギルドの最大数である五百名よりも断然少ないギルドは構成人数の少なさ同様ただのギルドであった。
構成メンバーの種族は悪魔で統一されており、参加条件も悪魔であることなどギルド名含め悪魔であることを強調したギルドだ。
そのギルドのギルドマスターこそがバァル・ゼブルである。
バァル・ゼブルのレベルは二百。ゲーム内の最高レベルである。
このゲームには二つ、レベルを上げる要素がある。
一つがどんなゲームにでもだいたいはある職業だ。
バァル・ゼブルはハザードロードという最上位職についており、これの限界レベルが百になる。
次に種族レベルだ。これは人間を例外としどんな種族にもレベルが適応される。バァル・ゼブルの種族は最上位悪魔でありこちらもまたレベルは百。
合計してバァル・ゼブルのレベルは二百となる。
種族レベル、と言ったようにインフィニティ・オンリー・オンライン──IOOには多種多様な種族にプレイヤーは成る事が出来る。
これもまたIOOが一部のプレイヤーからある程度の人気を得た理由である。
代表的な種族である人間は当然、
当然最初からなれるわけではなく特殊クエストやアイテムを得た後での話になる。また当然の様に一人しかなれない種族なども存在している。
バァル・ゼブルの最上位悪魔は誰でも成れる種族であり珍しさも無い種族である。
ただし、最高レベルだからといって珍しいかというとそんなことは無い。レベルは上げようと思えば簡単に上がるし、課金アイテムも使えば一週間もあれば最低レベルから最高レベルまで上げれる。
その為バァル・ゼブルが特段凄いという訳ではない。
バァル・ゼブルは塔から降り、城の中へと戻る。
轟々と燃え盛るフィールド、ヴューステの最奥にある魔城ゴエティア。それこそがソロモンのギルド拠点であった。
城の外見としては要塞に近い。
赤い煉瓦をもって作られた城壁は所々黒く染められ装飾が施されている。
城壁には八つの塔が建てられており、塔には大型モンスター迎撃用の大砲が備え付けられている。
城壁に内側には四つの塔が存在しており、全て居館と繋がっている。
八角形を描く様に八つの塔が。その内側に四角形を描く様に四つの塔が建っていてその中央に居館がある形になる。
バァル・ゼブルは城の中に入り、廊下を歩く。
廊下もまた装飾が凝っている。
壁などには何も無いが通路には時々よくわからない肖像画や壺が配置され、床には真紅のカーペットが敷かれている。
バァル・ゼブルは王酌をつきながら奥へ奥へと進んでいく。
道中、城に努める最下位悪魔のメイドとすれ違う。
このメイドたちはNPCである。
IOOではプレイヤーが用意できるNPCは二種類存在する。
ゴールドを消費する事でダンジョンやフィールドに配備されているモンスターをそのまま利用できる召喚NPC。
もう一つがプレイヤーが外見から種族に職業まで自由に作れる製造型のNPCだ。
NPCはギルド拠点を得たプレイヤーに対する報酬の様なもの。
作る方法は一つ。ゲーム内通貨を使う事でNPCを作る事が出来る。
一体につき最低十万ゴールドを消費する事で製作可能。其処から更にレベルを上げるとなると更に金がかかり、最高レベルである二百レベルのNPCとなると二千万ゴールドかかる。
ゴールドというのはIOOでの通貨の名称だ。設定上では一ゴールド一円となっている。
NPCは作りたいレベルかける十万ゴールドの計算式で製造できる。
ボスドロップ等を売買していけば割と簡単に十万ゴールド程度はたまる。だが二千万ゴールドとなると相当な手間と時間がかかる。
だがソロモンには五体の最高レベルのNPCが存在し、百レベル以上のNPCも二桁以上存在している。
これらはバァル・ゼブルの努力の結晶だ。多数のボスを狩りダンジョンを攻略し資金を得たバァル・ゼブルが作り出していった者達。
バァル・ゼブルの横を通るNPCもまたバァル・ゼブルお手製のNPCである。
名前はコアといい、種族は最下位悪魔。職業はサーヴァント。
外見は美しい少女だ。頭部から山羊にも似た角が生えているのと臀部から先端がハートマークの黒い尻尾が生えているのを除けば、だが。
「ご苦労」
バァル・ゼブルは何となく。片手を上げて挨拶をする。
相手はNPCでありご苦労という単語に対して動くよう設定していない。その為に動くことは無かった。
バァル・ゼブルは城の中を進んでいく。
その全て──正確には六割以上がバァル・ゼブルが作り出した物だ。それを懐かしく思いながらバァル・ゼブルは進んでいく。
ギルド、ソロモンでもかつては二十四名のプレイヤーが居た。
それだけのプレイヤーが入ればNPCを作りたい者も城の装飾を凝りたい者もいる。
そういった者達が主導し城を作りメイドの悪魔を作り出し、城を凝って作っていった。
だが、誰もが途中で飽きてくる。
そもそもの話がIOOはクソゲーだ。苦労して入手したアイテムが他のプレイヤーは気楽に入手している等よくあるし、一部プレイヤーだけが優遇される事など日常茶飯事だ。
そんな様相を見ればゲームのやる気も失うというもの。こんなクソゲーオンラインやるならソロのRPGやるわ、とプレイヤーは減っていく。
だが、バァル・ゼブルは飽きることなく続けていった。一人また一人と減って言っても。誰も居なくなってもただ一人続けていった。
結果、バァル・ゼブルは城を自分好みに改造していった。
城の内装を弄り、NPCを増やし、アイテムを収集していった。それらが出来るからこそゲームを辞めなかったというのもある。
メイド達もまたバァル・ゼブルの趣味で作ったNPCである。
メイドは合計で二十五名存在している。
バァル・ゼブルは道中何度かメイドとすれ違いながら階段を上って目的地へとたどり着く。
其処には巨大な扉が存在した。
縦横五メートル以上はある巨大な扉であり、真紅の扉だ。金の装飾も施されている。
扉はバァル・ゼブルが触れずとも自動的に開いて行く。
バァル・ゼブルは扉の中へ──玉座の間へと入っていく。
玉座の間は広い空間だ。
縦横十メートル以上は存在し、百人は横並びになれるだけ広さを持つ。
外見からは有り得ぬ広さであり、これもゲームだからこそ許される無法な広さだろう。
奥行きのある空間であり、床には扉と同じ真紅のカーペットが敷かれている。
左右には巨大な巨像。最低三メートルから五メートルほどの像が並んでいる。その数左右合わせて二十体いる。
像は異形の者だ。頭部が蜘蛛の像。腕が四つある像。巨大な顔に手足をくっ付けた像等が並んでいる。
これらはゴーレムであり有事の際は動く事が出来る、モンスターの一種だ。
IOOにおけるゴーレムはプレイヤーが制作できる物の一つである。
プレイヤーが選択できる種族ではなく、また制作出来るNPCではない。召喚は出来るが。
一部の特殊なゴーレムを除けば最高レベルも百六十までであり手駒にしては丁度いい形の者達だ。
これらはバァル・ゼブルが作ったのではなく専用の職業の者──かつての仲間が残したゴーレムたちだ。
天井には水晶で出来た巨大なシャンデリアがあり、それが光源となっている。
バァル・ゼブルは玉座の間のゴーレムに感嘆しながら奥へと進み、玉座に辿り着く。
玉座はシンプルな出来の物だ。
黒曜石を削り玉座の形にしたものであり、肘掛けには水晶で出来た人の髑髏が付いている。
玉座の上の壁には窪みがある。
その四角い窪みの中には人の手が幾つも絡み合い杖の形を成し、髑髏を掲げている杖が展示されている。
バァル・ゼブルは緩慢にも思える動きで玉座に座る。
(プレイして七年。まぁ、クソゲーにしては持った方か?)
バァル・ゼブルはゆっくりと最後の時を待つように瞳を閉じる。
閉じると言っても元々縫い付けられている為動かないが。
(──あれ?)
はて、とバァル・ゼブルは閉じた目を開いた。
外見上では常に閉じている為変わらないが、それでも視界のオンとオフはある。その視界を開く。
世界が、ゲームが終わらない。まだ続いている。
そのことに気づいた後、更なる異変に気付く。
「どういうことだ?」
UIが消えている。
ゲームならばあるはずのHPを示すバーもその下にあるはずのMPのバーも消えている。
何かしらの異常事態と判断しバァル・ゼブルは即座に緊急ログアウトの思考入力を試す。
だが、出来ない。うんともすんとも言わない。
「どういうことだ!」
今度は怒気を込めて叫んだ。
ゲームの中に閉じ込められるなど、一昔前の小説ではないのだから有り得ない。
脱出手段の無い電脳世界への拉致監禁は法律で硬く禁じられている。
「落ち着け、直ぐにどうにかなるはずだ」
自らを落ち着かせるためにもバァル・ゼブルは声に出す。
その間も手段を模索する。どうにか現実の体を動かせないかと思案し、思考操作でログアウト出来ないか試す。
緊急時のコマンドとしてボイスコマンドも実装されている為声に出してログアウトと叫んだりしても、何も変わらない。
立ち上がって妙な動きをしても、何も変わらない。
「いや。待て」
バァル・ゼブルは試行錯誤して動いているうちに気づいた。体が妙に軽い、と。
VR特有の体の重さ。現実の肉体との齟齬からくる違和感が無くなっている。
バァル・ゼブルは軽くぶんぶんと腕を振り回す。風きり音と共に腕が軽快に動く。
「……どういうことだ?」
バァル・ゼブルは玉座に座り、考える。
(何が起こった? ゲーム内での拉致? こんなクソゲーで? 有り得てたまるかそんなもん。現実的に考えろ。何が有り得る?
……やはり拉致? だが、何のために? 何をするために? こんなクソゲープレイしてるプレイヤーを拉致って何の得があるんだ。
いや拉致とは限らない。運営側も何が起こっているか把握してない可能性がある。となると、街に行くべきか)
ゲーム最終日というのもあって街にでも行けば多数のプレイヤーが居る。
それだけのプレイヤーが入れば運営と連絡が出来るプレイヤーもいるはずだとバァル・ゼブルは考える。
バァル・ゼブルは立ち上がり、魔法を唱える。
IOOに実装されている魔法はレベル性だ。
最低レべル一から最高レベル十二まで存在し、バァル・ゼブルはレベル十二までの魔法を唱えれる。
行使しようとするのはレベル九の魔法、
「
IOOで魔法を発動する方法は幾つかある。
身振り手振りで発動するモーション型。画面にあるメニューからクリックするだけで発動するクリック型。声に反応するボイス型。
バァル・ゼブルが設定しているのはボイス型だ。VR特有の動きになれず一番手軽なクリックでは間違える事が多かった為ボイスコマンドによる発動を選択している。
それ以外にも魔法を詠唱するのがカッコいい、というのもあるが。
そして魔法は発動されない。
「なんだと?」
確かに魔力を消費する感覚はあった。だが目的地であるウンター・ヴェルトの街に移動していない。
「待て」
魔力を消費する感覚、という事にバァル・ゼブルは違和感を抱いた。
まるで体に元から会ったかのように。バァル・ゼブルは魔力という超常のエネルギーを感じ取っていた。
「有り得ない」
まるでファンタジーだ、とバァル・ゼブルは顎に手を当て恐怖する。
魔力だけではない。意識するだけで習得している魔法も
「……
再度、転移魔法を発動する。
今度は移動先を目の前にしての発動。
そして今度は問題なく魔法は発動し、目の前──距離にして五メートルほど先に転移が成功する。
(魔法が使えなくなった訳でも、結界に阻まれた訳でも何と)
城の中は外部からの転移を阻止する魔法結界が張られている。
バァル・ゼブルはそれの対象外であり、結界が誤作動を起こしている訳では無いと把握する。
転移魔法が変な挙動をしているのも何かのバグだとバァル・ゼブルは思い込み、徒歩での移動を決意する。
「ああ、そういえばペットがいたな」
それに乗って移動した方が早いか、とバァル・ゼブルは行き先を城の庭に決定する。
城の庭にはドラゴンが居る。レベル二百の最高位のドラゴンである。
ドラゴン等のモンスターにも種族レベルと職業レベルは適応され、バァル・ゼブルのペットのドラゴンは最高位種族のエンシェントドラゴン。職業も最高位職の一つであるパペットマスターに就職している。
本来ドラゴンはNPCとして制作出来ず、テイマーなどの職業につく者がテイムするしか入手方法は無いがバァル・ゼブルは特殊なクエストを達成する事で独自のドラゴンの製造を可能にしていた。
こういった要素もクソゲーと言われる所以である。
バァル・ゼブルは再度転移魔法を唱える。
向かう先は城の中庭。
「
そして視界が切り替わり、バァル・ゼブルは城の中庭に付いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます