書籍化マウントを取り合う双子の兄弟の、仁義なき戦い!

無月弟(無月蒼)

第1話

 俺の双子の兄は最低のクソ野郎だ。


 どう最低なのか、順を追って説明しよう。

 昔はそれなりに仲のいい兄弟だったと思う。

 二人とも小説が好きで共に執筆活動をしていたし、小説投稿サイトのカクヨムに登録した時なんかは、いつか二人でプロデビューできたらいいななんて言って、笑いあってた。


 しかし、兄貴の作品が書籍化したことで、俺に対する態度はガラリと変わった。

 書籍化マウントを取るようになったんだ。

 例えば、俺が公募に出した小説が落選した時。


「へいへい愚弟よ、また受賞できなかったのかい? 君がいつまでもそんなんじゃ、この書籍化経験のあるお兄様の名に傷がついて困るよ。書・籍・化・経・験・の・あ・る、お兄様がな!」


 例えば、大寒波が来た大雪の夜の事。


「書籍化してない弟よ。書籍化したお兄様は肉まんが食べたくて仕方がない、買ってこい。何? 自分で行けだと? 書籍化してない愚弟が、立派なお兄様に逆らうなー!」


 こんな感じで吹雪の中、俺に肉まんを買いに行かせた。

 さらに、兄貴の書籍化マウントはまだ続く。

 先日同じタイミングで、カクヨムに小説を投稿した時のこと。


「わっはっは! お兄様の作品にまた星が入ったぞ。それに比べて愚弟の作品は……あれまあ! それっぽっちしか星を貰っていないのかい? なんて可哀想な弟だ。書籍化もできない上に星まで少ないとは。お兄様の爪の垢でも煎じて飲ませてあげようか? 天下無双の書籍化作家の、お兄様の爪の垢をな。わっはっはっはっはー!」


 ……な、最低だろ。

 だいたい天下無双って、たった一冊書籍化しただけじゃないか。

 なのに何年もそれでマウント取りやがって。

 書籍化とは、こうも人を狂われるものなのか?


 とにかくこういうわけで、俺は書籍化マウントを取る最低な兄に濃き使われ、バカにされながら毎日をすごしてきた。

 しかし、しかしだ。悪は必ず滅びるもの。

 ある時を境に、状況は一変した。


 なんと今度は俺が、書籍化したのである。

 しかも一冊でなく、たくさんの本を出すことができたんだ。


 ──っ! おっしゃっ!

 これであのバカ兄貴に書籍化マウントを取られずにすむ!

 それどころか、今度は俺がマウントを取って……いや、違うな。

 俺はバカ兄貴のように調子に乗ったりはしない。

 書籍化しても今までと変わらず、紳士的でいよう。

 俺はそう誓った……。

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