お嬢様学校の4大美女たちに取り合いにされた挙句、1人選んでみました。

ぽんへい

第1話 男子学生の夢

 

 これは卒業を目前に控えた冬の日の出来事である。皆で来ることは最後になるかもしれないからと7人で初詣に来ていた。


カランコロンカラン、縄を両手で持ち鈴を鳴らす。お辞儀は2回、柏手かしわでを2回、合掌してお願い事をし最後に一礼する。


隣でお辞儀をする少女。ニコッと満足そうな顔をして腰を上げ、一緒に来ていた5人の友人とは反対側にぺたぺたと歩き始める。俺はすぐ後ろをついていくと、少女は大きな木の横でピタっと足を止める。


「なぁ、こっちじゃないぞ。みんなは逆側いるよ?」


「……」


 何も言わずに棒立ちになる少女の右手首を引き、友人のいる場所へと誘導しようとする。だが目をウルっとさせ動こうとしない。


どうしたもんかと頭をポリポリ掻いて困った表情を浮かべると少女の口が動く。

「何をお願いしたか聞かないの?」と少し眉間にしわを寄せ、白く細い手で俺の胸を叩いた。


「今年も健康でいられますようにとか無事に受験合格できますようにとか……違うか?」


5秒ほど沈黙した後、綺麗な目をウルっとさせたまま、ぷくーっと両頬を膨らませる。


そして両頬を戻し口を開く。

「私は……司と付き合って幸せになれますようにって3回もお願いしたよ」


「それって」


「あ、流れ星じゃないから3回もお願い必要なかったね」

 


おそらく恥ずかしさがあったのだろう。俺の言葉に被せるように話し、赤く染まる頬と耳を隠すように体ごと後ろを向いた。


 苦しい、悲しい、楽しい、幸せ。たくさんの思い出がパズルのように蘇った。最後のピースは綺麗で澄んだものなのか、若しくは鈍色で淀んだものなのか。決めるのは紛れもなく俺自身だ。






 俺の名前は辰巳碧たつみあお桜河さくらがわ学園に通う普通の男子高生だ。


「はぁ、今日から学校再開か……」


学校は中高一貫校で埼玉県、栃木県、群馬県が隣接した茨城県にある男子校であり、半数は電車通い、残り半数は地元で自転車や徒歩での通学となっている。


「碧久しぶり〜」この声は泉谷輝いずみやてる、俺の数少ない幼馴染であり親友だ。


 身長は180㎝で胸板が厚く大きい体で髪はツーブロックで刈り上げてあるが、上から髪をかぶせておりトップはツンツン系だ。そして純日本人でありながらパッチリ二重で、若干ハーフっぽい印象だ。真っ直ぐな性格がまた良い。


ちなみにおれのスペックも悪くない方だと思う。身長173㎝、体重56㎏と細身である。髪全体はミディアムヘアだが、襟足だけ伸ばしていて肩に触れている。目は奥二重でキリッとしているため、今では人気k-popアイドルにいそうな顔だねと言われる。


「久しぶりだなてる、あれちょっと太ったか?」


「誰が正月太りだコンヤロっ」


 

冬休み明けの何気ない会話をしながらクラスの教室まで一緒に登校し、クラスに着くと8時半を回っていた。どうやら久しぶりに話しながらゆったり歩いていたため、ギリギリのクラス到着になってしまったようだ。


 8時35分には予鈴が鳴り、着席をするのが学校の規則となっているため教室入ってすぐいつもの席に着いた。隣で談笑しているクラスメイトを横目に、机に右頬を当てて顔だけ横たわっていた。ちなみに隣は輝の席だ。


キーンコーンカーンまだ予鈴時刻ではないのに急にチャイムが鳴り響く。


「茨城県教育委員会より桜河さくらがわ学園は桜山さくらやま女子学院と統合することになります。今年度4月から男女共学の進学校、桜河学園として新たに生まれ変わります」

また校名は変わらず、女学院生徒たちは今俺たちがいる桜河学園に通学との告知もあった。


 ざわざわ、ざわざわ。クラスメイトは目を見開き何が起こったのかわからないといった状況。他クラスからは、嬉しそうな悲鳴が地響きのように耳に突き刺さる。

「あの、お嬢様学校の桜山女学院と共学ぅう?」口を動かすと同時に輝と目を合わせる。


にわかに信じられない話だが実は両校とも学校法人が一緒であり、昨今の少子化問題もあるからなのか定員数も割れ続けていた。


 ちなみに桜山女学院は駅で言うと、2駅ほど離れた栃木県にある学校で偏差値は60ほど。顔採用があるのではと思うほどに、美少女が多いと県外でも有名な学校である。また私立のなかでも高額な費用が嵩むことでも有名であり、金持ち女学校とも呼ばれている。なぜこんな場所にあるんだって思うほどだ。


「おい碧、これは夢なのか? ほっぺたつねってくれ」無言で輝の頬に手を伸ばし、ぎゅぅっと3割ほど力を入れる。


「いってぇええええ夢じゃねぇええええ神様ありがとぉおおお」


内心ばかだなと思いつつも口走ってしまう。「輝、俺もつねってくれ……」


「いってぇえええええ夢じゃねぇえええええ神様ありがとぉおおおお」


いつの間にか右手拳を天に突きさし、教室全体に響く大声をあげる碧だった。



 何もせず月日が流れ2月も後半に差し掛かるところで、1年生最後の期末テストへ向け、俺と輝は勉強が得意な奏都にひと通りの範囲を教えてもらっていた。


斎藤奏都さいとうかなと、俺とは桜河学園に入ってからすぐに仲良くなって輝と3人で一緒にいることが多い。


彼はチャラつきMAXで常時ネクタイはゆるっゆるで腰パンに指輪にネックレス姿、髪は長く前髪はセンター分けで襟足をひとまとめにしている。顔は鼻筋が通りしゅっとした顎、二重幅は薄いが、目が際立ち輝いて見える……まぁおれは。


そんな見た目の彼だが学年一番の頭脳明晰であり、頼られることが好きらしく何を言っても拒まずに助けてくれる。できることは率先して行動し、出来ないことでも何とかしようと考えてくれたりするため、先生や生徒分け隔てなく誰からも慕われている。


 18時近くなり教室の外は暗くなってきたところで、勉強に集中していたに奏都がそろそろ終わりにしようかと声をかけ、それに同意した。


奏都は県外から通学しているため駅へ向かった。勉強を教えてくれたお礼に、ホットドリンクとホットスナックを途中のコンビニで購入し手渡す。構内で電車が来るまでの間あーでもない、こーでもないと話していると、含みのありそうな笑みを浮かべ奏都が言った。


「ほんとに4月から桜山生徒が来るんだよな、楽しみだよな?」


「楽しみだけど中高一貫だったし、最後に女子に関わったのはおそらく小学生の時だから正直怖さある……」


「碧とおなじくだ」


「うんうん気持ちは分かるよお2人さん、コミュニケーションをとるのが怖いそういうことだね?」


「まぁ、正直上手くしゃべれるか分からん」俺もうんうんと頷く。


「そんなお2人さんの為の作戦があるといったら?」


その言葉に輝も俺も目をキラキラさせ奏都の身体を2人でロックし、次に来る電車を見送らせた。




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