運命の歯車修復師

緋月行人

プロローグ

 ある村にいる青年は、村の禁忌とされてるレストアの森に勝手に入った。

 そこで青年は、運命の歯車を見つける。

 運命の歯車を手にしたとき青年は、なぜかそれを使って時計塔を作りたいと思った。

 次の日から青年は、憑りつかれた様に時計塔を作り始める。

 その姿を見た村の人達は、青年がおかしくなったと思う様になり一部の村人は、青年を避けるようになった。


 とうとう青年は、時計塔を作り上げた。

 その時計塔から不思議な力が出る。

 次の日からその村では作物の成長や海で魚を捕れば大漁になっていく。

 そして飢饉になることが無くなった。

 その噂を聞きつけた商人が沢山集まり、さらに各地から人が集まり続けて街になる

 そして村人達は、時計塔を作った青年を王に据えて国を興した。

 国は、時計塔を中心に北に商業区、西に居住区、東に城、南に海が近くにあるので畑と果樹園と生産所を作った。


その国は、他国に一度も攻められる事はなかった。





 朝、目が覚めると今日はいつもと違う寝起きだった。

「とうとうこの日が来た父さんと同じ修復師になれる日が……」

 父さんに憧れてなりたかった修復師、けど僕には修復師になるための資格がない。僕の手には証が出なかった。父さんの手には蔦が交差する綺麗な模様が出ていた。

 証を持つ者は、レストアの森にある運命の門に入ることが出来る。

 運命の門の中には修復師になるために必要な鍵がありそれを祭りの間の七日間で手に入れないと修復師にはなれない。

 運命の門は七日経つと門が閉まり中から出られなくなる。でも、唯一証を持つ者だけは外に出られる。運命の門は証を持つ者中から強制的に出す。

 だから王は法で証を持たない者の立ち入りを禁止した。そして、法にはもう一つ書いている事がある。それは、鍵を手にした者は修復師にすると。

 僕はその法を利用して修復師になる。鍵を手に入れれなければ犯罪者として罰せられるけどそれでも僕は修復師になりたい、いや、なってみせる。とリギアは心に誓う。



 「おーい、リギアそろそろ健国祭に行こうよう」

「ちょっと待っててラナ」


 リギアは急いでご飯を食べて玄関から出てラナの前に出る。


「もう遅いよリギア約束の時間は、ちゃんと守ってよね」

 ラナは頬を膨らませながらリギアに詰め寄る。


「ごめんごめんちょっと夜あまり眠れなくてさ」

 リギアは両手を顔の前で合わせてラナに謝る。


「ふーんそんなに楽しみだったんだ…」

 ラナは足元を見ながら両腕を後ろに組んで小さな声で言う。

「ん、何か言った?」

「ううん、何でもない」


 ラナの機嫌は良くなったからまあいいかと思い、そのままラナと一緒に時計塔に向かって歩く。



 今日から建国祭が始まるから居住区や商業区は色とりどりに飾りつけられている。

 僕とラナは、下から時計塔を見上げる。


「相変わらずこの時計塔正確な時間じゃないよな」

「でも昔からそうだったから今更じゃない?」


 まあそれもそうかと思いラナに商業区に行こうと言うとラナは僕の手を握り、前に歩き出す。少し恥ずかしかったけどラナの嬉しそうな顔を見ると何も言えなかった。これから僕は法を破ってレストアの森に入るから今この瞬間を大事にして歩く。



 あれからラナに付き合って色々な出店を見たり、食べ歩きをして歩いた。

 

 リギアは意を決してラナに話しかける。


「ラナ左手を出して」

「え、どうして?」


 僕は、ラナの手を取り中指に指輪を付ける。

 ラナは驚き僕に問いかける。


「リギアこれお父さんにもらった大事な指輪でしょ」

「うん、ラナに付けていて欲しいんだ。それにこの指輪は二つで一つだから僕も付けているから」


 リギアは恥ずかしさでラナから目線を外す。


「ありがとうすごく嬉しい」

「よかった~、もらってくれなかったらどうしようと思ってたから」


 リギアはホッと息を吐くと続けて話す。


「お父さんが言ってたんだけどこの指輪には時を越えて想いを繋いでくれるんだって」

「そうなんだ。ねえ、リギアもしかしてだけど私に隠している事があるでしょ」


 ラナの言葉にドキッとし少しだけ顔に出たけどすぐに心を落ち着かせ何も隠してないよと言う。


「そう、それなら良いけど…でも何かあるなら私に教えてよ」


 行きとは違い二人の間にある雰囲気が変わる中隣り合って帰路に着く。





 周りには、もうすぐ打ちあがる花火を見るために空を見てる人達の中、リギアは居住区の塀を越えて果樹園に侵入し南門の方へ走る。

そして南門の近くにある下水道の中に入り下水道を抜けて外に出る。

レストアの森のある東に向かって身を潜ませながら走る。



 リギアはレストアの森に入りまっすぐに時と運命の門へ向かう。


 時と運命の門の前に着いたリギアは、門の前で気を引き締める為に両手で頬を叩く。


「ここからは時間との勝負だ」


 門の中に入ると目の前は一面の綺麗な花畑が広がっていた。

 そこに足を踏み入れると周りから小さな声が聞こえてきた。


『次は君か…』

『今度の子は辿り着けるかな…』

『いや今回も無理だと思うな…』

『うん?何かこの子、あの子に似てない…』

『あっ本当だ~この子ならいけるんじゃない…』

『そしたら楽しみだね…』


 姿が見えないけど確かに近くに何かがいるのを感じた。まあ、自分に害があるわけじゃないからほっといて先に進む。


 歩き始めてから少し経ったとき前の方に森が見えてきた。


 森に近づいて行くと森の奥から何かがぶつかり合う音が聞こえてきた。

 森の中に入って少し進んだ時、目の前に大きな熊みたいなのと猪みたいなのが睨み合ってる所が見えた。慌ててリギア茂みに身を潜める。


「危なかったー、今のところ僕に気づいてはないみたい」


 2匹はリギアを無視して戦いを続ける。そして熊の方が猪の首あたりを噛み千切り猪はそのまま横に倒れて動かなくなった。猪を殺した熊は、リギアの方にゆっくりと歩いてくる。


「き、気づかれたか・?」


 リギアは熊が近づいて来たから慌ててしまい足元にある枝を踏んで、パキッと音を鳴らしてしまった。しかし熊は、音に気付かなかったのかリギアの横を通り去っていった。


 リギアは気づかれなかった事に安堵して地面に尻もちをついた。


「早くこの森を出ないとまずいかもしれない」


 リギアは息を殺しながら早歩きで先に進む。


 どれくらい歩いたかわからないが、あの後以降動物に遭遇することはなかった。

 森から出たリギアの目の前には、木や草すら生えてなかった。





 ずっと続く何もない景色を見ながら歩いていると左斜め前の方から人の叫び声と金属がぶつかる音が聞こえてきた。


「誰かが戦ってるのかな?」


 音に近づいていくと剣や槍を持ってる全身金属の鎧を身に着けているたくさんの人達が戦っている。


「これは、戦争をしているのかな?」


 リギアは、戦争をしてる人達を横目にして先に進む。歩いていると横から矢が飛んできたリギアの方に飛んできたがリギアに当たることはなかった。


「ここにずっといると危ないから早くここを離れた方がいいな」


 それから走っていると前に大きな石の塀が見えてきた。近づいていくと門の前に軽装の兵士が立っていた。


 リギアは兵士に近づいて話しかけるが兵士は、リギアに気付いてないのかずっと前を見ている。


 リギアは少し悪いと思ったけど街の中に入ることにした。


「簡単には入れたけどとくに誰かが追いかけてくることはなかったな」


 その後はとくに気にせず周りを見ながら歩いてて前を見てなかったから前方から歩いてきた人とぶつかってしまった。


「あ、すみません。大丈夫ですか?」


 前に立ってる人に謝ったが相手は不思議そうな顔をしながらリギアの横を通り過ぎていった。


「門の時も自分のことに気付いてなかったけど、もしかしてここって架空の世界なのか?」


 リギアはよくよく考えたら、ここはレストアの森の時と運命の門の中だったことを思い出した。


「通りあえずこの街から出て先に進もう」


 あれから街出て歩いて行たら目の前に大きな時計塔が見えてきた。

「中に入ってみるか」


 リギアは時計塔の扉を開けて中に入る。


 中に入ってみると上にずっと続く螺旋階段があった。


 リギアは螺旋階段を上っていくと、自分と同じ位の高さの扉があった。扉を開けて中に入ったリギアは目の前の光景に驚愕する。


「な、なんで父さんがここにいるの?」


 リギアはおそるおそる近づいて行き父さんに話しかける。


「父さん、母さんが心配しているよ、一緒に家に帰ろう、ねえ」


 リギアが話しかけても父さんは無視し続け何かをしている。


「ねえ、父さん聞いてるの?母さんが心配してるって言ってるでしょ!!」


 リギアは声を荒げて父さんに話しかけても父さんは何かをしていて、こっちを向かない、そんな父さんに腹を立てたリギアは父さんの手を掴む。すると父さんの体が薄くなっていき遂には消えてなくなった。父さんの手を掴んだ手に意匠のこった一本の鍵が握られていた。


『おめでとう、君が次の運命の歯車修復師だ』

 突然、目の前に蝶の翅のような物を付けた小人が現れる。


「お、お前は何だ!」


『僕のことかい?そうだな~僕は君のパートナーみたいな者かな。そんな事よりここから早く出ない帰れなくなるよ』


「まだ入ってからそんなに経ってないと思うけど」


『何言ってるんだいここの時間と外の時間が一緒のわけないでしょ』


「あ、後どれくらい時間がある?」


『そうだな今から急いで向かってぎりぎり出れるかどうかかな』


 それを聞いたリギアは慌てながら来た道を走って出る。




 あれからずっと走って門のある花畑の近くまで来た。行きは開いていた門が少しづつ閉まっていく。


「待って、閉まらないで」

 リギアが必死に走って門に向かうが門は無常にもリギアの目の前で閉まった。


「そ、そんな」


 リギア門の前で膝をつき涙を流す。


「ごめんなさい母さん、ごめんラナ」


 リギアはあれからずっと泣き続けた。涙が出なくなったリギアは、門を背にして膝を抱えながら寝転ぶ。


「母さん、ラナ、会いたいよ」



 リギアが寝転んでからどれくらい経ったか分からないが、突然指輪が光りだす。


 光は門に向かって光るすると門が開き中からラナが飛び込んできた。


 ラナは目の前にいるリギアに駆け寄り抱き着く。


「何で黙ってこんな所にいるのすごく心配したんだから」


 ラナは泣きながらリギアを怒る。


「帰ろリギア」


「うん」



 あれから外に出たリギアは兵士達に取り押さえられ牢に入れられたが運命の歯車修復師になる資格の鍵を持っていたからすぐに開放された。でも、何もお咎め無しは他に示しがつかないということで1か月奉仕活動をすることになった。




『ふふ、早く遊びたいな~』

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