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「あの神社の由緒は、つまり歴史はかなり特殊です。というか神社というのはカモフラージュですね」
「神社がカモフラージュ?」
荒木がすっとんきょうな声を出す。
「ちょっと荒木先生、そんなおかしな音出すのやめてくださいよ、もう」
「すみません。でも、あまりにも意外だったもので。カモフラージュってことは本当は神社ではないと?」
「神社とは何か? と言われたら神様を祀る所なのであそこにも神様はいるはず。ただどんな神様が祀られているのか? それはトップシークレット、極一部の人間にしか知られていないとされています」
消沈していた岩田、瀬谷もこの話には興味が湧いてきたみたいだった。覚めたような表情になる。
「その神とは何なのか? この情報化社会、色んな窓口があって何でも聞けば答えが返ってくる時代になりようやくこれなんですか? と聞いてくる人が現れてその謎の片鱗が露わになりました。とんでもない映像が発掘されたのです」
「その映像とは何ですか?」
と岩田が早口で質問する。
「その映像はとても価値あるものなので私の手元にはデータとしてもないのですが、どんな映像だったのか口頭でお伝えしますね」
阿部は神妙に語り始めた。
「時代は大正時代です。1923年9月、と言えば何ですか?」
荒木は人差し指を唇に当て考える仕草をするが、岩田が直ぐさま答えた。
「関東大震災ですかね?」
「岩田さん、素晴らしい! そう、9月1日は何があった日? って聞けば皆んなすんなりと答えられるんですけど日付け隠して大正何年ってすると荒木先生みたいに悩む人多いんですよねー」
「確かに9月1日は防災の日として学校でも避難訓練したりしているから覚えている人も多いけど、関東大震災が起きた年まで覚えている人はあまりいないかもな」
「で、その関東大震災が起きた直後を記録した映像が発掘さてのですけど、まぁ、それが衝撃的で、これはもはや関東大震災の様子を知ることができる貴重な映像としては扱えないなとなりました」
「何が映っていたというのです?」
岩田が荒木に変わるように発し始めた。
「モノクロで音声はない、画質も粗い、そのくらい大昔のものなのでこれはフィルムの劣化によるものか? と思いたくなるくらい恐ろしいですよ。その映像は避難者を捉えたものでした。人々が列を作って真っ二つに割れた道の上を歩いていた。カメラマンは前、後ろと交互にアングルを変えて撮影していてその避難者の多さが分かります。その後、場所が変わりましてもしかしたら被害が比較的、少ない安全な所に移動してからまた撮影を始めたのかもしれませんね。そこには風呂敷とか大きな荷物を担いでいる人達が急な坂道を歩いていたのですが……映っている人々が首を
阿部はここで一旦、息を吐く。
「アングルを上空から再び坂道に戻した時、前方を歩いていた人が異変を感じて後ろを振り返っていました。カメラマンもそれに合わせて後ろを向くと……なんと後ろを歩いていた多くの人が忽然と姿を消してしまいまったのです。これにはカメラマンも激しく動揺してカメラが揺れ動きます。さらに、続けて前を歩いていた人にも異変が。今度は一斉に何十人もの人が宙に浮いたのです。にも関わらずその人達は足をバタつかせるようなこともせず、まるでそこだけ時が止まっているかのように静止していました。そして、紙屑を丸めるようにぐちゃぐちゃになる……3Dゲームのバグでゲームキャラクターの造形がめちゃくちゃになっているシーンとか見たことありません? あんな感じです。これにはさすがのカメラも地面を向いてしまいましたが、また直ぐに待ち直すもののそこにはもう何も残っておらず同じように人が消えてしまっている……」
「カメラマンは無事だったのですか?」
「いえ。多分、そいつはカメラマンを群衆の中で異質と見ていたのか、最後にやられたと取れるシーンでその映像は途切れます。誰もいなくなった……それにうろたえるカメラマンは撮影を放棄するが……地には黒い影が……そこへカメラを向けた瞬間にプツリと……最後にほんの一瞬だけ、人が一メートルくらい先に立っていたかも? ……はい、これがその発見された映像の全容になります」
荒木が「はっは」と乾いた笑いのような声。
「その映像が撮影された場所があの神社周辺だったってことですか?」
岩田は気丈な態度だった。
「そういうことになりますね。場所を特定するの大変だったみたいですね。ただ関東大震災で被災者が避難した場所、坂道というのは大きな手がかりでした」
「そうか、大地震でその神社が崩れてなんかやばい封印が解かれてしまったってことか!」
荒木は大声でその閃きを言う。
「半分当たっています。というのもこの映像が撮影された年にはまだその旗上神社はありませんでした。ただ丘の頂上に小さな石宮、あっ漢字は難しいけど祠って言った方がイメージつきやすいですかね? 屋根があって小さなお家みたいなやつですね……その石造の祠がポツンとあるだけでした。それが地震で倒れたそうです。自然の力で倒れたとはいえ『あの祠を壊したんか』案件ですね」
「それ一時期、流行っていましたね」
「岩田さんもご存知で!」
「まさかリアルであるとはな」
瀬谷もこれには微かに笑う。
「避難者、集団消失事件の原因はこれだ! と突き止めた地元の人間はこの祠を丁重に扱うことを決めました。これまで野晒しにされていたのも改めようと屋根を立てたり倒れないように土台を新しく作ったり、その土地のお金持ち達が資金を出して、祠へ続く獣道の前にそれを守るように神社が建てられました。これが旗上神社の始まりです。その意志は現代まで引き継がれているようで、十五年くらい前にも改修工事が行われて階段の横に手すりが出来たり、大きな狛犬が新調されたりと無名な神社にしては綺麗に保たれていたようで。ちなみに名前は付近にある幾つかの神社から文字を拝借してそれを組み合わせてそれっぽく付けたとか」
「百年以上前の話でも神社の歴史って観点だと随分、新しいなそれは」
「そんな大事件が起きるまで地元の人は祠の危険性に気がついていなかったのですか?」
「それがですね、それを知っていたのは地元の人間の中でもたった一世帯だけったみたいでその家が代々、祠の手入れをしていたみたいです。手入れといってもお墓参りみたいに年に何回か花をたむけたりしていただけで、その人達ですらもうその世代になると昔からご先祖様が習慣にしていたからやっているだけだったらしく……それがこの事件でさすがに黙っておくわけにはいかなくなって少し知る者が増えたんですね」
「一世帯だけ……その家系には何が継承されていたんですか?」
「そこの詳細までは明らかになりませんでしたが、その祠にはとんでもない呪物? か何かがが隠されているそうですね」
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