奏斗先輩は一緒にいたい
「りるちゃん、この後授業ある?」
ご飯を食べ終えてから、奏斗がそう問いかけてきた。
「あります。四限に」
「香織ちゃんは?」
深楽が香織に話しかけているのが、横から聞こえてくる。
「私はもう帰りです」
彼の問いに、笑顔で丁寧に答える香織。こんな男のことなんか、放っておけばいいのに。
「そっか。…ちなみにその授業って、どれくらい受けてる?」
再び奏斗の声が聞こえてきたので、そちらに意識を向ける。
「受講者は結構いますけど、出席とらない授業だから…あんまり人はいないですね」
いわゆる楽単だ。先生も優しいし、人気がある授業の一つである。
「じゃあ、りるちゃんはどうして受けてるの?」
「あーいや…その授業結構面白くて、個人的には好きなんです」
「……今日の四限って、もしかして斎藤先生の哲学?」
「え、知ってるんですか?」
「うん。僕も一年の時に受けたよ。面白いよね~」
まさか、彼も同じ授業を受けていたとは…。
まあ人気もあるし、受けている人は多そうではあるけど。でも、私と同じように面白いと思っていたことが、嬉しかった。
「ねえ、僕も一緒に授業受けてもいいかな」
「え…?」
奏斗の思わぬ提案に驚いた。
だって彼はもうこの授業を受けていると言っていたし、出席したところで特にメリットはないはず…
「どうして、ですか?」
私は素直にそう聞いた。どうして一緒に授業を受けるのか。
「あ…いや、その……」
奏斗は言葉に詰まっていた。言いにくいことだったのか。そのまま彼が話し出すのを待つ。
「あの、今日も…僕の家、来る?」
奏斗は私の服の袖を引っ張り、耳元でささやいてきた。
これは、どういうお誘いだろうか。昨日の今日で家に誘うということは、奏斗も嫌ではなかった…のか?
少しだけ頬を染めた奏斗を誰にも見せたくなくて、でも隠しようがなくてもどかしかった。
幸い奏斗が向いている方には、深楽と香織、流星と流花くらいしかいなかったけれど。
「つまり、私と一緒にいたいってことですか?」
私が意地悪でそう囁き返すと、奏斗は小さく頷いた。
やけに素直だ。それに自信がなさそうな様子で…
あまりの可愛さに、私は胸をおさえていた。
少し深呼吸した後、
「じゃあ、講義室…行きますか」
と声をかけた。まだ時間的に早いけれど、講義室は空いていたはず。
私の言葉に、奏斗は嬉しそうに立ち上がった。
「んじゃ、またねぇ」
深楽と香織はまだ席に座ったまま。流星と流花もこのまま食堂にいるようだ。
香織が心配ではあるけれど、深楽と二人きりじゃないだけ、まだましか。
私は最後に深楽を睨みつけ、笑顔で手を振る彼と香織を背に、奏斗と食堂を出た。
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