第13話 戦士の悩み

「ゴードン、最近なんか悩んでる?」


 僧侶ミリアの何気ない問いかけに、戦士ゴードンはびくっと肩を揺らした。


「な、なんでそう思う?」


「いや、なんかさ……最近ちょっと元気ないっていうか。」


「……そうか?」


「確かに、最近のゴードン、飯を食う時のテンションが低いような……。」


 魔法使いエルも腕を組みながら首を傾げる。

 普段なら、肉料理を前にすれば誰よりも食らいついていたゴードンだが、最近は食事中にぼんやりと遠くを見ていることが多かった。


「実は、ちょっと考え事があってな……。」


「考え事? ゴードンが?」


「おい、なんでそんなに驚くんだよ!?」


 レオンのリアクションにゴードンが憤慨するが、仲間たちは興味津々だった。


「なになに? もしかして恋の悩み?」


「ちげぇよ!!!」


「……俺さ、戦士としての力にはそれなりに自信がある。」


 ゴードンは腕を組み、真剣な表情になった。


「でも、この街に来てから……強い奴ばっかりで、ちょっと自信が揺らいでるんだよ。」


「確かに、ここにはヴァンやエルザがいるし、ルフェナも結界を操るくらいの実力者だからね……。」


「フローラも大食い騎士だし、リンファも武闘家でめちゃくちゃ動きがキレッキレだし。」


「ジルベールは……まあ、強いかどうかは知らんが。」


「いや、あいつの戦闘スタイルが謎すぎるんだよ!!」


 ゴードンはため息をつきながら続けた。


「俺は力こそが戦士の誇りだと思ってた。

 でも、ここにいる奴らはみんな強さの方向性が違う……。

 “本当に強い戦士”ってなんなんだろうな、って思うようになったんだ。」


 レオンたちはしばらく沈黙した。


「……ゴードンがこんな真面目に悩んでるなんて、ちょっと意外かも。」


「俺だって、たまには考えるんだよ!!!」


 ゴードンの珍しい真剣な悩みに、レオンたちは思わず考え込んだ。


「じゃあさ……いっそ、この街で“戦士としての答え”を探してみるのは?」


 エルが提案すると、ゴードンは「なるほど……」と頷いた。


「戦士としての強さを考えるには、やっぱり戦ってみるのが一番だろ?」


「……そうだな。俺より強い戦士がいれば、そいつに学ぶ。 それが手っ取り早い!」


「さて、じゃあこの街で“最強の戦士”を探すわよ。」


 ミリアが腕を組み、周囲を見渡す。


「やっぱり候補は、まずヴァン=クロフォードよね。」


「いや、あの人はもう“戦いを終えた男”だからな……。」


「エルザは?」


「戦士っていうか、“戦神”と呼ばれてたレベルの化け物だからな……。」


「え、じゃあルフェナは?」


「魔法使い……というより“結界術師”だし、戦士とはちょっと違うかもな。」


「……ってことは、消去法でいくと……?」


「「「リンファか!?」」」

________________________


「ほう、わらわに戦いを教わりたいアルか?」


 リンファは、屋台の奥で腕を組んで頷いた。


「いや、なんか違う気がするけど……。」


「フッ、わらわは武闘家であり、料理人でもある。

 すなわち、強さも食も極めるべきものアル!」


「お前もしかして、全部“食”に繋げてないか?」


「黙るアル!」


 ゴードンは苦笑しながら、改めて訊いた。


「俺は、“戦士としての強さ”とは何なのか、その答えを探したいんだ。

 お前の戦い方を見て、何か学べることがあればと思ってな。」


「フッ、ならばわらわと一戦交えるアルか?」


「……よし、望むところだ!!」


 こうして、ゴードン vs リンファの戦士対決が決まったのだった──!

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