第31話◇調子に乗ってやっちゃった父◇


 仕事終わり。

 いつものように業務を終わらせて終業の打刻をし車へと向かう。


 数日ぶりの出社だったが優秀な部下のおかげで支障なくいつも通りの仕事ができた。


 友梨佳は部活があるので少し遅くなるそうなので瑠璃が先に帰って夕食の準備をすると先ほどメールがあった。


「ただいま~」

「あ、お帰りなさいお父さん」


 台所から聞こえてくる瑠璃の声に安心感を覚える。


 夕食の準備をしていたのだろう。部屋着にエプロンを着けた瑠璃が出迎えてくれる。


「ただいま瑠璃」


 玄関まで出迎えてくれた瑠璃は俺の鞄を受け取り背広を脱がしてくれる。


 背丈の差があるので一生懸命背伸びながら脱がしに掛かってくれる姿が可愛らしい。


 まるで新妻のようだ。


 このところの瑠璃は暗い顔をすることはまったくなくなり、彼女本来の笑顔を取り戻している。


「友梨佳ちゃん、部のミーティングがあるのでもう少し遅くなるそうです」

「そうか。部長も大変だな」

「ふふ、そうですね」


 テニス部のエースプレイヤーとして信頼の厚い友梨佳は、今年になって部長に任命されたらしい。


「お夕飯は少し遅めでも大丈夫ですか?」

「ああ。もちろん大丈夫だ。友梨佳が帰ってくるまでのんびりしよう。先に風呂でも入っておくか」


「あ、あの……」

「うん?」


 モジモジとしながら顔を赤らめる瑠璃。

 何かを訴えるようにこちらを伺い、その歯切れは少々悪い。


 しかし何を言いたいのかは分かる。


「おいで瑠璃」

「は、はいっ」


 ソファに腰掛ける俺におずおずと近寄ってくる瑠璃。


 ポスッと軽い体重が膝の上に乗り、遠慮気味に頭を胸板に擦りつけてくる。



 お風呂上がりなのだろう。石けんの良い香りがした。


「ん、ふぅ……お父さんの匂いがします……」


「まだ汗が流れてないけど、いいのか?」

「良いんです。お仕事頑張ったお父さんの匂い、凄く好きです」


 ワイシャツに顔を埋めてスンスンと鼻を鳴らす瑠璃は子犬のようでもある。


「じゃあお父さんも瑠璃の匂い嗅いじゃおうかな」

「ひゃっ、だ、だめですっ、私はクサいですからぁ!」


「瑠璃はクサくなんてないさ」


 俺は可愛いことを言う瑠璃を抱きしめてキスを送った。


 二人のお気に入りのソープの香りが女の子の匂いを助長して興奮を募らせる。


「ゆ、友梨佳ちゃん帰って来ちゃいます……」

「いいじゃないか。そしたら三人でしよう。今は二人きりだよ」


 瑠璃だって俺と二人になりたいと思っている筈だ、と。


 実は友梨佳からそう言われているのである。

 自分だって俺を独り占めしたいはずなのに、友梨佳は瑠璃の願いを叶えるためにそういった時間を作る努力をしてくれる。


 本当にできた娘だ。


 今は瑠璃との時間を大切にすることにした。


「お父さん……」


 潤んだ瞳が俺を見つめる。

 その引力に逆らうことなく吸い寄せられ、再び彼女の小さな唇を塞いだ。



 奉仕しようとする精神が強いため自分が快楽を享受してばかりではいけないと思っているのだろう。


 それはそれで有りがたくはあるが、やはり瑠璃にももっと幸せを享受し合う喜びを感じて欲しいと思う。


「はぁ、はぁ……お父さん、凄く、幸せです……次は私も」

「いや、もう瑠璃の中を感じたい。入れていいかい?」

「はい……どうぞ、使ってください」


 瑠璃はあくまで奉仕者であろうとする。

 自分の身体も気持ち良くなろうとするのではなく、俺を気持ち良くするために自分の身体を使ってもらうという感覚らしい。


 確かにそれが喜びとなっているのは間違いないんだろうけど、恋人同士のセックスとはもっと互いに意識をし合う楽しいものであると思うのだ。


 だから瑠璃にはもっと互いを楽しむセックスを知って欲しいと思う。


 これは俺のエゴでしかないが、俺は瑠璃が喜ぶことをしてあげたい。


 そういう意味では友梨佳に対しても瑠璃に対しても奉仕者であると思う。


 それが俺にとっても気持ちの良いことなのだから、お互いのためになっていると言ってもいいだろう。


 あれ? そういう意味では今のままでもいいのかな……。


 瑠璃は俺に奉仕することでこの上ない喜びを感じているらしい。


 俺はそれを享受することで快楽を感じることができる。


 でもやはり互いの気持ちを交換しあって、思い合うセックスがしたいと思う。


 ◇◇◇◇◇


「お父さん調子に乗りすぎ!! もうちょっと加減をしながらやってよね!」


 俺は友梨佳に怒られていた。

 ナニが起こったのかといえば、瑠璃に喜んでほしくて俺が一生懸命になり過ぎた結果、彼女の限界が上限突破してしまった。


「面目次第もございません、はい」


 快感のあまり盛大に潮を吹いてしまった瑠璃はショックのあまりしばらく放心状態から戻ってこなかった。


 俺は瑠璃を慰めながら濡れてしまった床を掃除したのだが、フローリングの床を掃除しきる前に友梨佳が帰宅してしまい、派手な性臭と共に部屋にグッタリとしている瑠璃を見て憤慨したのであった。


 床を汚したことではなく、瑠璃を泣かせたことにご立腹の友梨佳に正座しながら平謝りするしか無かった俺なのである。



「うう、友梨佳ちゃん、ごめんね。お漏らししちゃう姉妹なんて」

「瑠璃ちゃんは悪くない。調子に乗ったお父さんが悪いの!」


 罪は全面的に俺にのし掛かり、リビングでエッチするときは敷物を敷くのを忘れないようにという約定を取り付け謝罪すると共に、今度の休みに二人を連れて温泉旅行に行くことを交換条件になんとか許してもらうことができたのだった。


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