一.夜桜

第1話

暖かい、春の日。





美しい庭に、花が咲く。





小鳥達は囀ずる。





桜の花弁は、風に舞い、世界を彩ってゆく。





何て、心地がよいのだろう。



何て、美しいのだろう。




そっと立ち上がれば、どこか懐かしい香りを残して、風が頬を撫でていく。







そうして私は、彼が連れて来られるのを、ぼんやりと眺めていた。






「美代子ちゃん、どいて」




「垣里さん、私もお手伝いします」






「……美代子ちゃんも、わかってんでしょう? あの青年は、労咳だ。美代子ちゃんに手伝わせる訳には、いかないなあ」









時は、明治。





私はこの時十八だった。

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