第十四話 舞踏会前の軽食パーティー
「あ〜、、臭かった〜、、歯磨きくらいしとけよ、、」
パトリシア様と何分話し込んでしまっていたのだろう。屋敷に戻ると軽食を並べた立食パーティーがすでに始まってしまっているようで、いくつかのグループが出来ていて話に花が咲いているようだった。
レオン様は例の3流アイドル顔の女5人に囲まれてしまっていた。その様子を例えるならバラの周りに生えているトリカブトってところだろう。
身の程を知れっつーの!
エミリア様はというとその様子を一人で苦々しい顔をして見つめていた。
まったくもー!当家のお嬢様は、なんちゅ〜顔をしてるんでございましょ、、。
あれ?そういえば若い男どもはどこにいったんだ?何でエミリア様を一人っきりにさせてるんだよ。
部屋の中を見渡すと、隅っこの方に固まっている集団を見つけた。3人だけで集まり何か話をしているようだった。
何やってんだ、アイツ等?
視線は時々エミリア様の方に向けている気がする。あー、なるほど、エミリア様が殺伐とした雰囲気だから近づけないでいるのか、もしくはキレられて追い払われたか?
ったく、しょーがねーなー。最近の若い男は弱男ばっかなんだから。
取り敢えずレオン様が3流アイドル顔に落とされるなんてことはないだろ。仕方ないから、弱男どものサポートでもするか。
「エミリア様、せっかく可愛く仕上げたのに、そんな仏頂面されていたのでは台無しになってしまいますよ」
「うるさい!」
僕の方にチラッと視線を送ると冷たくそう言い放った。
あっら〜、機嫌悪そう。でも不貞腐れ顔も可愛い。まったくウチのエミリアちゃんは、すーぐ感情が表情に出ちゃうんだから、まだまだお子ちゃまだな〜。
「レオン様はオステン家との関係を保つために大人の対応しているだけですから、あんな表にいる女戦士にも劣るクソブスどもを本気で相手するわけないじゃないですか」
「ぷっ!クソブスってあなた、それ聞こえたら大変なことになるわよ」
あっ!笑った。ちょっと機嫌直ったかな。
「あんなエミリア様の髪の毛一本の価値にも満たない、クソブスどもなんてほっといて楽しくやりましょうよ」
「ふふふ、ひっどいこと言うわねー、じゃあ、あなたは私の髪の毛一本とあの人達どちらか選べって言ったら、私の髪の毛を選ぶの?」
「そんなの当たり前じゃないですか。あんな極上ブス、お金貰っても無理です」
「あはは、だからそれ聞こえたら大変なことになるわよ」
「大丈夫ですよ。僕はこの領地とは何の縁もゆかりもない第三者ですから、第三者が冷静に分析して言ってる言葉です」
エミリア様は僕の言葉に呆れたような感じで笑ってしまっていた。
「ほら、エミリア様があまりにもお美しいから、若い男どもがこっち見てますよ」
エミリア様が顔を上げると弱男どもは顔を伏せてしまった。ったく、せっかく笑顔にさせてやったんだからこっち来て話しかけろよ。貴族のクセにどんだけ奥手なんだよ。
「エミリア様、何かお持ちしましょうか?ケーキは何派ですか?ちなみに僕はチーズケーキ派です」
「私はチョコ派かな」
「了解です」
◇ ◆
「エミリア様はチョコ派だってさ」
「えっ!」
弱男3人組に近寄ると徐にそう話しかける。僕に話しかけられた弱男どもは目を見合わせオロオロした感じになっていた。
おいおい、マジかよ?お前ら貴族だろ?シャキッとしろよ!
「お前何者なんだよ?」
「僕はこの屋敷でレオン様、エミリア様のお世話をしている者です。あなた達がエミリア様に話し掛けれずにいるみたいだから情報持ってきたんだけど、余計だったか?」
そう言うと再びオロオロした感じになっていた。
まーだ行かねーのかよ。
「ちなみにエミリア様は向こうのバルコニーで夕日を見ながら紅茶を飲まれるのが大変お好きだ。良い時間帯だし、紅茶とチョコケーキ持って行ってお誘いすればきっと乗ってきてくれると思うぞ」
そこまで言うとようやく弱男どもは行動を起こしエミリア様の元へと向かっていった。
レオン様は大人の対応をしているだけと言っておいたし、話し掛けられたらいくら何でも邪険にはしないだろ。
でもあれじゃーなー、エミリア様を強引に「領地に連れて帰る」と言い出すことはないだろうなー。
あーつまんねー、エミリア様を嫁がせる作戦はオジャンだな。
あれ?いつの間にか大人達がいなくなってる?
弱男の相手をしている間に部屋から大人達の姿がなくなってしまっていた。込み入った話になるからと場所変えたのかな?
そう思いながらレオン様の方へ向かおうと思った瞬間だった。
!?
何だこの違和感!?
空気がピリついてる?
これってもしかして攻撃?
でも僕にじゃない!
どこから出ていて、誰に向けての攻撃だ?
レオン様にか!?
でも誰が!?
その時、3流アイドル顔の一人が妙な動きをしているのに気がついた。
レオン様の前に4人が並んでいて不自然に1人だけ一歩後ろに下がっている。
攻撃の出どころは多分アイツからで間違いないだろう。
でもどうやって?何で攻撃をしているんだ?
僕は奴等にバレないように後方へと回ってみることにする。後方へ回るとやはり僕の予想は的中していた。1人は背中で何かバトンのようなものを回しているではないか。あの動きが空気に影響を与えているのだろう。
もしかしてあれ?前に武器屋で見た木刀か?
通称『フエ』と呼ばれているもので、細かい溝が掘られていて振るうと空気に影響を及ぼして音波を発生させ、相手の意識を失わせる効果がある品物とか言っていたヤツだ。
アイツ等なに企んでるんだ?
でもレオン様のレベルは32、アイツ等は高くて5だ。アイツ等がレオン様に攻撃を仕掛けても効果が出るわけがない。
現に、レオン様は攻撃されていることにすら気が付いてない。
必死になって回しても無駄だというのに、バカな奴だ。
レオン様が平然としているので、木刀を回している奴からは焦りのようなものが感じられる。
「レオン様ー!」
何を企んでいるかわからないが、知ったからには放っておくわけにはいかないので僕はレオン様の元へ駆け寄った。
カラン、カラン。
!?
えっ?今の音って??
「良太どうした?急に固まって?」
声を上げて近寄って来たのに、僕が急に固まって動かなくなったものだからレオン様は不思議そうに顔を覗いてきていた。
不味い!エミリア様が!
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