第19話 輝の春

 4月も下旬、登校し輝の席付近で談笑していると奏都が2ーAの教室に入ってくる。


「「おはよー」」

「おはよーって、さっき挨拶したよな」


「奏都はいいよな、モテにモテまくり。今日で何人目だ?」

「5人目かな。ま、彼女いらないしごめんなさいしといた」

輝の問いに奏都が答える。朝3人ばったり下駄箱で会い、奏都が下駄箱を開けると手紙が入っていて場所が指定されていた。おそらくラブレターで、まだ4月中だというのに告白5人目は流石だ。凄いなと感心しつつ、そういえばと碧が聞く。


「てか奏都って元カノいるんじゃなかったっけ? ちなみに誰なんだ?」

「Cクラスにいるよ。来夏ちゃん、黒井来夏」

「へぇ、知らないな。気まずくないんか?」

「普通に話すし、もう友達だよ」

そんなものなのかと頷いていると、「ちなみに俺は知ってるぜ」と輝が言う。


「数学の教科書借りにCクラスの大地のところに行ったんだ。そうしたらその日Cクラスは数学がなくて借りれなかった。その時隣の席に座ってた来夏ちゃんが私持ってるから貸してあげれるよって」


「でもその時は、奏都の元カノか知らないだろ?」

「まぁな。返しに行った時に奏都と仲良いよねって話になってそこでね」

「なるほどね」


そこでニヤニヤしながら人差し指で頬を掻き、目をウロウロさせながら輝が言う。

「てかよー、来夏ちゃんめちゃ優しいし可愛いし良い匂いするし髪サラサラだし。なんつーか良い女の子だなぁって」


「え? 好きになってない? 単純?」

「俺の元カノでも大丈夫なんか? 兄弟」

「ぷはっ兄弟ワロタ」

そこで紗南が割り込んで入ってくる。

「兄弟? 奏都くんと輝くんって兄弟なの?」

「本当に兄弟って意味じゃなくて……ね? 碧」

「いやいや俺に振るな」

まぁいいやと深く触れられずに席を立ち芽依の方へと向かって安堵する男子3人。再度輝が口を開く。


「つーか好きとかじゃねーよ。ちなみにその時お礼させてって言って今日その日なんだよな」

「何するの?」

「放課後サラエボで飯食う……2人で……」

「へー。来夏って俺の時は、最初会うことすら抵抗あって川口能活並みの鉄壁だったのに。しかも2人で会うと?」

「おぉ、そうなのか?」嬉しそうに奏都の言葉を飲み込んで授業中も終始ニヤニヤしたまま放課後になり翌日を迎えた。



 翌日、教室に入ると真っ先に輝が涙目になりながら俺に飛び込んできた。

「なぁ碧、慰めてくれ。俺を慰めてくれぇえ」

昨日あったことを全て聞き終え口を開ける。


「会って席着いた瞬間に告白するか普通」

「舞い上がっちまったんだ。可愛くて抱きしめたくなっちゃったんだよぉお」

輝が教科書を返し終えた後、連絡先を交換しLINEのやり取りをしていたらしく絵文字のハートや【輝くんと会うの楽しみ】や【とびきり可愛い私服で行くね】なんて言われていたらしい。


「しかもよ、どんな服装好きって言われてワンピースって言ったら、白いワンピースで来たんだぜ?俺を落としにに来てるじゃん? 誘ってるじゃん?」

うんうんと頷きながら「それは勘違いしても仕方ないわ」と同情した。とりあえず輝の座っている席に移動し慰め続けていると衣奈がやってきた。


「輝くん、振られちゃったんだってね」

「え? なんで、なんで知ってるんだ?」

スッと振り返り泣きそうな顔で衣奈を見ながら輝が言った。


「女の子の情報の速さは5G以上、あんまり舐めない方がいいよ。周り見てみて」周りを見渡すとクラス女子のほぼ全員が輝を見ながら頷いている。


「女子こわぇぇえ」

「女子高生ってすっげぇわ」


 心配だったのか紗南も続けてこちらへやって来たが、近づいてくるにつれて顔が怒っているような雰囲気だった。

「輝くん、昨日言ってた兄弟の意味わかったんだけど。サイテー!」とそれだけ言い放ち、席に戻った。


「俺は兄弟って言ってねぇよぉぉお」最初はポカンとした表情を浮かべていたが、やがて更に泣きそうな顔、ほぼ泣いている顔になりながら俺に抱きつく輝だった。

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