第17話 回復魔法を覚えた
「はぁー はぁー はぁー はぁー はぁー はぁー 呼吸が……戻った……痛っ……いたたたた……」
吹っ飛ばされて地面を転がったようだが、まだ五感が戻らない。
解毒の効果で楽になっていくけど体中が痛い。つか、噛みつかれた下半身……ちゃんと付いてるよな?
目は見えないし音も聞こえない。口の中もヤバい。
毒を食らった背中の皮膚は溶けて血だらけになっている筈だ。
……でも生き残った。
【毒弾】と、やはり【超回復】は魔法だな。よし!
計 画 通 り ……っ!?
「はぁー、はぁー、ふぅーーー、【超回復】」
物凄い勢いで魔力が抜けていくぞ。途轍もない魔力消費だ。
痛みが無くなっていく。
目が見える。
虫の鳴き声や風で草が擦れる音が聞こえる。
背中や下半身の違和感も消えていく。皮膚が再生しているのか……。
俺は立ちがあり自分の体を見た。
身体中に浅黒い跡は残ったけど、痛みは全くない。全快した!右腕は……、流石に再生しないか。
それにてもパンツは無傷……このパンツ凄いぞ。
名前を付けるか……んん、
ってそれより、ウルファは?
地面を見ると、そこら中の草が毒で溶けていた。以前、ヒナを拾った時と同じ光景だ。
「ウルファ!」
俺はウルファに駆け寄る。
「サトル……!うっ!うぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!サトルぅううーッ!」
地面に座ったウルファは端正な顔をグチャグチャに崩して泣いていた。そして俺に両手を伸ばす。
動かけなかったことが幸いして、毒には触れていないようだ。
俺が屈むとウルファは両腕を俺の首に回して抱きついてきた。
人にベタベタ触れられるのは好きではないが、今はそれどころではない。
地面に撒き散らされた毒に触れれば、ウルファは死ぬ。
「アッ!……サトル?」
俺はウルファの尻に腕を入れて彼女を肩に担ぎ上げた。
そのまま運んで家の前のベンチにウルファを座らせる。
そして折れた足に触れた。
「サトル?」
「まぁ見てろ。【超回復】!」
俺の手から緑色の光が出て、ウルファの足が治っていく。体の傷も消えていく。
この魔法……やっば……!
滅茶苦茶使えるじゃん!
ウルファは立ち上がり足や体を動かして全快を確認している。
怪我が一瞬で治って、凄く驚いている……。まぁ驚くよな。俺も驚いたし。
それからウルファと家に入った。
ヒナも無事だ。
「ピヨ!(父!)」
「ヒナ、ピヨピヨ。ピヨピヨ(蛇殺した。もう大丈夫)」
「ピヨピヨ、ピヨピヨー!ピヨピヨ!(無事、良かったー!心配した!)」
心配してくれていたのか……可愛い奴め。
頭を撫でるとヒナは目を細めて気持ちよさそうにする。
ウルファは二人分のお茶を入れた後、リビングのベンチに座って暫く放心状態だったが、お茶を一口飲むと寝室に入った。
俺も寝よう。
ウルファと住むようになってから俺はリビングのベンチで寝ている。
煉瓦を積んで足を伸ばせるように改良したから最早ベッドと言っても過言ではない。
ヒナはベンチの横の止まり木で寝る。そして朝になると俺の上に移動して蹲る。
横になった俺はステータスを確認する。
数値があるわけではないが、
感覚的に魔力が倍近く増えた。力もかなり強くなったようだ。
それでふと思った。
ウルファが死ねば、俺は人の言語を手に入れたんだよな……。無我夢中で気付かなかった。
まぁいいか。彼女には感謝しているから死んでほしくない。
もし人を殺すなら……、あの王城にいた連中……、それか俺からスーツを奪った賊だ。
今なら勝てるんじゃないか?いや、舐めない方がいい。奴らは遠距離魔法や剣術を使っていた。
いつまでここにいるかな……?
塩があれば保存食を作れる。芋や穀物もある。ステータスも上がったし、今なら長旅できるはずた。
準備ができ次第ここを出て、町を目指すか。
そんなことを考えていたら、寝室で音が聞こえた。
ウルファが起きた音だ。
眠れないのか?
彼女は俺のところに来て、俺の手を取り引っ張る。
「サトル、……テキチッコ」
これは「おいで」の意味だな。
俺は起き上がり彼女に連れられて寝室に入った。
すると、ウルファは俺をベッドに押し倒す。
ここで寝ろってことか?ケガは治ったし、寝る場所はいつも通りで問題ないが……。
ん?じゃぁ今日はウルファがリビングで寝る?
ウルファも隣で横になる。それから俺の肩に腕を回して、しがみつくように抱き着いてきた。
え?えっ?えええー?
彼女はタンクトップにショートパンツ姿。良く育った柔らかい胸が俺の脇腹に当たり、スベスベの足は俺の股間辺りに絡み付いている。
俺の脇に顔を押し当てて少し呼吸を荒くしている。
密着するとウルファの体温を感じる。この子の香りは嫌いじゃない。
ま、まさか、やりたい?
いやいや、恐くて一人じゃ寝れないってことだよね?
流石にあの蛇は恐かったもんな……。
俺は人に抱き着かれるのは好きではない。
まぁでも、彼女には本当に世話になったからな。
それにウルファには獣耳と尻尾があるせいか、人間に抱く程の嫌悪感はない。
もうすぐお別れだし、今日くらい一緒に寝てやるか……。
仰向けに横になっていた俺はウルファに向きを変えて彼女の頭を撫でた。
するとウルファは俺の胸に顔を埋める。
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