倒錯

九戸政景@

第1話

「わあ……今日もあの人はスゴいなあ」



 僕は暗い部屋の中でパソコンの光に照らされながら呟く。パソコンの画面に映るのは小説の投稿サイト。チャット系アプリで知り合い、それからSNSでフォローしあっている人がそこで活動しているのだ。



「やっぱりこの文章力も表現力もスゴいな……僕にはないものばかりでとても羨ましいよ」



 相手をどんどん引き込んでいく文章力にキャラクター達がまるで現実のものかのように思わせる表現力、そして豊かな語彙。そのどれもが素晴らしく、そのどれもが羨ましくて妬ましかった。



「いいな……ほしいな……」



 そう思ってもそれは出来なかった。だって、僕にはそんな力もないし、それを誰かに見せる勇気もない。そういう臆病でダメダメな人間。それが僕なのだ。それを改めて思い知り、辛くなっていたその時だった。



「……あ、そうだ」



 僕はあることを思い付いた。そうだ、この人の作品自体を僕の作品として投稿すればいい。いわゆる盗作という奴だ。



「イカサマもバレなきゃイカサマじゃない。だから、盗作もバレなきゃ盗作じゃない。でも、投稿してる作品だと確実にバレる。だから、未発表の作品をどうにか手に入れて、それを投稿すればいい。且つ、あの人の印象にないジャンルにすればいいんだ……!」



 悪魔の囁きだったと思う。でも、もう止められない。いや、止まらない。あの人は僕のことを好きだと言ってくれた。だから、きっとバレても許してくれるだろう。そんな気がしてならない。



「そのために少しずつ準備をしないと……」



 生きる気力が湧いた気がした。そして他人のデータを盗み見るための手段がないかパソコンで調べ始めた。

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