第41話 次は自由に行こうか

「…………………………かえるぞ」

「りょーかい」

「お、お疲れ様でした!」


 あれからも俺達は1階層を探索し続け、およそ20体の魔物を倒した所で切り上げることにした。


 出て来た魔物はレッドスライムに加え、二足方向の犬型の魔物であるコボルトや、剣を持ったゴブリンであるゴブリンナイトなど弱い魔物に毛が生えたような魔物ばかりだった。


 俺もその中の3匹を相手にすることに。


 普通に剣で倒したんだが、エリーに「す、すごいですっ!」と褒められた時にはちょっと微妙な気持ちになった。


 確かにFランク冒険者にしては凄いのかもしれないが……まぁ……うん。


 ともかく俺達はそのまま第1ダンジョンを後にし、冒険者ギルドで魔石や素材を換金、各自にお金を分配し俺たちが泊まっている宿泊施設に戻って来た。


「今日はありがとな、ロータス」

「ありがとうございます! ロ、ロータスさん!」

「…………………………ふん」


 ロータスは相変わらずの無口。顔色ひとつ変えず去っていく。


「で、では私もこの辺でっ! 明日またよろしくお願いします!」

「ああ。またなエリー」

「はい! フ、フレイくん!」


 そしてエリーも大袈裟にお辞儀をしてこの場を去っていった。






 俺は自室に戻り体を綺麗にした後、ホールに向かう。あそこが今日の飲み場となるからだ。


 既に複数の人たちが飲んでいたが、4バカの中ではジーンしかいなかった。


 ジーンが座っていたテーブルに着く。


「お疲れジーン。今日はお前だけか?」


 フランの話では残りの3人はもうここに戻っているはずだが。


「みんなパーティの打ち合わせとかがあるみたいだぞ」

「なるほどな」


 王都にいる時でも俺達は毎日全員が集まれるわけではなかったからな。


 個々に外せない用事があった場合はもちろん来れないわけで。


 ということで俺は久々にジーンと二人で飲むことになった。


「そういえばお前……王都を離れてよかったのか?」

「なんでだ?」

「愛しの受付嬢に会えなくな――」

「わあー! わあー!」


 ジーンは慌てて俺の方を手で塞いできた。


「うぅ〜誰かに聞かれたらどうするつもりだぞ〜」

「はは、悪い悪い」


 ジーンは恨めしそうにこちらを見ている。


 というのも、ジーンは王都のギルドにいる受付嬢に恋をしているらしい。


 名前や容姿は詳しく覚えていないが、誰にでも分け隔てなく笑顔を浮かべ、とても丁寧な対応をしてくれる受付嬢の鏡みたいな人だった記憶がある。


「なんで名前だっけ?」

「エレナちゃんだぞ。とっても可憐で可愛いんだぁ〜」


 ジーンはぽっと顔を赤らめ、王都の方に思いを馳せている。






 ………野郎のときめいてる顔見て誰が得するんだよ。






「なのについて来てよかったのかよ」

「仕方ないぞ……オイラだけ行かないのも寂しいし……よく組んでいるメンバーもこっちに来てるし……」

「そっか。そりゃそうだ」


 他の3人と俺ももれなくこちらに来ているからな。


「でもエレナちゃんに会えないのは悲しいぞ……」

「はいはい、酒でも飲めよ」

「うぅ……ゴクゴク」



 こりゃあ余計なこと言ったな。めんどくさいことになった。




 ただジーンの持ち前の回復力で、即座に復活。



 すぐに酒を片手に騒ぎ始めた。



 結局いつも通りかい。

 









「さて、ここからがお楽しみだな」

「でござる!」


 皆が寝静まった深夜。


 俺とフランの2人は宿泊施設を抜け出し、第1ダンジョンに入っていった。

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