第三十七話 衝撃の一撃、テンタクルプレッシャー
!?
「レオン様、あれってもしかして?」
血の匂いを感じ警戒しながら進んでいると、何かに気付いたパトリシア様は急に立ち止まってしまった。
そして、パトリシア様の視線の先を見たレオン様は馬車から飛び出していった。
二人とも目がいいな〜。僕には草原の上に黒い点があるようにしか見えないんだけど、あれがなんだというのだろうか?
飛び出して行ったレオン様を追いかけるように、パトリシア様は周囲を警戒しながら小走りで進み出す。
??
「あれってもしかして!?」
黒い点の正体が分かったエミリア様は絶句してしまっていた。
え?
なに?
レオン様が跪いて手を合わせるような仕草をしだしたので、そこで僕は全てを悟った。
「レオン様これはいったい?」
「もう間違いないな、マテオ様一行に何かあったのだろう」
これって南の領地の時と同じ?怪我した兵が逃げてきてここで力尽きてしまったってこと?
しかしこの遺体、どうやったらこんなグチャグチャな状態になるんだよ!雑巾みたいにグリグリに絞られたみたいな状態になってるじゃないか!?
巨人に絞り殺されでもしたのかよ?
「レオン様、ここだけではなくあちこちから血の匂いがします。ここは危険な気がします。一旦街に引き返すのが得策かと思います」
パトリシア様が切羽詰まった感じの声を上げた。
「良太、不穏な気配は感じないんだろ?」
「は、はい」
僕の探知スキルは全く敵の気配を感じていない。でもこの状況は確かに何か嫌な予感を想起させるものだった。
「このまま放置していたのでは猛獣に食べられてしまうかもしれない。回収して西の領地に届けてあげるのが筋だろう」
レオン様はそう言ってパトリシア様の提案を一蹴していた。気持ちは分からないでもないが、ここは流石に引いた方がいい気がするが……。
でもお優しいレオン様はきっと何を言っても聞かないだろう。
あちゃ〜、レジャー気分でいたのになー。
女神様?なんか、まーた大変なことになってきましたよ?
「エミリア様、大丈夫ですよ。マテオ様はきっと生きてますって」
強張った表情をしてその場に立ち尽くしていたので、そう声をかけてみた。
「ありがとう、でも心配しなくていいわよ。私はマテオ様に会ったことも見たこともないんだから。人が死んでるから悲しい顔しているだけよ」
えーっ!
そうなのー??
異世界っぽいな〜!そういうオチかよ。そういえばレオン様もサーラ様に会ったことないって言ってたもんな。一応許嫁だというのにお見舞いもすることなく帰って来ちゃったし。
ほんと異世界の貴族の皆様は大変ですね。会ったこともない人と結婚が決まっているなんて。
そんなことを考えている間もレオン様は粛々とご遺体の回収作業を続けていた。パトリシア様はレオン様を止めることを諦めたのだろうか、協力的になっているような感じだった。その上で周辺の警戒監視をし続けているようだった。
僕の鼻では血の匂いは捉えることはできない、ただ心地の良い爽やかな風が流れているだけとしか感じられなかった。
変な気配はないから大丈夫だと思うんだけどな……と思いながらレオン様の方へ歩みを寄せた次の瞬間だった、、。
!?
モンスターの気配が急に湧き上がった??
シュルル〜、シュルル〜、シュルルルル〜。
「ぐぁぁあああ〜っ!!」
「良太!?」
僕はレオン様に向けられた殺意に気付き咄嗟に飛び込んだ……すると僕の体は何やらイカの触手のようなものに絡みつかれ、締め上げられてしまった。
「ぐぐぐ、、」
「良太ーっ!」
「僕は大丈夫です」
駆け寄ってこようとしたレオン様を、腕を上げストップのポーズで制する。
物凄い力で締め上げてくるが、なんとか耐えられそうだった。エミリア様のヘッドロックに比べたら、こんなの痛くも痒くもない。
触手は地面から這い出てきていて、這い出てきている方へ目を向けていると、何やら人影のようなものが這い上がってきた…。
「びゃ〜っ!外したかぁ〜、なら貴様を血祭りにあげてやる!」
「何だコイツ?ぐぁぁあああ〜っ!!」
絡まった触手はさらに強く締め上げてくる……。
外したかだと!?
コイツやっぱりレオン様を狙って攻撃してきていたのか。
ぐぐぐ、、このヤローっ!レオン様を攻撃するとは!
絶対にゆるさんっ!!
僕は絡まっている触手を払い除けると、懐に飛び込み顔前に火縄銃をかざした。
ドォォオオオーーーン!!
「ざまーみろ!」
火縄銃から発射されたエネルギーは奴の顔面を完璧にとらえたので、勝利を確信したのだが、、。
!?
空気が張り詰め止まったような感じがした……そして耳にキーーンとした音が響き渡った……そして魔法力が一点に集中したのを感じた……ヤツの体から伸びている無数の触手が収縮する……爆炎の中、ヤツの眼光が鋭く光った気がした……。
〈〈〈「テンタクルプレッシャーッ!!」〉〉〉
え?
ヤバ!
「ぎゃぁぁあああああーーーッ!!」
触手が収縮したなと思った瞬間、弾き上がった。その時に巻き起こった衝撃波により僕の持っていた盾は木っ端微塵に吹き飛ばされてしまった……。
そして次に僕の体は宙に浮かび上がり、全身の骨という骨の砕かれる音が響き渡った……。
「りょぉおおおーーたぁあああーーっ!!」
はっ!
ここで僕まで粉々に吹き飛ばされてしまったら、レオン様はどうなってしまうのだろう……?
くっ!
例え皮膚の皮一枚になったとしても……この衝撃波はここで止めないと、、。
「キッサッーーマァアアーーッ!!」
レオン様の怒号が響き渡った。
それに脅威を感じたのか触手ヤローは再び地面の中に身を隠そうとしたようだったが、地面に潜ることができず、驚きの表情を見せる。
地面には魔法陣が描かれていた。
レオン様がコイツは地下から攻撃を仕掛けてくるタイプだと瞬時に判断し、ヤツの行動を封じるため先手を打ったのだろう。
そして、魔法陣が光りだした……。
「フレイムファイヤー!」
「ギャァァアアアアーーっ!!」
烈火の如く立ち上がった炎は瞬時にして触手ヤローを包み込み、消し炭へと変えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます