第二十八話 南の地の領主アンドレア・ツー・ズーデン
南の地の領主、アンドレア・ツー・ズーデン様はこれまた大きな体格をされている方だった。
なるほど!この人あってのあの娘さんってわけか。となると三女のサーラってのもきっと知れてるな。
レオン様が心を寄せるなんてことはありえないな。
この姉妹には関わらないようにしておくのが無難だろう。あんなデカくておっかなそうなのと結婚するくらいなら、おっかなくて性格が最悪だけど、とびっきり美人のエミリア様の方が何万倍もマシだ。
「レオン、エミリア、それに良太とやら今回の件聞かせてもらった。ご足労かけてしまい申し訳なく思っている」
ご足労ねー、どちらかというとお人好しのレオン様が、面倒ごとに首を突っ込んだって感じだけど。
「アンドレア様お体は大丈夫なんですか?」
「あー、これか?心配ない、今治療が終わって包帯を外しているところだ」
領主が怪我をするってどれだけの激戦だったのだろうか?
「できれば襲撃を受けた時のことを、詳しくお聞かせいただけないでしょうか?」
「詳しくと言われてもなー、本当にいきなりだったからな」
レオン様の質問にアンドレア様は顎に拳を当て難しい顔をしてしまった。
レオン様はそんなこと聞いてどうしたいのだろうか?
まさか、「許せん」とか言って飛び出して行ったりしないだろうな…。
「街人がモンスターに襲われていると連絡を受けたのでエンマ、カローラを連れ立って街に行ったら、モンスターバットの集団が襲ってきていて戦闘になったって感じだ」
アンドレア様は腕組みをし、視線を空中に向け思い出すようにして答えていた。
て、領主が自ら討って出たんかいっ!?
大柄な体格だから腕っぷしには自信があるのだろうが、もしものことがあったら南の領地どうするんだよ!
もしかして脳筋系?
「あれほどの数のモンスターが海を越えてきたとは思えません。何か前兆のようなものはなかったのでしょうか?」
あー、確かにアイツ等どこから湧いて出てきたんだろ?セミとかバッタみたいに異常発生でもしたのかな?
「我が領地に発生したモンスタービーは、女王蜂が異常なほどの繁殖能力を持っていたため駆除するのに大変苦労しました」
あー、なるほど!だからあの時、魔法力使い果たしてしまっていたのか。
要するにレオン様は異常繁殖した原因になった女王蜂みたいなのを倒さないと、また同じようなことが繰り返されるかもしれないって言いたいのかな?
でも、コウモリって哺乳類だろ?卵とかで増えないよね?ハチみたいに一斉に孵化したりしないから急激に数が増えるってどういう原理なんだろ?
まあ異世界だし元いた世界の常識は通用しないのかもな、もしかしたら細菌みたいに分裂して増殖してんのかも。
あー、ちょっと想像してしまった!キモい、キモい。
「しかしレオンよ。我々は原因を突き止めるどころか、今の状況ですら凌げるのかわからない状態だ」
??
あらー、なんかシーンとしてしまったんですけど?もしかして手詰まりって感じ?
「アンドレア様、発言よろしいでしょうか?」
「ちょっと良太!あなた失礼でしょ」
「エミリア、私は問題ないぞ。良太とやら続けなさい」
メンド臭いなー、一般人は発言するのも失礼に当たるのかよ。
「ありがとうございます」
と一応言っておく。
「私達の得た情報ではモンスターバットどもは要塞を欲しがっているようです。理由は簡単です。人間からの攻撃を防いでくれる盾となるものが欲しいからでしょう。習性から考えて今晩また昨夜と同じような総攻撃があると予想されます」
「分かってるわよ。だからそれをどうするか今考えているんでしょ!」
「そうやってすーぐ怒るー!最後まで聞いてくださいよー」
アンドレア様の方へ目を向けると、そのまま続けなさいと言わんばかりに軽く手を上げた。それを見たエミリア様は不満そうに僕から目を背ける。
「奴等が夜襲ってくる理由は超音波を使って物の位置を探ることができるからです。それに対し我々人間は視覚情報から物の位置を探っているので、見えにくくなる夜は断然奴等に有利な状況になってしまいます」
「良太よ、昼間の明るいうちにこちらから攻撃を仕掛けるべきだと言いたいのか?しかし動ける兵はそう多くないぞ」
「いいえ、兵士の方々には今晩の戦闘に備え、今はゆっくり休ませておいてあげて下さい」
??
「話が見えんぞ?何が言いたいのだ?」
「夜来るって分かってるなら罠に嵌めやすいってことですよ」
「おお!良太様のその不敵な笑みは、何かまた妙案が浮かんでいるんですね?」
「エドアルドさんそうです。人間には人間の戦い方があるんです。奴等は自分達は超音波も使えるし空も飛べる、人間より優れた生き物だと思っています。そこをついてやるんです」
・・・・。
僕の言いたいことがなんなのか全く分かっていないのだろう、アンドレア様は難しい顔をして黙り込んでしまった。
この脳筋め!
そんなんだからあんな脳筋娘に育っちゃうんだよ!
「人間なんだから力押しばかりではなく頭を使って戦いましょ」なんて言ったら怒られるんだろうなー、ものすご〜く言ってやりたいけど。
「まず武器屋、防具屋、道具屋などの職人さんを集めて下さい。一刻でも時間が欲しいので、できるだけ早くにお願いします」
僕が真剣な眼差しを向けそう言うと、アンドレア様はカローラ様の方へ視線を向けた。
カローラ様は「お任せ下さい」と言ってすぐに部屋を出て行く。
へぇ〜、流石の行動力だな。頭の回転は遅いけど、行動力は速いのね。僕の話が全部終わってからでも良かったのに。
「それと沢山の小石が欲しいです。出来れば魔法石が好ましいですが大量に欲しいので普通の石で構わないです」
「分かった。それは私が用意しよう。良太、小石ってどの程度の大きさのものだ?」
「誰もが握れるくらいの大きさでお願いします」
そう言うとエンマ様も直ぐに部屋を飛び出して行った。あらー、手も早いけど足も速いのね
「良太様、私にできることはないでしょうか?」
お二人のご令嬢が行動を起こしているんだ、自分も何かしなくてはと思ったのだろう、エドアルドさんがそんな言葉をかけてきた。
「ではエドアルドさんは街中の街灯の魔法石を壁の上に運んで下さい。夜間戦闘には灯りがどうしても必要になると思うんです。お願いします」
「はい、分かりました」
エドアルドさんは一度アンドレア様の方へ視線を向ける。アンドレア様はそれで構わないと言わんばかりに頷いてくれた。
「良太よ、何を考えている?」
「信用していただいてありがとうございます。こちら側に一人の犠牲者も出さずに奴等を一網打尽にしてしまう方法ですよ」
「良太!?そんな方法があるのか?」
また妙案を思いついてくれたのではないかと思っているのだろう。レオン様は僕にキラキラとした綺麗な眼差しを向けてきている。
ふっふっふ、これはまた僕の評価が上がっちゃったんじゃないの〜♪
体がデカくて魔法が使えるモンスターとはいえ、所詮はただのコウモリ。コウモリと知恵比べで負けるものか。
お前らの習性を利用し罠にはめてやる!
人間様の戦術というものを見せてくれるわ!
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